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フィードバックがパフォーマンスに与える影響(フィードバック介入理論):論文レビュー

こんにちは、原田です。
今回は、1年次にも修士論文でもお世話になっているフィードバック介入理論(FIT)の論文です。

フィードバック介入理論(FIT)は、フィードバックがパフォーマンスに与える影響を理解するための枠組みです。FITは、フィードバックが受け手の注意をどのようにシフトさせ、パフォーマンスに影響を与えるかを説明します。

今日の論文

The Effects of Feedback Interventions on Performance: A Historical Review, a Meta-Analysis, and a Preliminary Feedback Intervention Theory
フィードバック介入がパフォーマンスに与える影響:歴史的レビュー、メタアナリシス、予備的なフィードバック介入理論
Psychological Bulletin,1996
Avraham N. Kluger,Angelo DeNisi

サマリ

  • フィードバック介入(FIs)がパフォーマンスに与える影響について、歴史的レビューとメタアナリシスを行い、予備的なフィードバック介入理論(FIT)を提案

  • 607の効果サイズと23,663の観察に基づくメタアナリシスにより、FIsは平均的にパフォーマンスを向上させたが、1/3以上のFIsはパフォーマンスを低下させることが示された

  • FITの中心的な仮定は、FIsが注意の焦点を、タスク学習、タスクモチベーション、メタタスク(自己関連を含む)プロセスの3つの階層的に組織化されたレベル間で変更するというもの

  • 結果は、注意が自己に近づくほどFIの効果が減少することを示唆

  • これらの結果は、タスクの特性によってさらに修正されますが、その特性はまだ十分に理解されていない

わかったこと①:
フィードバック介入(FI)がタスク・モチベーションプロセスに与える影響

フィードバック介入がタスクの動機付けプロセスにどのように影響し、パフォーマンスにどのような結果をもたらすかを示している。
フィードバックの性質(ポジティブまたはネガティブ)、受け手の自己効力感、そして努力の調整が、パフォーマンスにどのような影響をもたらすかが強調されている。

P264

わかったこと②:
フィードバック介入(FI)がタスク学習プロセスに与える影響

フィードバック介入がどのようにタスク学習プロセスに影響を与え、最終的にパフォーマンスにどのような結果をもたらすかを示している。
タスクの新しさや複雑さ、提供されるフィードバックの種類が、学習とパフォーマンスの成果に重要な影響を与えることが強調されている。

P264

わかったこと③:
フィードバック介入(FI)がメタタスクプロセスに与える影響

フィードバック介入がどのようにしてタスク以外のプロセス(メタタスクプロセス)に影響を与え、パフォーマンスに結びつくかを示している。
フィードバックが受け手の内的な目標や自己認識にどのように作用するかを理解することは、フィードバック介入の効果を高めるために重要。
適切なフィードバックは、ポジティブな自己評価を促し、動機付けを強化することでパフォーマンスを向上させることができる。

P265

わかったこと④:
フィードバック介入 (FI) 理論の概略図

P268

主なモデレーターの要素:

  • タスクの特性:

    • タスクの複雑さや新規性がFIの効果に影響を与える

    • 複雑なタスクでは、フィードバックの種類やタイミングが重要であり、適切なフィードバックがパフォーマンス向上に寄与する

  • フィードバックの性質:

    • ポジティブなフィードバックはモチベーションを高める一方、ネガティブなフィードバックは改善点を示すことで学習を促進する

    • フィードバックの具体性と頻度が効果に影響する

  • 受け手の特性:

    • 受け手の自己効力感や目標設定の明確さが、フィードバックに対する反応を左右する

    • 高い自己効力感を持つ個人は、ネガティブフィードバックにも適切に対処しやすい

  • 目標設定とコミットメント:

    • 明確な目標と高いコミットメントがある場合、FIはより効果的

    • 目標の具体性が高いほど、フィードバックが目標達成に向けた行動の調整に役立つ

  • 組織文化とサポート:

    • 組織の文化や上司からのサポートがフィードバックの受容性を高め、効果を増強する

    • フィードバックが組織の目標と一致していると、受け手はそれを受け入れやすくなる

論文から得た学びと活用場面

フィードバック介入(FIs)がパフォーマンスに与える影響は、単にフィードバックの肯定的または否定的な側面に依存しないことがわかりました。FIsが注意を自己に近づけ、タスクから遠ざけるほど、その効果は減少し、FIsが注意の焦点をどのように変えるかが、パフォーマンスの向上や低下に影響を与える可能性があることを示唆しています。
フィードバックの内容だけでなくどのように与えられるかも重要であり、受け手ではなくタスクに注意を向けて伝えることがポイントとなりそうです。

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