見出し画像

懺悔の助六寿司

   輝く白身魚のフライ、輝くハンバーグ。スーパーの惣菜売り場で、山と積まれたお弁当。まとったラップフィルムがライトを反射し、キラキラと輝いている。なのに何を食べたいのか分からない。私はとても疲れていて、目から入る情報を脳みそに届けられないのだ。

 今週末も湖でお昼ごはんを食べるために、スーパーにやって来た。しかし、食べたいものが分からない。こんな時は助六寿司に限る。私は助六寿司と飲み物とおやつを買い、スーパーを後にした。

  助六寿司は何だか、ちゃんとしている感じがする。しかしよくよく見てみれば助六寿司は、米と僅かなタンパク質しか無く、栄養バランス面では少しもちゃんとしていない。だけど同じ米でもおにぎり2個食べるよりも、助六寿司の方が食事っぽい感じがして選んだのだった。

 太巻きの具材で断トツに好きなのは、真っ茶色のかんぴょう。かんぴょうが食べたくて太巻きを買うと言っても良いくらい。そして私にとって、太巻きの中の問題児がキュウリ。かんぴょうの他にはしいたけ、桜でんぶ、玉子焼き、いずれも甘い味わいの太巻きの具材。きゅうりのアイツだけが、急に水分をぶっ込んでくる。口の中で甘い具材を存分に味わいたいのに、アイツはシャキシャキ言ってくる。どうしてくれようか。

  しかしきっと通な人はこう言うのだ。「このきゅうりの爽やかさがあってこその、太巻きなんだよ」と。甘い具材をだけを味わいたいと思う私は、通の感覚が分からないお子様な舌なのだろう。だからと言って、太巻きから先にきゅうりを抜き出す気にもなれない。こんな私だけど、キュウリも一緒に美味しく太巻きを食べたい。どうしようかと考え、キュウリが先に口に入る向きではなく、キュウリが後から味わえる向きで太巻きを頬張ることにした。
  おお!これなら、キュウリの主張が控えめで美味いではないか!ただの向きの問題だったとは!問題児扱いしてすまなかった、キュウリ。サラダや漬物になったお前は大好きなんだよ。ちょっと囲むヤツらが変わったって、お前はお前だよな…。すまない。
  疲れているせいなのか、キュウリへの懺悔が止まらない。懺悔はこの辺で止めようと思うより先に、太巻きが私のお腹の中へ消えていった。

  続いていなり寿司1個を1口で食べる。誰だよ、油揚げの中に米を詰めようと言ったのは。ものすごく美味いじゃないか。これまた甘く煮た油揚げが良いんだよなぁ。
  以前見たテレビで、千鳥の大吾が料理を作っていて「甘けりゃ美味い」と言い砂糖をバンバン入れていたが、あれは真理だと思う。以来、甘い味付けのおかずを食べると、私の頭の中に大吾が登場するようになった。今週私の中に登場した大吾も、何度目かの大吾だ。

 そして、おやつはヤマザキのオールドファッションドーナツ。

  日本で生活していて、ヤマザキのパンを食べずに生きて行くのは不可能だろう。「ヤマザキ」とメーカー名がパッケージにあるもの、コンビニやスーパーのプライベートブランドで、ヤマザキが作っているものなど、スーパー、コンビニでパンを手に取れば間違いなくヤマザキに当たる。そんな巨大国民的製パンメーカーヤマザキ。
 でも私はパスコの方が好き。なのにヤマザキのドーナツを買っている。隣に好きなパスコのパンが売っているというのに、ヤマザキのドーナツが魅力的に見えてしまった。そして食べて思うのだ。やっぱりパスコの方が好きと。なのになぜ、ヤマザキを手に取ってしまうのか!どうして!

   疲れて妙な方向に話を膨らませてしまった。こう言う感じのジレンマは、きっとソクラテスか、シェークスピアかがとうの昔に書いてる気がするので、ヤマザキとパスコへのジレンマも彼らにお任せしておこう。

 はぁ。疲れた私はまだまだ甘やかされたい。そんな気持ちからだろう。文字通り甘いものを更に買っていた。

 母の日を意識したカーネーションが描かれたパッケージ。母へ感謝する気持ちを、自分に向けて便乗する。お疲れ、自分。

  この「DEAR」もそうだが、森永ビスケットの関連商品として、ガレットサンドとがあるのを最近知った。ガレットサンドのガレットは、しっとりしていてなぜか私は、少しひんやりさを感じる。疲れて興奮もしている体に唇から伝わる心地よい冷たさ。ホロロっと口の中にガレットが零れていく。

DEAR 自分
今週は色々あったな。何であんな事しちゃったんだよ。相手が良い人だから良かったものの。そう言うとこだぞ。本当にダメだぞ。

「DEAR」に更に便乗して、自分への手紙もしたためてしまった。
 今週、私が疲れているのは、自分が原因でしか無かった。そんな事もあるさとは言い難い、自分の悪い癖。何で繰り返しちゃうんだろうな。

 それでも明日はやってくる。明日以降の自分に向けて「DEAR、親愛なる」と言えるように、私はもりもり食べるのだ。(今週も食べ過ぎた)。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?