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もう粉をこねるしかない〜自家製豚まん奮戦記・いきなり優勝〜

豚まんを包んだことはありますか?

メロスは決意した。必ず、かの白くてふわふわの粉をこねねばならぬと準備した。メロスには政治がわからぬ。メロスはただの食いしん坊のおっちゃんである。酒を飲み、昼寝をしながら暢気に暮らしてきた。けれども食べ物に関しては人一倍前のめりであった。

いや、メロスじゃないけど。

何でもかんでも回りくどく料理することで食文化の奥深さにふれつつ、毎日の暮らしを慈しみ、と同時にいろいろ大変なことから目を逸らす生活が続いている。このところ炒めものというか、フライパン(中華鍋)ひとつでチャチャッと済ませるごはんがちょっと続いちゃった気がする。ここはかねてからいよいよのときに備えてとっておいたメニューに挑戦し始めるべきときではないだろうか。

そのメニューとは、もうおわかりだろうが、豚まんである。

東日本在住・ご出身の方には「肉まん」のほうが通りがよいのは重々承知だが、肉=牛の関西圏在住ゆえ、551の蓬莱や二見でもおなじみ「豚まん」と親しみを込めて呼ばせていただく。

豚まんでビール。これが本日の晩ごはん。皮の生地もあんも、この際オール自家製で挑戦といこうではないか。明らかにふだんわざわざしない「生地をこねる」という作業。出来合いで済ませてじゅうぶんおいしくいただけるところを、あえて不慣れな自分に面倒な行程を課すというリスキーな行為。

幸い、先日妻の実家からお裾分けしていただいたタケノコの水煮がまだ残っている。そして妻が折に触れせっせと干してくれていた自家製干し椎茸も備蓄がまだある(お得なときに生椎茸を買ってベランダで干してます)。豚ミンチも冷凍ストックがある。玉ねぎもある。あんに関しては新規購入不要。皮に関しても、薄力粉、ベーキングパウダー、油、砂糖と全て揃っている。なんと今回、手作り豚まんに挑むにあたって食材の買い足しはゼロなのだ。ワハハハハ。

皮のレシピに関してはもうなーんにも知らないので、他所様から拝借させていただいた。妻が「これがいちばんミニマムで楽」と教えてくれた「なかしましほさん」のものである。どうもこの分量で3つ作れそうだったので、うちでは倍に増やした。

<なかしまさんのレシピ×2>
薄力粉・・・200g
砂糖・・・大さじ2
ベーキングパウダー・・・10g
油・・・大さじ1
湯・・・120ml

書かれていたとおりに実践。YouTubeの動画もリンクされており、参照できたので不安はなし。

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パンも作れる妻が生地の表面を見て不安がる。

「こんな凸凹でいいの?」

たしかに妻の作るパン生地はいつも赤ちゃんのほっぺのようにスベスベ。しかし豚まんはボコボコしているものだから大丈夫だろうと決めつけて15分寝かす。

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リュミエールの「月世界旅行」を彷彿。

一方あんに関しては全くのフリーハンド。豚ミンチ、細かく刻んだタケノコ、玉ねぎ、干し椎茸(戻し汁も入れる)を混ぜ、塩コショウ、オイスターソースなどで味付け。つなぎにはお麩を砕いて入れる。ふだん餃子を作っているときの作法を基本的には踏襲。野菜がキャベツとニラからタケノコと玉ねぎに変わったぐらい。15分では作れそうになかったので事前に作っておいた。

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あとで思ったけど、丸めた生地とほぼ同量の体積分ぐらいのあんの量が過不足なくちょうどいい気がします。このときはドンピシャでした。

15分経ったので生地を6等分にちぎって丸め、薄く広げて、見よう見まねであんを包む。蓬莱のオープンキッチンのお姉さんたちの手早く無駄のない手さばきを思い出しながら、なんとかあのキュートなねじりを再現しようと奮闘。

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うおー、豚まん包んでる感満載。This is it!

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生地の伸びがいいので、破けたりもせずに無事包み終える。

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あとは蒸し器で15分、強火で蒸すだけ。完成! ババババーン。

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なんとこれは! まごうことなき豚まんちゃんではないか!

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ちなみに左ふたつが作者である私の手になり、右のふたつが妻のもの。こうして較べてみると丁寧さが違いますね。まだまだ修業が足りないようだ。ぐぬぬぬ。とはいえ傍目には上出来じゃないですか?

せっかくなのでアップでも見てください。

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うまそー。この表面のはちきれそうな感じと艶、まさに豚まん。

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参考までに、蒸すとこのぐらい膨らみます。蒸し器に並べるときはこの膨らみを考慮して、お互いがくっつかないよう距離を置いてください。今大事ですからね、距離。密のほうは、まあ蒸し器だから無理だけど。

ではではと、いそいそとビールを開けて、乾杯。蒸し立てを冷めないうちにかぶりつく。そのお味は?

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いきなり優勝!

これが、ビギナーズラックと言おうか、なかしまさんのレシピがすごいんだと思うけど、生地のもっちりしっとり感、ほどよい弾力とちょうどいい甘みが、もう完全にお店の味。

あんのほうはもう少ししっかり味付けしてもよかったかと思ったけど、妻が「このぐらいでいいよ。からし醤油つけてちょうどいいもん」と優しくフォローしてくれる。彼女曰く、蓬莱の豚まんはあんの味が濃いのでからし醤油をつけないとのこと。なるほど。まあ家庭料理にありがちなナチュラル風味ってとこで。タケノコの食感がいいアクセントになるので、今の季節に作らずにいつ作るんですか、ってなるぐらい。

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見てこの肉の密度。コンビニの中華まんみたいに隙間空いてないでしょ。

いや、しかし思った以上に簡単だった。生地の作り方・材料が想像していたよりはるかにシンプルだったので、もうデビュー・トゥ・ウィン。いきなりこんなにうまくできちゃうと、自分に才能があるんじゃないかと錯覚してしまう。

ちなみに市販よりやや小ぶりなはずですが、3つ食べてビール飲むとすごくお腹いっぱいになります。やはりもともとのレシピでちんまいのを4つ作って、他にも春雨サラダとか中華前菜を揃えたりするほうが健康にいいかも。

いやしかし、これはまた知らない世界が眼前にパーっと開けた。ジミー・クリフが「何もかもきれいに見通せるよ」と歌っている。今度はキーマカレーを包んでみたいと企んでいるのである。

スパイスカレーまんとか流行ったらいいのに。

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