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『オックスフォード哲学者奇行』の感想

めっちゃ面白かったです。
ここに登場したすべての哲学者の先生方がすごく魅力的で、相関図書きながら読みました。

相関図は、破綻しました。

『オックスフォード哲学者紀行』を読もうと思ったのは、YouTubeで紹介されていたのを見たからです。

難しい内容と思いきや、軽快な文章でくすっと笑えるような部分もあり、何より紹介されているすべての哲学者の先生がとても魅力的でした。

また、この間から『BASIC公共政策学2 公共政策規範』を読んでいましたが、この公共政策規範では、特に倫理学や哲学といった分野の知識や考え方が必要な範囲で、ちょうどいいタイミングだったのもあり、より面白く感じたのだと思います。

オックスフォード大学のことを何にも知らないものですから、書いてあることすべてが新鮮でした。

特に、チュートリアルと呼ばれる個別指導型の教育システムについて興味を持ちました。

チュートリアルで指導する先生をチューターというそうです。

チュートリアルは、先生と生徒が1対1で指導を受ける形です。
日本では講義形式で、大きな教室に先生が1人に対して生徒100人とかそういうシステムですから、私チュートリアルは苦手かもしれません。

なにより、先生との相性がすごく重要になってきます。

例えば、フレンケル先生は、オックスフォード大学でも有名な4人の女性哲学者であるアイリス・マードックさんやマリー・ミジリーさんのチューターで、彼女たちに優れた教育を行いました。

一方で、女子学生に対してセクハラしていたそうです。

マードックさんやミジリーさんは、そこまでセクハラに対して大変なこととは思っていませんでしたが、中には深いトラウマを抱える女子学生もいたそうです。

現代では、とんでもなく炎上したことでしょう。

逆に、エアさんはライル先生のチュートリアルを受けたことから哲学の道に進むことになります。

エア先生もチューターになり、バーナード・ウィリアムズさんを教えることになります。

ところが、ウィリアムズさんは、エア先生の教えとは異なる考えを持っていました。そのため、ウィリアムズさんにとってエア先生にはそこまで影響は受けませんでした。

誰が誰のチューターだったのか、整理しながら読むと結構面白く、また誰と誰が同世代かということも踏まえつつ読むと時代の流れも分かりやすいです。

この点については、要所要所で著書の児玉聡先生が書いてくれているので安心です。

さらに、誰が誰を好きだったか、嫌いだったかを書くと相関図が訳の分からないことになります。

特にエリザベス・アンスコムさんは、嫌いな人が多かったので、矢印が面白いことになっていました。


アンスコムさんは、ウィトゲンシュタイン先生の弟子でした。

ウィトゲンシュタイン先生は、オックスフォードよりもケンブリッジで研究していましたが、オックスフォードに与える影響はとても大きかったと言います。

ウィトゲンシュタイン先生に影響を受けたアンスコムさんは、オックスフォードで活躍していたエア先生、オースティン先生を嫌っていました。

アンスコム先生がチュートリアルで指導したマリー・ウォーノックさんは、オースティン先生を超尊敬していたジェフェリー・ウォーノックさんと結婚した際、アンスコム先生から非難されたそうです。

とんでもない方だなと思いましたが、それだけアンスコム先生の思想がしっかりしているということなんだと思いました。

哲学者は、1日中部屋に引きこもって思考を巡らしているみたいな印象を持っていましたが、超人間味に溢れていて苛烈です。しかも、どろどろしてる。

私が特に好きだと思った哲学者の先生は、デレク・パーフィットさんです。
パーフィットさんは趣味の写真以外は、哲学研究に没頭していたと言います。

1日中、著作を書き、ほかの研究者から送られてくる原稿への対応をしていました。

パーフィットさんが敬愛するバーナード・ウィリアムズさんからは社交性がないことと評価されていましたが、ほかの研究者とのやり取りをすることで著作も完成させたのですから、社交性はあると私は、思いました。

パーフィットさんが入院していた際、大学院生などお見舞いに来られる方が多くいたとされるのも、彼の社交性というか人間性が多くの方に良い影響を与えた結果なのだと思います。

私にはないものなので、憧れます。
彼の著書『理由と人格』を読んでみたいと思うくらいに興味を持ちました。


『オックスフォード哲学者奇行』では、イギリスに滞在するために必要なことを書いてくださっているので、留学予定の方にとっても役に立つと思います。

行く前から帰国するときまで、実に大変なことが分かります。でも、ここさえ押さえておけば快適にイギリスを堪能できるわけです。

また、児玉聡先生は、

個々の哲学者に関心を持った人は、ぜひ自らオックスフォード哲学について調べてみてほしい。また、今回取り上げられなかった哲学者も多くいるので、それも合わせて調べてもらえたらと思う。

『オックスフォード哲学者奇行』323ページ

・オックスフォード哲学について調べること
・紹介されなかった哲学者について調べること

と課題的なことも残してくれています。
独学での勉強は、真っ暗な道をひたすら歩くみたいなところがあります。

課題をもらえるということは、手探り状態なところに、ちょっと懐中電灯を持たせてくれたような感じで、とても嬉しいのです。

『オックスフォード哲学者奇行』に紹介されていた哲学者の先生1人1人の伝記が読みたいし、各先生が書かれた著作も読んでみたいと思います。ちゃんと理解できるか分からないですが。

今、意外とどろどろしていた人間関係だったハーバード・ハート先生の伝記『法哲学者H・L・Aハートの生涯 上』を読んでいます。

また、感想を書けたらと思います。



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