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美しいものについて

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株式会社プレイバックシアターで2週間に一度連載させてもらっていました。テーマは「うつくしいもの」日々の中で発見する「うつくしいもの」についてのエッセイです。
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記事一覧

うつくしいもの(10)「成長していく少女のうつくしさ」【岩橋由莉連載エッセイ】

うつくしいもの(10)「成長していく少女のうつくしさ」【岩橋由莉連載エッセイ】

母の日に、妹と姪っ子がやってきた。
姪っ子は中学二年生。ふた月くらい会わないうちにまた背が伸びた気がする。
図書館も開いてないし学校にも行けないので読む本が全くないという。
わたしの二階の書庫に上がってくる。
伯母としてはここはひとつ、おお! と思われる本を渡したい気がするが、趣味を押し付けてはいけないといましめ、冷静に彼女の今の好みを聞いて、何冊か渡し、選んでもらう。

部屋を整理している中で昔

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うつくしいもの(9)「真をもつ人のうつくしさ」【岩橋由莉連載エッセイ】

うつくしいもの(9)「真をもつ人のうつくしさ」【岩橋由莉連載エッセイ】

書けない。書けないのです。二週間に一度、十回連載のエッセイを書くお話をいただいた時には、正直楽勝だと思っていました。日々、うつくしいものを見つけるのが大好きだし、お話をもらってからも書きためていたので、それを出していけばいいと高を括っていました。ところが、そうはいきませんでしたよ!

書きためたものは時期を過ぎるとフレッシュな感覚が薄れてそれを発表したい気持ちにはなりません。ならばリアルに感じたこ

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うつくしいもの(8)「ツルカメのうつくしさ」【岩橋由莉連載エッセイ】

うつくしいもの(8)「ツルカメのうつくしさ」【岩橋由莉連載エッセイ】

天気のいい夕方に散歩することが日課になっている。

連日テレビは過去最多記録を更新する報道ばかり。目に見えないものとの対処の仕方をSNSなどで読めば読むほど、自分の衛生管理がまだまだだなあという気持ちになる。家には高齢者がいる。気をつけないといけないのはわかっているが、あまりにきっちりやりすぎるのも何だか違う気がする。

さらにここ数日、3本書かないといけないものを抱えていて、それがうまくいかなく

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うつくしいもの(7)「ちいさきもののうつくしさ」【岩橋由莉連載エッセイ】

うつくしいもの(7)「ちいさきもののうつくしさ」【岩橋由莉連載エッセイ】

先日、仕事から帰ると、母が興奮していた。
聞くと「玄関に蛇がいた」というのだ。
大きな太い蛇が玄関にまっすぐに横たわっていて、母が驚くと、家の庭の方へ逃げていったとのこと。
それを聴いて私は少しうれしくなった。
じつは数年前に私も庭で蛇を見たからだ。

洗濯物を干そうと庭に出たら、大きな白い蛇がとぐろを巻いていたのだ。
蛇は日向ぼっこをしているように誠に気持ちよさそうだった。
あまりに立派で、もう

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うつくしいもの(6)「あきらめないことのうつくしさ」【岩橋由莉連載エッセイ】

うつくしいもの(6)「あきらめないことのうつくしさ」【岩橋由莉連載エッセイ】

オンラインで文字や画像ばかり見ることに飽きたので夕方散歩することにする

広場で六十代半ばのご夫婦らしき方たちがバトミントンをしていた

どちらも打っては落とし、打っては落としと、ラリーが全く続いていない
あまり動くことが得意でなさそうなお二人

不思議に思ってみていると、少し離れたところで腕を組んで二人を憮然として見てる小学生の女の子が一人。三年生くらい。
「もー、ぜんぜんやれてないやん!」と怒

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うつくしいもの(5)「自分の言葉を語る美しさ」【岩橋由莉連載エッセイ】

うつくしいもの(5)「自分の言葉を語る美しさ」【岩橋由莉連載エッセイ】

私は小さい頃、石を裏返すことが好きな子どもでした。
小学校は和歌山城の近くにあって、バスで帰る子どもたちは天気がよければ帰り道に二つ先の停留所を目指して、和歌山城の中を通り抜けていきます。
そこでは、鳩を追いかけたり、虫を取ったりとそれぞれ好きなことをして道草をしていきます。
私は時々ひとりで石を裏返すあそびを好んでやっていました。
道の端っこや人の通りそうもない場所の石を裏返すのです。
ここで裏

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うつくしいもの(4)「きえていく美しさ」【岩橋由莉連載エッセイ】

うつくしいもの(4)「きえていく美しさ」【岩橋由莉連載エッセイ】

最近、Facebookの記事やユーチューブ、TVで亡くなった方の声や映像をA.I.が再現するものを立て続けに見た。今後は映像や音声だけでなく、嗅覚、触覚のコンテンツも増えていくだろうとのこと。

ダメ押しはキアヌ・リーブス主演の映画「レプリカズ」を見た。事故で突然亡くなってしまった愛する家族をクローン化し、意識を移し替えて完璧なレプリカとして蘇らせて生活する。

すごい! それを見てると人が死ぬと

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うつくしいもの(3)「削いで積み重ねてきたもののうつくしさ」【岩橋由莉連載エッセイ】

うつくしいもの(3)「削いで積み重ねてきたもののうつくしさ」【岩橋由莉連載エッセイ】

先日、同年代の女性と話している時、昨年の紅白で元アイドルだった人が歌っている姿が少々イタかった、という話になった。衣装、髪型、メイクなどが今の年齢と合っていないと感じたそうだ。私も彼女の歌ってる姿を垣間見ただけだけど確かにギョッとしたことを思い出した。

その元アイドルは今は60に近い年齢だが、体型は若い時から変わらずとてもスリムだ。顔もしわひとつなくピカピカしている。自分の生活の中にその人がいた

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うつくしいもの(2)「愛されてる女のきれいさ」【岩橋由莉連載エッセイ】

うつくしいもの(2)「愛されてる女のきれいさ」【岩橋由莉連載エッセイ】

くじらちゃんがもうすぐ結婚する
くじらちゃんとは、何年も前から私のワークショップに来てくれるようになり、縁あって今はプレイバック・シアター研究所に勤務している女性だ
ちなみにこのエッセイと羽地さんのコラムの隔週投稿の企画者であり、編集者でもある
そして詩人でもある

出会った頃は20歳だった彼女が最近際だってきれいになっている
披露宴のドレスに向けて糖質ダイエットをしてるせいなのかなと思っていたけ

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うつくしいもの(1)「地の畏怖とうつくしさ」【岩橋由莉エッセイ】

うつくしいもの(1)「地の畏怖とうつくしさ」【岩橋由莉エッセイ】

うつくしい、ということ
それは容姿端麗ということではなく、うつくしさ、というスピリットを感じるもの
そんなもの、ひと、瞬間がたまらなく好きです
わたしにとってなくてはならないものです
それは特別なことではなく、日々の中にあるものだと思うのです
そんなことをそっと手にとるようにことばであらわすことができたら、と思っていました
このことは一方で賭けでもあって、瞬間そう感じることを自分の中であたためて言

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