夕陽の讃歌 天上の交響曲
暑い一日だった。
緊張とストレスの連続から逃れ、酸素不足の魚のように海辺に来た。
靴を脱いで素足で海に入り、海水を感じる。
ふうっと無意識に出るため息。
水はちょっと冷たいくらいの温度。
体の火照りを、ムシャクシャを、優しく洗い流してくれる。
波の音。
ゆっくりと、大きく小さく、耳に心地よく響く。
足裏に砂の感触。
歩けば崩れ、指の間から流れ出ていく。
海風に髪をなびかせて空を見上げると、夕焼けが迫っていた。
遮るもののない広大な空。
風に乗る大きな雲。
水平線の彼方に、雲のベールを纏った夕陽が沈もうとしている。
耳には聞こえないが音楽が流れている。
天上の交響曲。
壮大な景色に響き渡る極上の調べ。
あれだけ青く晴れ渡っていた空が、赤、オレンジ、黄色の閃光に染まる。
夕焼雲は昔からの名画のように美しく日没を盛り上げる。
きっと、なん千年も前から人を魅了してきた景色。
この場所から夕陽を見た人は数えきれないほどだろう。
原始人も,武士も、旅のお坊さんもいたかもしれない。
漁師さんや、子供達もいっぱいいたはずだ。
きっとみんな、感動して元気をもらったんだろうな。
なぜか、美しい夕焼けを見ると泣きたいような懐かしい感覚になる。
生まれる前にずっと見ていた景色なのかもしれない。
ああ、今日もこれでいい一日だ。
絵 マシュー・カサイ「夕陽の讃歌」 水彩・鉛筆
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