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痛みの価値は何か?目的論でみる痛み

不快でつらいだけと思われている痛みには目的がある。

不快だからこそ、つらいからこそ、痛みは大きな価値を持つのだ!

ヘンな事を言っているように聞こえるかもしれませんね。


国際疼痛学会の痛みの定義にもあるように、痛みという現象は個人的な感覚体験です。

主観の感覚体験ですから当人による意味づけができます。

同じ痛い体験なのであれば、自分にとって役に立つような解釈をしてみたい。


そのような視点から痛みの目的を考えました。


なぜ原因ではなく目的なのか?

目的を考えることで痛みの存在価値が浮かび上がってくるからです。

また、病名や痛みの質、部位、出現パターンなどの分類(ラベル)にとらわれずに痛みを理解できそうです。

『手段として痛みが使われた場合その目的になり得るものは何か?』と考え、以下の可能性を見つけました。


<不安や恐れのもとを見つけることが出来る>

痛みの心理的背景を掘り下げていくとそこに不安や恐れの感情が見つかることは珍しくありません。
陰性感情を生み出すもとになっているのは否定的な価値観です。     
痛みがあることで気づきやすくなれます。
不安や恐れ、怒りなどの感情は気づきさえすれば自分で癒やすことが可能になります。
もちろん否定的な価値観は変えることが出来ますし、そうすることで陰性感情の発生はなくなります。  


<自分を大切にすることができる>

体の使い方、飲食のとり方、言葉の使い方などにあらわれるように、無意識のうちに自分自身を雑に扱っている時があるものです。
それらに気づいて自分を大切にする機会にできます。
たとえば膝に痛みがあることで歩き方に気をつけることがそうですね。


<誰かとつながりができる>

どこが痛いという話からコミュニケーションが始まることは病院の待合室などでよくある光景ではないでしょうか。
患者の会などもあるように痛みが人と人をつなぐ理由になることがあります。


<頑張る目標ができる>

痛みに対してどのような態度をとるのか?というのは人によって違いますが、痛みの克服が目標となって日々を過ごす方もいるでしょう。
日々の中に目標があることで充実感が得られるのは多くの方にとって共通することだと思います。
表面意識では「そんなこと望んでいない!」だと思いますが、腰痛の父が理学療法の先生と対話を重ねて体操などを工夫し「頑張ってますね」と言われて張り合いを感じている様子を見ると、新たな人間関係ができたこと、コミュニケーションや運動につながったこと、日々の目標ができたこと、他者に認めてもらう機会ができたこと、張り合いができたこと、これらはすべて「痛み」という種から生まれたものなんだなあと何やらしみじみと感じるものがあります。



<今ここに意識が向く>

今ここに生きる。
マインドフルネスは科学的にもその効果が実証され世界中で取り組まれています。
痛みを感じる瞬間は”今”であり”ここ”であるわけです。
たとえ明日の予定を考えている最中であっても強烈な痛みを感じると意識は”今”の痛みに向かいます。
痛みは今ここに意識を向けさせる力を持っているのです。


このようにみると痛みは決して否定的、悲観的なことばかりでもないのではないでしょうか。
むしろ「痛みがあることで得られるメリット」として前向きに捉えることができるのです。


何にしても同様ですが、目的を果たすとその手段は必要がなくなります。
空腹感はお腹が満たされれば消えるように。
オモチャを欲しがって泣く子供がオモチャを与えられて泣き止むように。

痛みという現象はどうでしょうか。                  今回述べた目的のどれもが手段は「痛み」でなくてもいいのですが、不快でつらい「痛み」だからこそ強く注意を引き付けられるという部分は注目したいところです。                           ここに「痛み」のメッセージ性を感じるのです。

目的が達成されないと痛みは変化をするかもしれません。
私たちは誰かに何かを伝えたいとき、伝えたい誰かが聞こえないようだとより大きな声で話しかけます。
伝えた内容が理解できていないような時は表現を変えるなどの工夫をします。
このような意味において痛みも強さや表現を変えることは十分にあり得ると思うのです。

いずれにしても痛みは自分を知り、こころや体のバランスをとる機会にできるようです。
そこまで含めてホメオスターシスなのかもしれません。

悪いイメージしかない痛みと向き合うことはとても勇気がいることです。

それでも「痛みは怖い」「痛みはつらいものだ」という思いをゆるめることができた時、私たちは自身の「痛み」からいろいろ学べることを知ります。

痛みにはとても価値があるのです。


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