シュフ

230828
ずっと家で、家事をして、夫の帰りを待つのが普通だと思っていた。
地元ではハタチを過ぎれば結婚の話がどこからともなく持ち上がり、正月になると親戚からいつ結婚するのかを聞かれる、そんな環境。
親同士が懇意だったこともあって嫁いだ先は、幸い金銭的に不自由することはなかったけど、夫に家事や育児のことを相談することはほとんどなかった。
最初は相談していたかもしれないけれど、相談しても「わからん」か「任せるよ」しか返ってこないので、こちらが諦めてしまった。
夫の態度について友人に相談してみたこともあったけど、友人も「どこもそんなもんよ。好きなようにやったら良いのよ」と返すばかりで、あぁ、そういうものなのかと、だんだん口にしなくなった。

子供たちは成人して定職にも就き、母としての役割は全うしたかもしれないと、ふと肩の荷が降りた時、何気なく見ていたワイドショーで派手な題字が踊っていた。

「世界的に男性の家事参加率が低いことが問題に」
「社会進出し活躍する女性が増加」
「積極的に家事に参加する男性、"イクメン"が急増!」

脳が揺れた。
ニュースの意図としては家事を押し付けられている女性をサポートすべき、社会的に活躍できるはずの女性がもっとチャンスを得られるようにすべき、という風に、女性の味方をしようとしていることはわかる。
でも、私にとってその報道は、私の味方ではなく、私の今までやってきたことを間違いだと断罪する、暴力にしか見えなかった。

夫が家事をしないことは当たり前ではないの?
夫は外で稼いでくる、妻は家を守る。家事は、他にやる人がいないんだから私がやらなくてはいけないもの。母も友人もそう言っていたけど、あれは全部嘘だったの?
家事に積極的な男性なんて、この世にいるの?夫は標準的な男性ではないの?
もし私のしてきたことが世界的に見ておかしいと言うのなら、私は一体何のために身を粉にしてきたの?
もし夫が家事に協力的だったなら、私には社会に出て活躍するチャンスがあったの?
どうして今頃になって、そんなことを私に突きつけてくるの?

その後はずっと横になっていた。
夕方が近づき、やっとの思いで洗面所へ行って顔を洗う。
鏡に映る顔には、気づかないうちに皺が増えていた。

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