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「論点思考」を読んでみた


本書の要点

  • 要点

    1. 最初の問いが間違えていたら、成果を出すことは不可能である。真の論点がどこにあるのかを見極める力を養うことが、現代のビジネスパーソンには求められている。

    2. 多くの企業はいくつもの課題を抱えており、そのすべてを解決するのは不可能だ。課題を1つに絞って、その解決に注力すべきである。

    3. 論点は状況によって変化していく。それを正しく捉えるためには、経験を積んでいくしかない。

    4. 論点を設定するときは、解決できるかどうか、解決できたとして十分な成果が得られるかどうかにこだわったほうがいい。

要約

正しい問いを見つける

>前提を疑うところから始めよ

Nastia11/iStock/Thinkstock

ビジネスで成果をあげるためには、問題解決能力が欠かせない。しかし、事前に設定されている問題が、いつも正しいとは限らない。そもそもの問いの設定を間違えていたら、その問いを解いたところで、成果を得ることはできないのである。

真の問題が何かに気づく力こそが、現代のビジネスパーソンに最も必要な能力だ。BCGでは、真の問題、解くべき問題のことを「論点」と呼び、自分で論点を発見し、定義することを「論点思考」と呼んでいる。問題解決能力が高い人とは、実のところ論点思考力が高い人のことだ。彼らは最初の問題設定がうまいからこそ、鮮やかに問題を解決することができる。勝負は、論点を絞り込む段階の巧拙ですでに決まっているのである。

コンサルタントである著者は、クライアントから最初に与えられた依頼(論点)について、まず疑ってみるところから始めるよう心がけている。
「どのような新製品を開発したらよいか」「どのようなマーケティングを展開したらよいか」と依頼されたら、「その論点を解いてはたしてクライアント企業の成長につながるのだろうか」と考える。そして「グローバルの勝ち組企業からよい提携先を見つけてほしい」と依頼されたら、「勝ち組企業と提携することがはたしてよいことなのか」と思考を深めるのである。

上司から課題を与えられたとき、疑問を感じながらも「上の言ったことだから」と、そのまま取り組むこともあるだろう。下手に疑問を呈すると、印象を悪くしてしまう可能性があるからだ。しかし、与えられた問題が常に正しいとはかぎらない以上、つねに論点の設定が間違えていないかという視点を持つべきである。与えられた問題を疑うことが、問題解決をするうえでは必要不可欠なのだ。

論点思考はあらゆる人間に必要である

alphaspirit/iStock/Thinkstock


マネジメント以外の仕事の場合、論点思考が日常業務で必要になる機会は、一見すると少ない。そのため、論点思考を学ぶことの意義がわからない人もいるかもしれない。だが、日常の些細な仕事の中にも、必ず問題解決のヘソとなる論点は存在している。論点の存在を意識して仕事をするかしないかで、仕事の結果に大きな違いが生じるものだ。上司から言われたとおりの仕事をやったのに、なぜかあまり評価されないというのは、論点を意識して仕事をしていないからである。

また、論点思考を養うためには、経験を積んでいくことが必要だ。したがって若いうちから論点、特に最も重要な大論点を見つけ出す訓練をしておかないと、いざマネジメントの仕事をすることになったとき、問題解決がうまくできなくなる。

論点思考は、マネジメント、ミドルマネジメント、一般社員といった、あらゆる階層の人間にとって必要なものである。論点を設定する段階が正しくできていれば、成功は半ば保証されたようなものだ。逆に、問いの設定の段階で誤りがあれば、その後の戦略策定・実行がいくら精緻華麗なものであっても、よい結果につながるはずがない。

目的や論点を正しくとらえた提案書ができれば、プロジェクトが成功する確率はかなり高くなる。だからこそ、コンサルティング会社のパートナーは、他の調査や分析の作業を部下に任せることはあっても、論点を策定するときは、自らの経験と能力をフル投入するのである。

論点候補を拾いだす


課題を1つに絞り込む
優秀なコンサルタントは、すべての問題を解決しようとはせずに、課題を1つに絞って、それを解決することに注力するものである。というのも、多くの企業は数えきれないほどの問題を抱えており、それらをすべて解決することは実質的にむずかしいからだ。

仕事には期限があり、工数もかぎられている。そのため、成果を出すためには、解くことで目に見える効果があがる問題を発見しなければならない。ところが、一般企業の場合、期限や工数に対する認識が曖昧な案件が多く、目の前にあるすべての問題を解こうとしてしまったり、解けそうもない大きな問題に取り掛かってしまったりしがちだ。
結果的に、すべてが中途半端なまま放置されるということもよくある。

大事なのは、問題に優先順位をつけて、1つか2つに絞ったうえで、問題解決を図ることだ。とはいえ、最優先で解決すべき論点を設定することはとてもむずかしい。誰かが答えを教えてくれるわけではないので、自分でどれが本当の問題なのかを判断しなければならない。

コンサルタントの世界では、与えられた問題の分析ができ、その問題が解決できるというだけでは、コンサルタントとして半人前だと言われる。論点がなにかを見つけ出す能力に長けている人物こそ、一流のコンサルタントと呼ばれるのだ。

すべてはリストアップから

Ondine32/iStock/Thinkstock


論点思考を行う際は、
(1)論点候補を拾い出す
(2)論点を絞り込む
(3)論点を確定する
(4)全体像で確認する

というステップを踏んでいく。
常にこの4つのステップをすべて行うわけではないし、順番通りに行うわけでもない。時と場合に応じて、必要なステップのいくつかを用いれば十分だ。しかし、(1)を省略することはできない。「本当の論点がなにか」を探るためには、まずどんな論点がありそうかをリストアップしなければならない。それこそが論点思考の出発点だからである。

問題解決が速い人は、「真の論点はなにか」をつねに考え、思いついた論点候補のうち、どれが真の論点なのか、当たりをつけていく。そして、それが果たして本当の問題解決につながるのかを、顧客や上司にインタビューしたり、自分の頭の中のデータベースを参照したりしながら、補強していく。

これができればまだなにも解決策を考えていなくても、問題解決の9割は終わったようなものである。
一方、論点設定に不慣れな人は、いきなり顧客や上司へのヒヤリングを行い、そこで聞きとったものを「構造化」しようとしてしまう。だが、インプットと構造化を繰り返しているだけでは、本当の論点は見えてこない。

論点は動くものである

論点思考が難しいのは、論点候補が無数に存在するというものあるが、それに加えて、論点が「動く」という性質を持っているからである。

まず、論点は人によって異なるということを留意しておこう。同じ会社であっても、社長が抱えている経営課題と、営業部門のトップが抱えている経営課題は異なるものだ。これは一見当たり前のようにみえるかもしれないが、実際に問題解決を図ろうとするとき、誰の論点を解いているのかを失念してしまうのは、よくある話である。

また、さまざまな外的要因や内的要因の影響を受けたり、トップの問題意識が変わったり、優先順位に変更があったりすることで、論点は動くことが多い。論点は「点」と表現されるためか、静的なイメージをもたれやすいが、実際はつねにダイナミックに動くものである。

さらに、作業が進むにつれて、当初考えていたよりも本質的な論点があることに気づくことも少なくない。例えば、新規顧客開拓や新製品開発のための調査をしてみて、そこから得られる成果が不確実であったり、小さかったりということがわかれば、論点は現行商品を既存の顧客にどう売っていくかに移動する。このように、作業を進める中で論点は「動く」ものなのである。

筋のよい論点に「当たり」をつける


当たりをつけるためのテクニック
魚釣りをするとき、釣り人は「この辺り」と思って吊りを始める。それは経験と勘による判断である。この辺りには魚がいそうだとか、朝方のこの辺りには魚がいないことが多いとか、こちらで試してダメならあそこに移動したほうがいいなどと判断しながら、少しずつ釣り場を特定していく。

ビジネスにおける論点設定もこれとよく似ている。まずは比較的容易に白黒つけられそうな問いを設定していく。業績不振は一時的なものなのか、それとも長期間続いているのか。特定事業や部門で起きている問題なのか、社内全体で起きている問題なのか。業界全体が不振なのか、その会社特有の問題なのか――このように問いを絞っていくなかで、論点がどこにあるのか、「当たり」をつけるのである。

その際、経営者が問題意識をもっていない分野に注目する方法も有効だ。経営者があまり関心をもっていない分野にこそ、大問題が潜んでいるものである。組織と組織の隙間や接点にもヒントは多い。各部門の間でしっかりとした情報共有が行われていないために無駄が生じていたり、機会損失が発生したりしているからだ。

また、現象に対して「なぜ」を5回繰り返して課題への理解を深めるという、芋づる式アプローチという手法もお薦めである。いろいろな可能性を芋づる式に掘り出してみると、つぶせないところや、引っかかるところが出てくる。そして結果的に、本当の論点がどこにあるのかが見えてくるのだ。

解決できるかどうかにこだわれ

Sergey Nivens/iStock/Thinkstock


論点を設定しようとすると、ときには論点もどきや間違った問題に出くわすこともある。
そのため、論点らしきものが目の前に現れたら、
(1)解決できるか、できないか
(2)解決できるとして実行は容易か
(3)解決したらどれだけの効果があるか
しっかりと検討してみるべきだ。

解けない論点に着手してしまったせいで、道半ばで挫折した経営者や、頓挫した経営改革というのは数多い。ビジネスの世界では、目に見える効果が表れる小さな問題から着手したほうが、最終的には大きな問題の解決につながるケースもままある。だからこそ、コンサルタントは「解決できるか、できないか」にひじょうにこだわるのである。

筋のよい論点とは、簡単に解け、容易に実行でき、実行すると大きな効果が短期間で表れるものだ。解くのがむずかしいうえに、解いたとしても実行がむずかしく、しかもなかなか効果が表れない論点は切り捨てるべきである。「その問題が解決したときに、事業は本当によくなるか、会社にとってどれくらいのインパクトがあるか」と問いかけてみるといい。その論点が重要なのか、そうではないのかが、はっきりと見えてくるはずだ。

このような筋のよしあしは、ロジカルなアプローチからは答えが得られない場合も多い。しかし、経験を積み重ねていけば、ダメな論点を素早く見抜き、いずれは簡単に正しい論点にたどり着けるようになるだろう。

すゝめ

要約では、論点思考の4つのステップのうち、
(1)論点候補を拾い出す
(2)論点を絞り込む
(3)論点を確定する、までの3つを紹介した。
(4)全体像で確認するというステップについては、ぜひ本書を参照いただきたい。

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