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時給870円

時給870円のパートから帰ってきて「寒い寒い」と言いながら、灯油ストーブのスイッチを入れ、体を冷やす砂糖が大量に入ったコーヒーを飲みながら大福を食べる68歳の母。
おやつの締めはマーガリンをたっぷり塗ったヤマザキの食パン。
もちろん皿は、山崎春のパン祭りでもらったものだ。
疲れた、ああ、疲れた。そう言いながら体を痛めつける食材を摂る矛盾に関して、私が指摘しても「わからない」から興味を持たない。
不健康な行為をやめないのは、「知らない」「わからない」が原因かと思っていたけれど、最近は私も考えが変わった。
おそらく、軽度の自殺願望なのだろう。
潜在意識が人の行動を起こすので当然本人も気づいていない。
料理していれば「鍋から火がはみ出てる」(ガス代が勿体無い)と文句を残して、タバコを吸いに行く夫と運うん十年一緒に生きているのだ。
自由がない人生。日々の自由と言えば、ヤマザキのパンに大量にマーガリンを塗って貪り食うことくらいなのだ。
前向きに、向上心を持って人生をやることに魅力を感じないなら、「その時、気分良く美味しく過ごす」やり方になる。
その人が歩く道の目の前に崖があったから、教えてあげる、それも年寄りにとってはきっと迷惑なのだ。動脈硬化で死ぬよって、知らせてあげるのはもうやめよう。
ああ、無常。
誰もが長く生きたいとは限らないことを私は忘れていた。

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