グループレベルの実体感:論文レビュー
こんにちは、原田です。
今回は、実体感(entitativity)に関する論文です。
実体感(entitativity)の定義:
実体感とは、人々が集団を「グループ」として認識するための社会的認知。具体的には、集団のメンバーが「自分たちは一体となっている」「まとまりがある」と感じる感覚を指す。
参考論文:
・Blanchard et al. (2020):実体感を測定するための新しい尺度を開発し、オンラインおよび対面のグループにおける先行要因と結果を区別して検討した研究
・Campbell (1958):実体感をグループの客観的な特性として初めて提唱し、メンバーの近接性、類似性、共通の運命、明確な境界線などの要素が実体感を高める
・Lickel et al. (2001):実体感がグループアイデンティティや内集団・外集団バイアスと関連している
今日の論文
How Are We Similar? Group Level Entitativity in Work and Social Groups
私たちはどのように似ているのか?仕事と社会的グループにおけるグループレベルの実体感
Small Group Research, 2023
Anita L. Blanchard, Andrew G. McBride, Brittany A. Ernst
サマリ
実体感(entitativity)が個人レベルだけでなくグループレベルでも共有されるという仮説を立て、仕事グループと社会グループにおける実体感の発展について検討
社会グループでは目標と特徴の類似性を通じて実体感が形成され、仕事グループではトップダウンおよびボトムアップのプロセスが影響することが提案されている
実験結果は、実体感が個人の態度や行動に影響を与えることを示し、実体感の共有が成果に対して重要であることを示唆している
方法
大学生が参加している仕事グループと社会グループのメンバーを対象に調査を実施
グループレベルの実体感、特徴の類似性、目標の類似性を評価し、個人レベルの識別、満足度、コミットメント、向社会的行動を測定
わかったこと①:
、職場グループ(workgroups)と社会グループ(social groups)におけるクロスレベル解析の結果
実体感が個人の同一化や満足度、コミットメント、向社会的行動に対して強い影響を与えていることが分かった。特に職場グループでは目標の共有が、社会グループでは特徴と目標の両方が実体感に影響を与えている。
職場グループ(workgroups):
Similarity of Goals(目標の類似性)→ Shared Entitativity(共有されたエンティタティビティ): 正の相関が確認されており、目標の共有が集団のエンティタティビティに強く影響している
Shared Entitativity → 個人レベルの結果:
Identification(同一化): 正の相関
Satisfaction(満足度): 正の相関
Commitment(コミットメント): 正の相関
Prosocial Behavior(向社会的行動): 正の相関
社会グループ(social groups):
Similarity of Characteristics(特徴の類似性)およびSimilarity of Goals(目標の類似性)→ Shared Entitativity: どちらも正の相関が確認され、社会グループでは特徴と目標の類似性が集団のエンティタティビティに影響している
Shared Entitativity → 個人レベルの結果:
Identification: 強い正の相関
Satisfaction: 正の相関
Commitment: 正の相関
Prosocial Behavior: 正の相関
わかったこと②:
職場グループおよび社会グループにおける集団レベルのエンティタティビティ(集団性)が与える影響(追加分析)
職場グループにおいて、共有されたエンティタティビティが個人の認識や行動に与える影響が大きく、特に同一化やコミットメントに強く関係している
社会グループでは特徴の類似性が特に集団の同一化に強い影響を与える一方で、共有されたエンティタティビティが個人のコミットメントや向社会的行動を高める要因として機能している
論文から得た学びと活用場面
社会グループと職場グループは、実体感の形成において異なる道筋をたどる可能性があり、特に、職場グループでは目標の類似性が実体感を強化する一方で、特徴の類似性はそれほど影響を与えないことが分かりました。
職場で実体感を高める=新しいメンバーの社会化プロセスを強化するためには、目標の共有に焦点を当てると良いかもしれません。
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