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金持ち教習所           #毎週ショートショートnote

入校要件は必ず自家用車で通学すること、それだけだった。宝くじを当てて有頂天になっていた私は正しいお金の使い道でも教えてくれるのかと思い、申し込んだ。

「今日から早速実技に入りましょう、車へ」
教官が空けたのは助手席の方だった。

「あなたはただブレーキを踏むだけでいいの」
そう言ったや否や、教官は猛スピードで所内を1周し、そのまま車道に飛び出そうとした。

「危ない ! !  」
全力でブレーキを踏むと同時に、一瞬、頭が真っ白になった。お年寄りの女性が倒れている。

それさえも無視するように教官は暴走を続け、立て続けに2人、ひき逃げした。
いずれもブレーキを踏む暇もなかった。

「教官 ! 自分のやってることが分かってるんですか!! け、警察署へ行きましょう···」

「行くのはあなたでしょう ? あなたの車で人を轢いたんだから。ブレーキも踏み切れずに」

教官が耳元で囁いた。
「お金持ちに必要なのはブレーキのかけ方。授業料、高くついたわね」。




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