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兄に見られたらハズいnote


割りを食う兄としたたかな妹

わたしには三つちがいの兄がいる。
今日はその兄について書いてみようと思う。

小さい頃はよく殴りあいのケンカをしていた。

力では負ける。
知恵をつけたわたしはケンカになると
「おにいちゃんぐあぁ~」と母に泣きつく作戦にでた。
それはもう演技派女優もびっくりの熱演っぷりで。

そうすると見事に兄が怒られるので、
シメシメと意地悪ばあさんのように思っていた。
性格の悪い妹をもつ兄を思うと察するに余りある。

いまは申し訳程度に申し訳なかったと思っている。

ケンカもしたけどよく助けてくれた兄

そんな兄に、わたしは小さい頃からよく助けてもらっていた。

ポッケに両手を突っこみ、ハードボイルド気取りで歩いていたとき。
顔面からこけて額から流血したことがあった。
ぎゃーぎゃー泣くわたしを、兄が抱っこして家まで連れて帰ってくれた。


母が買ってきたおやつのメロンパン。
お兄ちゃんと一つを半分こしてねと言われた。
まだ兄が帰ってきていないことをいいことに、半分どころか2/3食べた。
兄から呼び出しがかかる。
”調べはついてるんだ!”と言わんばかりに、兄はチラシの裏に絵を描き、
どう考えても1/3しか残っていなかったとわたしに説明した。
でも兄はそのことを母にいいつけなかった。

メロンパン


いつまでも世話のかかる妹

小さい頃だけでなく、大きくなってからも助けてもらっている。

わたしが薬を飲んだ時にむせて、のどがただれてしまったとき。
兄が救急の病院に車で送ってくれた。
(そのときわたしが2リットルの水を小脇に抱え、
飲み切ったことから「水2リットル事件」と名付けられた。)


祖父の葬儀。最後にみんなで棺桶にお花を入れたとき。
係りの人からお花をもらうのだが、人が多くて取りにいけなかった。
どうしようと思っていたら、兄がスッと隣に来てきれいなお花を
分けてくれた。
専属執事かよと思った。


わたしが同棲を解消することになり、自分の荷物を運び出すときも。
兄は次の日から広島へ転勤だったにも関わらず、車で荷物を運んでくれた。
身も心もボロボロだったわたしに「次に彼氏できたら教えろよ!」とメールをくれた。
(ボロボロになったのはわたしの責任で、お相手はまったく悪くない)


そう。兄はやさしいのである。
果てしない大空と広い心をもっている。
そしてうっすらお察しかもしれないが、
わたしはしたたかでありながら、どんくさいのである。

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わたしが兄になにかしてあげたことがなかったか
必死に思い出してみたが、なにも思い当たらない。


ただひとつ。
これを機に兄と絆が深まったのではないかと思うことがある。


リング事件

これは、今も兄と話すとよく話題になる思い出。
かの有名なホラー映画「リング」にまつわるお話である。

確かわたしが中学生くらいのときだったと思う。
TVで放送されたのだ。

その日、母は体調が悪く、リビングの隣の部屋で眠っていた。
そのため、兄とわたしはリビングでおとなしくTVを見ていた。

前の番組の延長で、「リング」がはじまった。
何の気なしに見ていた。最初は余裕だった。
ちょっと不気味だけど、そこまでこわくないじゃん!と笑って話していた。




貞子がTVから出てくるまでは。



井戸から出てきて、TVの中で止まると思っていたのだ。
兄も同じ思いだったと思う。

それがTVから出てきてしまったのだ。
えらいことが起きた…
前代未聞の事件である。

見てはいけないものを見てしまったという思いで
二人とも口がきけなくなっていた。

エンドロールが静かに流れる。


そのとき。


ガタッ


という音とともに隣の部屋の扉が開いた。


ヒィィイィッ!


と縮みあがる兄とわたし。


すると母が寝起きのしかめ面で
「あんたたち、はやく寝ないかんよ」
と言い、ピシャリと扉を閉めた。


現実にかえった二人。
それでも恐怖は消えず。

どちらからともなく洗面所に行き、二人並んで歯みがきをする。


言葉少なに
「あれは映画だもんね」
「ああいうことは起きないよね」
「そうだよ。大丈夫だよ」

と言い聞かせるようにお互いを励ましあった。
しかし頭のなかでは「きっと来るー、きっと来るー」というあの曲が
エンドレスで流れていた。


貞子が夢に来ないよう願いながら各々の寝室に向かったあの日。

同じ恐怖を背負ったもの同士、絆が深まったんじゃないか
と、勝手にわたしは思っている。


結婚することになった兄

そんな兄が今年入籍した。
それを父づたいに聞いたわたしはびっくりした。
寝耳に熱湯をぶっかけられたくらいびっくりした。

3年ほどお付き合いをしている彼女とは何度か会わせてもらっていた。
明るくておおらかでよく笑う彼女がわたしも大好きだ。
結婚してくれるといいなと思っていたので知らせを聞いたときは
ただただうれしくて母と一緒に泣いた。


わたしたち兄妹は頻繁に連絡を取り合ったり、
一緒にどこかへ出かけたりすることはない。
だから、特別仲が良いというわけではないかもしれない。

それでもやっぱり兄の幸せはうれしい。
兄がこれからも笑顔で心ゆたかに暮らしてくれたら
妹としてこれ以上の喜びはない。


コロナの影響でまだ結婚式は挙げていないけれど、
その日が来たらご祝儀は奮発しようと思う。


これまでのお詫びとお礼も込めて。

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最後まで読んでくださってありがとうございます。

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