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演出家・松本潤がエンタメに没入感を生める理由

2022年7月6日に、昨年12月30日に東京ドームで開催された「Johnny's festival」のDVD・Blu-rayが発売された。

「Johnny’s festival」とは、ジャニーズ事務所に所属する全14組・総勢78名が東京ドームに集まり、1日限りで開催されたスペシャルライブのこと。

■Johnny's Festival ~Thank you 2021 Hello 2022~ Digest

本公演の演出を手掛けたのは松本潤。及び、あのDREAMS COME TRUEの中村正人に「世界一」だと言わしめた嵐のコンサートをサポートしてきたスタッフ。

配信のみに留まっていた本作が今回、Blu-ray・DVDとして登場。松本潤本人の出演は一切無いが、「松本潤の演出見たさ」に円盤を購入する嵐ファンも少なくない。

今回は、開催当時、「松潤ありがとう」「松潤演出」などでTwitterトレンドにも入ったほど観客を魅了する「松本潤が創るエンターテイメント」とは一体何がすごいのかを考察していく。

松本潤とジャニーズエンターテイメントの歴史

ジャ二―喜多川氏が創設してから約60年、日本のエンターテイメントの頂点を作り続け、走り続けてきたジャニーズ。ジャニー喜多川が創るエンターテイメントは、「派手」で「見たことない」演出で「奇想天外」なエンターテイメントだった。

松本潤はジャニーさんに深く愛された一人で、そのイズムを存分に受け継いでいる。

彼が考案した観客の上を踊りながら移動できる「ムービングステージ」や国立競技場の一面を使ってさかさまになって宙を歩くMJウォーク」など、強く印象に残る演出を数々生んできた。

■嵐-BRAVE(ムービングステージで踊りながら移動する嵐)

TVの特集などではよくその「派手さ」や「突飛さ」をフォーカスされるが、近年の松本潤の演出には、エモーショナルさを感じる。

つまり、派手さより感情に重きを置いた演出。

2020年末に開催された嵐休止前のラストライブはその最たるものだった。
「どうしたら感謝が伝わるか」
「どうしたらグっとくるか」
そんな問いを常に立てて演出に臨む姿がドキュメンタリーでも放送されていた。

■『ARASHI’s Diary -Voyage-』 第22話 予告編 - Netflix(思いへの発言は本編で詳しく語っています)

間違いなく「派手」で「奇想天外」な演出から、
「感情を揺さぶる」演出に移行してきている

ジャニーズエンターテイメントをエモーショナルにアップデートしていく松本潤

これまでジャニーズエンターテイメントにおいて重視されてきた「派手」「見たことない」「奇想天外」などのキーワード。

これらは主にハード面においてのキーワードだった。目に見えるものや物理的に驚かす演出。例えば水を大量に使ったり、火をたくさん使ったり。

2010年代後半あたりから、松本潤はそこにソフト面に対するアプローチを追加した。「温かい気持ちになってほしい」「楽しんでほしい」など。演出はあくまでその感情を引き出す手段として用いている。

実際に今回発売されたJohnny's festival(以下、ジャ二フェス)においても所謂「エモい」シーンが多くあった。

例えば、Kinkikidsのコーナー。
デビュー25周年のアニバーサリーイヤー。登場前にこれまでの全てのシングルのジャケット写真が順番に映像に映し出される。デビュー曲「硝子の少年」でステージの両端から登場した2人は歌いながら徐々に近づいていく。
ラスサビで2人はステージ中央に立ち、今の映像とデビュー当時・Kinkikids10代だった頃の「硝子の少年」の映像がダブルでモニターに映る、という演出。

Kinkikidsをセットの上から登場させたり、大量のLEDや照明を使ったりと、派手さは全く薄れていないものの、観客は「エモさ」を感じずにはいられない。

伝統的に受け継がれてきたジャニーズらしさに、「感情」を追加した松本潤。ジャニーズエンターテイメントをさらにアップデートさせたといっても過言ではない。

松本潤の演出が没入を生む理由

ジャニーズのエンターテイメントをアップデートさせた松本潤の演出には没入感がある。一体、何が私たちを没入させるのだろうか。

1.「聴覚」-CD音源と違う予期できないリミックス

彼が得意とする演出の一つはCD音源と異なるリミックスをかけ、観客を「これまでと違う!」というハラハラ・ドキドキに連れていくこと。CDで聞いていればいるほど、知っていればいるほどそのドキドキ感は増していく。

例えば今作ではSnowManのGrandeurの間奏において、リミックスがかけられていた。通常そのままラスサビに突入するところでエアー・ホーンが入る。リミックスのかかった間奏が通常より長くとられ、SnowManの得意分野であるアクロバットや9人の揃ったダンスをより強調する時間となっている。

原曲を知らない人にとってはグループの強みが良くわかる演出になり、よく知っているファンにとっては見たことないパフォーマンスになる。

CDでなく、音楽番組でなく、ライブだからできることを徹底的に考えている。

2.「視覚」-継続的に集中しやすい視線の誘導術

一度でもドーム規模の会場に足を運べばわかるが、観客とステージは思っているよりも距離が離れている。スタンド席の場合だいたい200メートル以上。歩いて3分の距離。それなりに便利な町に住んでる人なら最寄りのコンビニくらい。家からコンビニ。そんな距離感で自分と同じサイズの人間に歌って踊られてもほとんど見えない。

いくら好きなアイドルを見に行っているといっても、そんな環境で没入を生むためにはかなりの工夫が必要。

その工夫に一役買っているのがペンライトシステム 「FreFlow(フリフラ)」。嵐のライブでは2014年あたりから導入が開始されて、定番化していた演出。

今回のジャ二フェスでもこのフリフラが導入された。5階席でも楽しめる美しさを表現するだけでなく、これによって目線誘導がかなりわかりやすく行われている。

・ABC-Z「Za ABC~5Stars~」からSexyZone登場シーン(上手から下手に流れる)
・関西セクションスタート時(下手から上手に流れる)

その他にも、今回ステージが3つ+センターステージの計4つに分かれている。そのステージ構成のおかげで1秒もかからず次のグループの歌唱が始まる。見ている観客は右を見たり左を見たり、かと思えば中央を見たりと視線がどんどん動くから飽きない。

視覚的にずっと楽しいのが松本潤のエンターテイメント。

3.各セクションスタッフの「プロフェッショナルな仕事ぶり」

忘れてはいけないのは、演出家・松本潤の理想を現実とするスタッフ。ジャ二フェスにおいても、カメラアングル・照明・特効・映像・フリフラ・スイッチング・セット・コレオグラファーなどそれぞれのセクションの技術が輝いていた。

これはすごいことなのだが、ジャニーズのライブはステージ上にスタッフが一切顔を出さない。つまり最初からあらゆる動線をスタッフ無しで考えておかないといけない。

ジャ二フェスにおいては、中盤で関ジャニ∞のバンド演奏が入った。通常であれば他グループが歌唱中にスタッフがステージ上で準備するものを、気づいたらバンドセットがステージ下から上がってきていたのだ。

理想を体現する技術もまた、没入に絶対に必要な条件である。

Johnny's festivalがジャニーズエンターテイメントに与えた影響

「Johnny's festival」
新型コロナウイルス感染対策によって公演中止となっていたドーム規模の公演。これの再開の第一弾としてジャニーズ全体が集まってライブを行うことが名目だった本公演。

しかし、その名目だけに留まらず、Johnny'sfestival」はジャニーズのエンターテイメントの歴史を語る上で欠かせない作品となったに違いない。ここまでクオリティ高く観客を楽しませることができるという証明になった。そして、その歴史を創ったのは松本潤であることも間違いない。

ジャニーズエンターテイメントは、ジャニー喜多川亡き今でも、そのイズムを受け継ぎ、進化し続ける。

■Johnny'sfestival

◼︎この記事の続き

「なぜこのセトリとこのコラボだったの?| もう一度楽しむためのジャニフェスレビューvol.1」

もっとジャニフェスの演出の凄さに気付きたいのに、他のグループのことをあまり知らなくてもどかしい!という方はぜひご覧ください。


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海瑠‐uru‐ | フリーランスライター・インタビュアー
日本のドラマ・映画を中心としたエンタメ記事を執筆。
ヒトやモノのこだわりを見つけ出す・聞き出す記事を書いています。


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