見出し画像

煙が目にしみる 〜長い休日の現実逃避な段ボール燻製〜

ふだん料理をしない人がハマると深い「沼」のひとつに燻製があると思う。

ジェンダー的なバイアスだと批判を受けるかもしれないけど、「オトコ」の場合、家事としてではなくセカンドライフの生業、ライフワークとして「燻製」にのめり込む人が一定数いる気がする。蕎麦打ちとちょっと似ているというか。

かくいう自分も先日何十年ぶりかに(若いときキャンプで試して以来)その燻製の世界への扉を開け、「うわ、やっぱ奥が深い。沼だわ〜沼だわ〜」とはしゃぎまくった。自宅に籠もって世界を救わねばならぬ現在、アウトドアで大っぴらに燻製を楽しむというわけにもなかなかいかないけど、もしも心配事が遠く過ぎ去ったら、皆さんも是非、沼のほとりでつま先ぐらいちょびっと浸してみてください。

これは少し前の体験です。

何でも興味を持ったことは自分でやりたい派の妻がとうとう燻製にそのアンテナをビビビと反応させたらしく、ネットでいろいろ調べて「段ボールでもできるらしいよ」と言ってきた。

「知ってるー」と私はこともなく答えた。若い頃に湖のほとりで友人たちと焚き火を囲みながら燻製を仕込み、星空の下でそのおいしさに悶絶した記憶は、今も煤けた匂いとともに鮮やかに脳裏と味蕾に染みついている。ようし、いっちょまたやったるか、と勇んで出かけた。

やってみると簡単、段ボール燻製。

画像1

これがネット情報などを頼りに妻が構築したシステム。カセコン式。ボンベは段ボールの外に出して冷却させないと、箱の中で過熱した場合爆発の危険があるそう。クワバラクワバラ。

画像2

中はこうなっている。カセコンには百均で買ったステンレスのトレーを置き、アルミホイルを敷いて市販のチップを撒いた。チップは初心者でも抵抗のない香りの「桜」をチョイス(皆さんも最初は桜から始めるといいです。嫌味のない香りです)。チップは着火しなくても、トレイからの熱で自然に燻ることがやってみてわかった。熱源から金網(これも百均)までの高さは50cmとした。

燻製06 スタート
楽しみすぎて並べに並べましたとも。

今回試した食材はご覧のとおり。

・自家製ハム(暮らしの手帖に載ってたレシピ)
・ソーセージ(丸大「燻製屋」をさらに燻製するという暴挙)
・ゆでたまご
・6Pチーズ
・かまぼこ(スーパーで半額)
・バタピー
・ポテチ(うすしお)

燻す時間は1時間を目安に、もし色が薄ければもう少し続行、という曖昧なプランで開始。たぶん熱源に近いほど早く色濃く燻すことができるんだろうと思うけど、熱も伝わりやすいので食材が過度に乾燥する心配もある。今回はソフトに満遍なく色づける、を目標にした。

火加減はごく弱火で、あまり熱が強いとチップが燻りを通り越して炎を上げて燃えちゃうので、マメに消して調節。

燻製09 途中やや寄り

30分ぐらいで様子を見てみる。卵はうっすら色づいてきた。

燻製11 途中チーズ

チーズも表面に変化あり。少し乾いて縮んだかな。色もほんのりついている気も。

あんまり頻繁に開け閉めすると煙がもったいない、と妻に注意されながら、チマチマ火加減を調節しつつ、食材の位置なんかもローテーションさせつつ、つきっきりで面倒を見る。

楽しい〜。地味だけどワクワクする。これが燻製沼か。

燻製11 途中ハム

自家製ハム(暮らしの手帖に載ってた、下ごしらえだけで二日かかるやつ)もいい感じに。

画像8

そして、待ってて退屈するかもと思った1時間はあっという間に経過。

ばばーん。ばばばばーん。

燻製13 完成オンパレ
勝利の予感。

完成。人生2回目、前回は20年近く前だけど、難なくあっさり大成功。その晩はスモーキーパーリィ開催。イエーパーリナイ。

食べてみた感想。

まずは、ゆでたまご。

画像9

香り★★(星は4段階)
風味★★
色づき★★★
いい感じに色がついて俄然食欲をそそる。熱源から遠かったおかげか、白身もあまり乾いたり固くなったりしていない。風味も香りもソフトで食べやすいけど、ガツンとくるスモーキーさはない。

チーズ。

燻製15 完成チーズ

香り★★★
風味★★★
色づき★★★
手堅い。超アンパイ。おじさんにウィスキーグラスを持たせたがる味。こちらも温度管理のおかげで溶けずにうまく色づいた。かわいいやつよのう。

そして最高スモーキー賞受賞作品がこちら! 自家製ハム!

燻製16 完成ハム03

香り★★★
風味★★★★
色づき★★★
もうこの暮らしの手帖のハムがおいしいのだが、実は茹でて完成するレシピだったので、通常のハム同様燻製までかけてみたという具合。するとこれが、口に運ぶや否や妻と無言で見つめ合い、うなずき合う味に昇華。もう完全に(ウソ、ほとんど)お店の味。もとは100gで108円そこそこのアメリカ産豚なのに、驚きのフレーバー。いやかえって豚自体に強い主張がないからか。とにかく「俺らハム屋さんになれんじゃね?」と勘違いするほど。

まあたしかに茹でるまでで三日かかってるし、都合四日かかって完成してるわけなので、手間を考えればおいしくなるのは当然だけども。ね。

他、食べちゃったので写真ないけど、感想は以下の通り。

丸大の「燻製屋」
香り★★
風味★★
色づき★
色はもともと茶色いからわからないよね。味は、中身は燻製する前と一緒。ちょっとだけスモーキーさ、高級さが増したかなという程度。あえてするほどのこともなかったかなあ。もっと素朴なソーセージをチョイスすれば変化もハッキリわかったかも。たまたま冷蔵庫にあったやつが「燻製屋」だったからなあ。シャウエッセンを選ぶ勇気が欲しかった。

かまぼこ
香り★★★
風味★★★
色づき★★
意外と健闘。口に入れてすぐ、かまぼこの甘い香りと煙の香りが合わさってふわっと香るのが好感。煙の存在感はいちばんかも。スーパーで半額の安いかまぼこがいいお酒のアテに変身。お魚系はかなりのポテンシャルを持っていることが判明。次は干物なんかも試したい。

バタピー
香り★★
風味★★
色づき★
最近フレーバーつきピーナツが流行ってきているが、そこまでのアレンジ感はないかも。かなり手強い。思ったほどスモークがかからなかった。でもバタピー自体がおいしいからよしとする。

ポテチ
香り★★★
風味★★
色づき★
こちらもかまぼこ同様、意外な伏兵。色づきこそしなかったものの、スモーキーさはピカイチ。一晩経っても香りが損なわれなかった。バーでシングルモルトと一緒に提供したらいいのに、と思える味。ただシンプルなポテチよりパンチがかなり強くなっているので、テレビなどのお供にバリバリ食べ進めるには主張しすぎるかも。

総評。

やっぱりすごく簡単で、すごくおいしい。時間をかけるだけで、おいしいものがサラッとできてしまう。魔法かよ。今後、熱源との距離はどうだとか、チップはどうするとか、こっち方面の食材はどうなるかなとか、先達が皆ハマって行った道筋が目の前にまざまざと浮かび上がってくる。アルタクス、おいで! 足を上げるんだアルタクス! いやいやそんな悲惨な沼じゃないけど。

時間はなぜか今、たっぷりある! という皆さん。もしカセコンで火を焚いて怒られない、換気が良くて人との距離が確保できる場所があれば、こっそりやってみるのも手かも。

マンションのベランダはオススメしません。たぶんかなりスモーキーになってしまうので。

ああ、またの〜んびり燻製したいなあ。


追伸。いつの間にかフォロワーさんが100名を突破しました。ありがとうございます〜。ヒマなときはバンバン更新、本業が忙しくなると一月放置もザラですが、ときどき目を通してくださると嬉しいです! いえーい。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?