見出し画像

東京五輪は海外からどう評価されたのか?

海外からの反応

 閉会式の直後、ロンドン2012大会の計画に関わり、その後IAEH(国際イベントホスト連盟)の会長を務めたレイン・エドモントンからメールが届いた。それは英国のBBCが東京五輪を好意的に放映したことで、多くの人がスポーツを楽しみ、感動することができた、そして多くの困難があったにも関わらず、開催を実現してくれた東京の努力に心から感謝の意を伝えたいという内容であった。東京五輪についてはいまだに賛否両論があるが、私は、五輪の流れを止めなかった日本の姿勢が、長い目で見て、世界から評価されると信じている。

無観客の五輪

 東京五輪の無観客が決まったのは、開会式の直前であった。その時に無観客で五輪ができるのかと、多くのメディアから取材を受けたが、安全安心のために、チケット収入がゼロになるという犠牲を払いつつも、万全の態勢で開催に臨む東京の勇気ある決断が、世界から共感を持って迎えられるのではないかと述べた。しかしその一方で、新型コロナ感染症によって金銭面でイベントを支える協賛企業は、大きなダメージを被ることも指摘した。無観客になったことで、競技会場での公式グッズや公式飲料の売り上げが消える協賛企業や、買い物時に、唯一使用可能な公式クレジットカード会社などが受ける影響は大きい。また、IOCとパートナー契約を結ぶ国際的な企業についても、脱炭素やSDGsに加え、健康、衛生、レジリエンス(自然治癒力)、ウェルビーイングなど、ウィズコロナの時代を見据えた、新しいキーワードを咀嚼した関係性の構築が必要になるだろう。

東京五輪の意義

 東京大会を開催する意義を見出すとすれば、それは世界的な五輪放送が日本にもたらす果実の大きさにある。五輪期間中、過去最長の7000時間の五輪番組を制作する米国放送局のNBCに加え、欧州放送連合(EBU)や中国中央テレビ(CCTV)、そして民放とNHKが共同で放送を行うジャパンコンソーシアムなど、放送権を持つ世界の放送局が五輪番組を組み、自国選手の活躍を放送した。加えて、放送権を持たない、ネット放送を含む無数のメディアが、競技結果やメダルの獲得数を報道した。これによって観客の有無に関係なく、世界の関心が東京と日本に注がれたことは否定できない。
 今回は、緊急事態宣言下の東京で開かれるたため、取材には大きな制限が加わったが、安全安心、そして正確な五輪運営に関して、日本の好ましいイメージが世界に喧伝されたと信じたい。五輪の報道番組の中で必ず紹介される日本の歴史・文化・芸術も、絶好のプロモーション機会になったのではないだろうか。その一方で、観客で賑わう競技施設や、世界の人が集う街中の祝祭空間といった五輪特有の風景が映像化できないため、茫洋とした開催都市のイメージが伝わった危険性もある。

スポーツの力

 スポーツには大きな力が備わっている。これをパワー・オブ・スポーツと呼ぶが、五輪のような巨大スポーツイベントは、開催地のイメージを大きく変える力がある。2012年のロンドン大会が、都市のイメージを大きく変え、その後の外国人観光客の数を大きく伸ばしたように、今回の東京五輪は、将来のインバウンド観光に向けた投資と考えたい。冒頭のレイン・エドモントンのメールにもあったように、五輪放送は、世界の視聴者を虜にする映像を届け、困難を乗り越えてメガスポーツイベントを成功させ、東京と日本のイメージを良い方向に転換したと信じたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?