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オタクバイヤーの熱量で女性顧客をファンにする!3COINS急成長を牽引する従業員の強みを活かす経営とは。

300円を中心したおしゃれな商品が並ぶ雑貨ショップ「3COINS」が、今すごい勢いで伸びています。

 いつ行っても、店内は女性客でいっぱい。生活雑貨、インテリア雑貨、服飾雑貨、モバイルアイテム、キッズアイテムなど300円で買えるデザイン性の高い商品が品揃えされていて、幅広い年代の女性客が楽しそうに商品を手に取っています。


▪1年で110億円売上を伸ばしたお化けブランド


株式会社パルグループホールディングスが運営する3COINSは、全国に268店(2023年2月現在)展開しており、23年2月期の売上は489億8千万円。15年2月期から3倍に成長し、前年度から110億円も売上を伸ばしている急成長ブランドです。
 
パルグループホールディングスの23年2月期の連結売上高は1644億円、純利益も99億円といずれも過去最高となるなど3coinsはそのけん引役ともなっています。株価も8月には上場来高値を付け、5年間で3倍以上になっています。

▪ブランドメッセージは「あなたの“ちょっと幸せ”をお手伝いする」

3COINSは1994年にスタート。当初は300円均一ショップでしたが、2010年代から300円超の商品も扱い、現在は約2500種類を取りそろえています。
 
「あなたの“ちょっと幸せ”をお手伝いする」をブランドメッセージに掲げ、「ふだんの生活の中であったらいいもの」を基本価値として提供しています。

新商品発売時には即日完売する商品が絶えないなど、3COINS商品が人気を博している理由はいったいどこにあるのでしょうか。

 ▪あえて世代ターゲットを絞り込みすぎない。

いまや、インターネットやSNSの普及により、誰もが情報を取りに行けばたくさん取れる状態になり、世代による情報格差はなくなってきています。
 
また、ライフスタイルが多様化・細分化する事で、一人の消費者の中にも様々な嗜好が芽生えてきています。
 
これまでのマーケティングでは、対象とする顧客像を細かく設定したペルソナを設けることが定石といわれてきました。
 
ただ、3COINSでは30代女性という大まかなターゲット像を持ちながらも、あえて細かく絞り込むことはやめ、3COINSが提案する商品に共感する顧客を惹きつけていく「顧客吸引マーケティング」を重視しています。
 
女性消費者が興味を持ちそうな商品や好きな商品を次々に開発。女性顧客の好奇心を刺激し、新しい発見のある売り場づくりを通して3COINSが大好きなファンを増やしていく。それが3COINSの戦略なのです。
 

▪オタクバイヤーが大ヒット商品を次々に開発。

3COINSの商品に対しては、「痒い所に手が届く商品」「絶対、あの会社にはオタクがいるのでは?」とった声が多く寄せられているそうです。
 
それもそのはず、3COINSのモノづくりでは、20人のバイヤーたちが、それぞれの「好き」や「個性」を活かした商品開発に注力していることこそが、大ヒット商品を生み出す原動力になっているのです。
 
3COINSには、多種多様なカテゴリーがありますが、それぞれのカテゴリーに対して、年間でどういうものを売るか、どんな仕掛けをしていくかは、基本的にその担当者が自分で決めて自分で実行していくことがベースになっています。
 
商品企画に関しても、ブランドメッセージから外れておらず、バイヤー自身の熱量があればOK!というゆるゆるのマネジメント体制ですが、モノづくりをするバイヤーの「好き」という熱量が高ければ高いほど、やりたいことを掘り下げることができ、その結果、お客様に驚きや感動を与えて共感を得られるという好循環を生み出しているのです。
 
消費者がたくさんの情報を持つようになった今、薄っぺらいことをやるとすぐに見破られてしまいます。○○が大好きなオタクバイヤーがだからこそ、○○好きな消費者の気持ちがよくわかり、結果として「えっ!この商品が300円で買えるの?」という驚きを生み出し、大ヒット商品の開発につながっているのです。
 

▪他企業やブランドとのコラボで新しい価値を生み出す。

売り切れが続出するほど人気が高いコラボ商品を次々に生み出している点も3COINSの強みの一つです。
 
コラボ商品は、それぞれのバイヤーの個性を発揮しやすく、相手先企業やブランド担当者の熱量も掛け合わされて、より情報力のあるコンテンツに仕上がります。
 
その結果、SNSなどでも拡散されて、顧客が顧客を呼び込み、大ヒット企画につながっていきます。
 
例えば、2022年10月に発売されたサウナポータルサイト「サウナイキタイ」とのコラボは、サウナオタクのバイヤーが企画。サウナアイテムの定番であるサウナハットやサウナマット、タオル、巾着など便利かつデザインにもこだわった商品を販売。店頭では、各店舗から近いサウナ施設の紹介POPも掲示するなど、企画の細部まで担当者のこだわりが見えるプロモーションを展開することでSNSでの話題化をはかりました。

その結果、サウナ好きの仲間を見つけたいと思っていた“サウナー”の間でコラボグッズは自然と認知が広がっていきました。このように、サウナという共通軸を突き詰めることで、結果的に多様な年代にアプローチでき、新しい“マス”の顧客を生み出すことに成功しています。 

▪SNSでの情報発信も、担当者の個性に任せて成功。

さらに3COINSは商品企画だけでなく、情報発信も担当者の思いや興味関心を尊重しています。
 
各店舗にはスタッフインフルエンサーは計約80人在籍しており、中には約10万フォロワーのスタッフもいるそうです。 

そしてインフルエンサーにも、バイヤーと同様、自分の思いを軸に、できるだけ自由な活動をしてもらえるように意識した運営に注力しています。
 
SNSを運営するのは希望者のみに限定。Instagramでの発信を中心に、動画制作が得意な人は動画メディアも担当しており、インフルエンサーに会いに店に来てくれる顧客も多くいるというのも、3COINSの大きな強みといえます。
3COINSのインフルエンサーには、アルバイト、社員、学生、子育てしている人、店長として頑張りながら情報発信している人など多彩な顔触れで、発信したい内容のある人が自主的にインフルエンサーとしての活動をしているのも特徴です。

また、趣味もアイドル、料理など多岐にわたっており、3COINSの商品を使ってアレンジレシピを作るなど、発信する内容は本人に任せており、バリエーションは豊富なことも、幅広い顧客とのつながりを育んでいる背景にあります。
 
さらに、インスタライブやお客さまとのコミュニケーションも大切にしています。バイヤーは、アカウントに来たコメントは常にチェックして情報を商品づくりへと生かしており、共創好きな女性のこころをしっかりつかんでいるのです。

▪従業員の強みや個性を伸ばし、自律的行動を引き出していくことが重要。

以上、今回は3COINSが急成長している要因についてみてきましたが、従業員の熱量の高さが同社の急成長を牽引していることがよく理解いただけたのではないでしょうか。
 
オタクを本気でやっているバイヤーが、世の中にまだ無くて不便を感じているものや、あっても高すぎるものなどをオタクである自分たちの目線で開発する。その結果、女性消費者から大きな共感を得て、大ヒットを生み出している3COINS。
 
従業員の強みや個性を伸ばし、自律的行動を引き出していく経営スタイルが、企業の成長を牽引する時代です。
 
 


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