巨木の森 清涼の大気
時に、濃厚な空気が吸いたくなる。
車の排ガスや、アスファルトの熱気を巻き込んだ空気では酸欠になって肺や脳がしぼみそうだ。
海の塩辛い空気もいいが植物が生み出した出来立ての酸素いっぱいの空気。
森へ行こう。
お気に入りの場所がある。
やはりここはいい。
人里離れているし、なにより巨木が多い。
一応山道があるので、藪をかき分けなくていい。
言ってみれば里山だが、厳しい登山に興味はない。
ここは静か。風と鳥の声。あとはザワザワと木の葉の揺れる音。
木漏れ日が目に優しい。日常に疲れた目が生き返る。
何十年、何百年も風雪に耐えた巨木が,生い茂らせた沢山の木の葉から酸素を出している。周りの草木も一緒になって空気を浄化している。
聖地。
濃厚な空気を胸いっぱいに吸い込むとちょっと笑顔になるのだ。
土の匂い。草木の匂い。
足元にはチラチラと木漏れ日の揺らめき。
気温も涼しく、歩く足が軽い。
石ころだらけの道だけど、歩くのが楽しい。
これだけの年月を経た巨木たちだ。目や耳はなくてもきっと私に気づいている。
穏やかな気を感じるから、嫌わてはいないはず。
「ありがとうございます。」お礼の気持ちで、深呼吸。
さっきからずっと、ある小鳥が熱心に囀っている。
聞きほれるようないい鳴き声だが、姿は見えない。
巨木の精かも知れないな。
うっすらと汗をかきながら、今日は久しぶりに熟睡できそうと思った。
巨木と風と太陽のハーモニー。
絵 マシュー・カサイ「巨木の森」水彩・鉛筆
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