がむしゃらに勉強してきた学びで、部下も顧客も幸せにするリーダー
誰にでも、「これからどうしよう?」と迷うことがあるのではないでしょうか。そんなとき、「他の人はどうしているのかな?」と思いませんか?
【L100】自分たちラボでは、「身近にいる普通の働く女性たち」のキャリアや人生についてのインタビューからヒントを探してみることにしました。
今回のお話は、「つらい時を仕事が助けてくれた」と語ってくださったしおりさん(仮名)のお話です。
#ライフデザイン #インタビュー #働く女性 #メンタル #社外人脈 #女性管理職 #均等法
今一番楽しいのは仕事だと語られるしおりさん。予期せぬ出来事が重なってつらかったときも、仕事が助けてくれたとのこと。社内だけではなく、学びの場であった産業カウンセラーや顧客ロイヤルティの協会でも、精力的な貢献活動を継続中。一度ゼロになったところから、現在の力強さを持つに至った経緯とは?
―――今回、ライフヒストリーや人生曲線を書いてみていかがでしたか?
第一印象としては、40代、50代に働きすぎたな、と思います。その時はがむしゃらで、楽しかった。よく働いたなと自分をほめてあげたい気分です。輝いていたと思えるのは、いつもその瞬間だけど、振り返ると50代前半からコロナ前までの5年間かなあ。60歳を過ぎたら少しゆっくりしようかと思っています。
均等法1年生として自分の好きなアパレル業界に入社
20代:その後のキャリアの礎となる業務に奮闘
―――アパレル業界に就職されたのは?
私は(男女雇用機会)均等法1年生なんです。単純にアパレル業界に入りたい、自分がやっていて楽しい仕事をしたいと思って、ご縁をいただいたのが今の会社です。OLを2~3年やって結婚しようと思っていました。そういう時代でしたから。
当時珍しい女性社長の会社でしたが、入ってみたら社内は男女の区別なく、女性の管理職やものづくりの方がいっぱいいらっしゃいました。実力主義の会社で、恵まれていたと思います。配属はいきなり人事部でした。人事部ではきめ細かい仕事を求められ、厳しいこともいっぱいありました。でもそれが、その後の私のキャリアに非常に役立ちました。販売職の人事に関するシステムを作ったり、山ほど起きる労務問題に対応したりする毎日でした。楽しかったです。
数々の予期せぬ出来事。助けてくれたのは仕事だった
30代後半:「失う」ことから本来の自分を見つける機会へ
―――30代後半で人生曲線が大きく下がったところについて教えていただけますか?
大変な出来事がいくつか重なったんです。
その内の一つは父の会社の倒産です。プライベートの問題も抱えていたので、より一層イメージしていた生活や未来が壊れていきました。実家を売ることになり、私はそれを機にマンションを買い独り立ちしました。
この時期は、ほんとにきつかったです。眠れなかったり、食欲がなかったり、ただ涙が出てくることもあるほどでした。
―――大変な時期を過ごされたのですね。そんな中で、助けになったことは?
仕事が助けてくれました。仕事をすることで紛らわせられたし、新しいものが見えました。そこから自分もカウンセリングの勉強をしました。絶望は死に至る病。そのことを分かった上で今の生活をしています。
顧客ロイヤルティ協会に入ったのはその頃です。そこから仕事の面白さに目が行くようになりました。産業カウンセラーの資格をとってからは、産業カウンセラー協会の中で実技指導をしていました。それがなによりの私のメンタルヘルスになっていました。周りの方に感謝しかないですね。
あのしんどさはもう二度と来ないと思います。お金に不自由したことがなかったのに父親が倒産して、自分の収入だけで生きることになり、心の拠り所もなくなりました。今まで当然にあると感じていたものがなくなり、ゼロになって、今ではそこからここまで築き上げたので、もう怖いものはないなと思っています。
がむしゃらに勉強することで出会えた「顧客ロイヤルティ」と「産業カウンセリング」
30代後半:女性は役職者にできないと言われた混沌とした時代の中での出会い
―――学びとお仕事との関係は?
会社では、コンスタントに出世していたのですが、ある役員から、君は優秀だけれども、女の子は役職者にできないと言われたんです。それを仕方ないと受け止めている時代でした。会社は好きだったので、40歳になったら転職を考えよう思って、30代後半の3年間は、がむしゃらに勉強しました。
顧客ロイヤルティは、お客様「を」満足させるのではなく、お客様「が」満足する、という視点で社内を見直していこうという理論です。それを端的に表したのが「を」ではなく「が」。この学びを自分の仕事に活かしながら研究を続けて、今はそれをお伝えする立場で仕事をしています。
また、産業カウンセラーの勉強をして出会ったのが、「パーソンセンタード・アプローチ」という、どんな時もクライアントが中心だという考え方で、カウンセリングの学びと顧客ロイヤルティの学びが一つになって、それを伝えるのが私の一つの仕事になっています。
熱意が伝わり女性初の役職者に
40~50代:学びを実務に活かす
―――その後、お仕事のピークに向かっていくのですね?
産業カウンセラーと顧客ロイヤルティを学んでいるうちに人脈ができ、顧客ロイヤルティの考え方を社内に伝えていたら社長が変わり、新社長が、私のその熱意にこたえてくださってキャリアアップすることになって、41歳で社内女性初の役職者になりました。
ただ、役職になってからの方が社内の風当たりが強かったですね。それが、50歳手前くらいから風向きが変わって。スムーズに仕事が動くようになり、やりたいことができるようになりました。
―――何が変わったのでしょう?
私が言っていることが一気通貫していたからだと思います。すべて「を」ではなく「が」だと。お客様の視点で商品やサービスを見直すべきだということを言い続けて、やっとみんなわかってくれた。もう一つは、新卒採用を担当していて、覚えたてのノウハウを会社説明会で話していたことで、そういう思いの子が入ってくるようになって、それも影響しているのではないかと思います。
―――社外の人脈のお話がありましたが、ご縁をつくるコツはあるのですか?
やめないことと、ちゃんと行くこと。私は、どんな会でも初めは端っこに入るのに、気が付くと真ん中にいて中心人物になっている。それは休まずに行くからです。あと、自己効力感が高いので、行った先で「私なんか」とはあまり感じないタイプかもしれません。
―――女性の多い職場ですが、そのための工夫はあるのですか?
正直なところ、販売員さんはもめ事が多いです。人のことを妬んだりしないで自分は自分とわかっていれば意地悪をしない。要は自己一致。あとは会社が応援するシステム。相談先を決めたり、表彰したり、研修の回数を増やしたり、いろいろモチベーションアップを図ってきました。心理学を勉強したことでクリアできました。
役職を降りたあとのために、自分の3本柱を考えている
今後について
―――これから先についてはどう考えていますか?
今、一番難しいところです。今58なのであと2年で役職はおります。それへの恐怖がものすごくあるんです。5年前に会社が早期退職制度を導入して、その時だったら予期せぬキャリアチェンジということで戸惑っていたかもしれませんが、今回は予期できるので、いろいろなことを考えています。
私の中の3本柱は、①顧客ロイヤルティ、②カウンセリング、ウェルビーイング、働く人の幸せの研究、③現業の継続。これをどうやって60歳以降自分の生活に生かしていこうかというのが今の課題です。現業は、他の二つに比べるとやり切った感があります。顧客ロイヤルティと働く人の喜びについては、研究していきたいし、発表していきたいと思っています。何が世の中のためになるのかと考えて、そのことを仕事でしたいと思います。
私は、入社の時から、均等法世代の旗頭で人事部にいたので、均等法で入った総合職のしおりさんとして雑誌に出たり、社内報に出たり。そんな役割なので、いろいろな女性活用の集まりに引っ張り出されるんです。そういう場では、「みんなそんなに仕事したくないんじゃないの?もっと他に幸せはあるんじゃないの?」と思ってしまいます。私の会社の15000人の販売員たちは、給料はそれほど高くないのに、各売り場で幸せそうなんです。お客様に会って、ありがとうと言われ、誰かのためになっている。その幸せを応援しながらシステム化するのが私の仕事ですが、幸せは人に何かをしてあげる幸せ、してもらう幸せの中にあるというのを証明したいと思っています。それは仕事の場でも十分に経験できるんです。
やらない後悔よりは、やって後悔
女性たちへのメッセージ
―――今、迷っている女性たちに何かアドバイスやメッセージがありますか?
悩んでいるということは、何%かはやろうと決めていると思うんです。やりたくなかったら悩まないので。私自身は、やらないという決断をしたことがない。やらない後悔よりはやって後悔だと思います。それは人生訓。やってみたら違う世界は絶対見えてくる。なにかしら得るものがあるのでやった方がいいと思います。とにかくやってみよう。
―――今日、インタビューに参加してみていかがでしたか?
自分のことを話す機会が少ないので良い機会となりました。こうして曲線を描いてみると、子供の頃は親に守られ、大人になってからは会社に守られ。自分で頑張ってきたところもあるけれども、その時々で出会った人たちに恵まれて今までやってきたなと実感しました。
(*文中の写真はイメージです)
インタビュアーコメント
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