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究極のおうち中華、十人十色の家常豆腐。

ここで問題です。ジャカジャン。ビールが大好きなおじさんがいます。そしておじさんちの冷蔵庫には厚揚げが入っています。どうなるでしょうか?

家常豆腐03

こうなりますね。正解。

両面をフライパンでカリッと焼いて、刻みネギ、おろし生姜を薬味にトッピング、醤油をたらーり。なんて瓶ビールとグラスが似合う光景でしょうか。家で料理をしない&帰りが遅くて晩ごはんが家族と別々になるおじさんには、これとサバ缶とギョニソー(魚肉ソーセージ)ぐらいを与えておけばいいのです。さらに、もしたまにキムチと赤ウィンナーがあれば、毎日がんばれます。健康が気になる人には茹でブロッコリーをかじらせて。

書きながら、いやほんまにこれでええやんと思ってしまった。たしかに王道の食べ方はこれです。しかし、実は本場の中国料理では、とある厚揚げ料理がめちゃくちゃメジャーなのをご存じですか?

その名も家常豆腐。

なんか江戸時代に徳川家のエライ人が愛した豆腐料理みたいですね。家常豆腐(jiachangdoufu)。カタカナにするのが難しい発音なのですが、ジャーチャンドウフ、チャーチャントウフといったところです。意味は文字どおり「おうちの、いつもの豆腐料理」

もとは四川発祥のようですが、今では中国全土に広まって各地方・家庭の特色を取り入れており、これといったお決まりのレシピはないのが実情。その点では同じ豆腐を使った中国料理の花形、麻婆豆腐よりも曖昧模糊としています。もこもこです。

さまざまなバリエーションが広がっているなかで強いて共通点を挙げるとするなら「揚げた豆腐」を野菜や肉と炒めた料理、です。揚げた豆腐とは、日本ではすなわち厚揚げ。家常豆腐とは、厚揚げを入れた野菜炒めなのです。

なーんだ、それだけか、とお思いでしょうが、でも毎日の食卓で「あ、そうだ中華の炒めものにしよっかー」と思い立ったところで、ようしじゃあ厚揚げも入れちゃおう、となりますか? なかなか厚揚げをそこで起用する発想がないでしょ? ちょっと変化球でしょ? 

おうち中華といえど、入念な下ごしらえがおいしさの秘訣。

実はうちの奥さんは厚揚げがあんまり得意じゃないんだけど、この晩は「LINEの配信でスネオヘアーのライブ見るから晩ごはん別々でいいよ」とのことだったのでいそいそと厚揚げを買ってきた。

家常豆腐2-04

麻婆豆腐同様いかに豆腐に味をしみ込ませるかがキモなので、あらかじめサッと下茹でしてザルに空けておく。いわゆる油抜きというやつです。熱湯を回しかけるのでもOK。

家常豆腐2-06

きょうの具は、豚肉(いつもの切り落とし100g程度)、関西人大好き万願寺唐辛子(2本)、エリンギ(1本)。

豚肉は塩コショウ、醤油、紹興酒を少量もみ込んでおく。

いつものように炒めてゆく。

家常豆腐2-08

鍋に刻みニンニク、生姜を熱し、豚肉の切り落としを炒める。豚肉に火が通ったらちょっとよけて豆板醤(大さじ2分の1程度)を鍋肌で熱する。もう何ですな、見慣れた風景ですな。いつも通る散歩道のようなリラックス感。

家常豆腐2-09

下記の調味料と水をジャーッと100mlぐらい流し入れ、全体にスープ状に溶けてなじんだら厚揚げを入れて煮込む。

<この日の、我が家の家常豆腐の味つけ>
先ほどの刻みニンニク、生姜、豆板醤に加え
醤油・・・大さじ1
オイスターソース・・・小さじ1
鶏がらスープの素、砂糖(ひとつまみ)

家常豆腐2-10

5分ほど煮込み、厚揚げが色づいて水分が減ってきたら火の通りにくい順に野菜を入れてもうひと煮込み。ごま油を鍋肌から回しかけてできあがり。気分によっては水溶き片栗粉でとろみをつけることもあります。

抜群の安定感と地味さ。それが家常豆腐。

家常豆腐2-02

うーん、いい。いぶし銀の存在感。抜群のバイプレイヤーっぷり。肩肘張らないふだん遣いの味わい。ハレとケで言えばケの極み。コクうまピリ辛厚揚げでビールが進む。

家常豆腐02

これは別の日の家常豆腐。チンゲンサイとニンジンで決めた。

味つけも使う食材もほんとうに決まりはなく、四川に近いあたりではもう豆板醤キメッキメの辛い系みたいだし、他の地方ではあっさり塩系だったりオイスターソース系だったり、自由気まま。きっと家庭の数だけ、いや囲む食卓の数だけ、いやいやもっといっぱいの家常豆腐があるのだろう。

でもここに厚揚げがいなければただのやっつけ中華炒めに終始してしまうところですが、厚揚げのおかげでれっきとした中国料理「家常豆腐」に昇華することができるのです。かといって主張しすぎず、どんな具とも足並みを揃えてくれるから頼もしい。皆さんもっと厚揚げに目を向けてやってください。あいつ、ああ見えてけっこうできるやつなんです。

もしもおうち中華のレパートリーがマンネリ化したら、ぜひ一度お試しを。


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