『クリームソーダシスターズ』

 ①ある町に、３人の女の子が住んでいました。
長女のメロンソーダちゃん、次女のブルーハワイソーダちゃん、
三女のレモンソーダちゃんの三姉妹です。
３人はとても仲が良く、いつも一緒にお出かけしていました。

②今日は絶好のピクニック日和です。
３人はお弁当を持って砂浜まで出かけました。
「こちらでよいかしら」
「こちらでよいのではないかしら」
「どこでもいいわよ」

③空は真っ青です。
メロンソーダちゃんが言いました。
「まるで、ブルーハワイソーダちゃんみたいだわ」
ソフトクリームのような雲が、空にぷかぷか浮かんでいます。
「あたしは空にしか見えないけど」
レモンソーダちゃんはいつもゴキゲンナナメです。
「あらあら、まあまあ」
ブルーハワイソーダちゃんは笑いました。

④ハムときゅうりとたまごのサンドイッチを食べながら、
３人で海を見ています。
「このサンドイッチのきゅうり、メロンソーダちゃんみたいだわ」
波が押し寄せて、音楽を奏でます。
ザザーン、ザー
ザザーン、ザー
「あのブロッコリーみたいなたくさんの木、メロンソーダちゃんみたいだわ」
明るい緑が光を浴びてキラキラしています。

⑤「空もアオ。海もアオ。木はミドリ。あたしがどこにもいないわ」
レモンソーダちゃんがゴキゲンナナメです。
カモメが空を飛びながら、トンビが空を飛びながら、
チラッとこちらを見たような気がしました。

⑥「そう言えば、あの太陽」
「そうそう。あと、さっき歩いてきた道に咲いてたヒマワリ」
「あ、それにこのサンドイッチの一番おいしいたまご」
「たまごと言えばニワトリだし、その子供はヒヨコ」
「お弁当のあとはおやつのバナナケーキよ」
「レモンのハチミツ漬けも持ってきたわ」
キイロがいっぱい。
「そうね」
レモンソーダちゃんがぶっきらぼうにほほえみました。

⑦「毎日が日曜日だったらいいのにな」
ブルーハワイソーダちゃんが言いました。
ザザーン、ザー
ザザーン、ザー
３人は毎日なんやかんやで忙しいのです。
だから今日は、とても久しぶりのお休みなのです。
ザザーン、ザー
ザザーン、ザー
３人はなんだか眠たくなってきました。

⑧ザザーン、ザー
ザザーン、ザー
波は静かに行ったり来たり。
雲は空を泳いだり漂ったり。
風がそよそよ髪の毛を躍らせて
全部がゆりかごみたいです。

⑨気が付くと３人は、常夏の島にいました。
みんなの前で踊っています。
「レディースアンドジェントルメン！今宵は三姉妹による
華麗なダンスショーをお楽しみください！」

⑩踊ったこともないのに、体が勝手に動きます。
風と空と、波と土と、太陽と花と、草木をトモダチに、
一体化するように自然に溶けるように踊ります。
ザザーン、ザー
♪♪♪♪♪♪♪
ザザーン、ザー
♪♪♪♪♪♪♪
ザザーン、ザー
♪♪♪♪♪♪♪
目をつぶると、すべての命が手をつなぎ、
ひとつの円になっているような気がしました。
 

⑪空と海と花と木と風と雲とが
グルグルと混ざりました。
ブルーハワイソーダちゃんのアオと
レモンソーダちゃんのキイロが
グルグルと混ざりました。
「メロンソーダちゃん！」
「本当だ！メロンソーダちゃんになるんだ！」
そう叫んだのと同時に、３人はパチリと目を覚ましました。

⑫「あらやだ、あたしたち眠ってたんだ」
パラソルの下で、どのくらい時間がたっていたのでしょう。
カモメとトンビが、残ったサンドイッチをくわえて逃げて行きました。
「アオとキイロが混ざると」
「混ざると」
「ミドリになるわね」
 
 
みんな、つながっている！

⑬太陽が１日の仕事を終えて、そろそろ店じまいのようです。
メロンソーダちゃんはレモンソーダちゃんの右手と、
ブルーハワイソーダちゃんの左手を取り、手をつなぎました。
「これで混ざったわー！アハハハハ！」
「混ざった混ざったー！」アハハハハ！」
「恥ずかしいわよ」
キイロの月が笑ったような気がしました。

⑭「今日は楽しかったね」
窓からあふれる月明りを、レモンソーダちゃんはベッドの中からまだ見ていました。
きれいなキイロは町を照らし、
誰かの帰り道を照らし、
誰かのココロを照らしています。
「お月さま、もう少し頑張って。あたしは眠りますから。また明日ね」

⑮アオとキイロが手をつないで、
ミドリになりました。
今日もグルグル、混ざったり混ざらなかったり。
 
すべてが混ざってつながって、世界はとってもきれいです。

おしまい

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