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さっちゃんとイモムシさん

セミが鳴きはじめ、ひまわりが
とっても綺麗に咲く時期になりました。
季節は夏真っ盛りです。

今日もさっちゃんは家から元気よく飛び出てきました。お母さんとお買い物へ行くみたいです。
「さっちゃん!お母さん出かける準備まだ終わってないから少し待って。お庭で少し待って
て」と言われ、
さっそくさっちゃんは一目散にお庭へ出てきました。

さっちゃんの家には素敵なお庭があります。
それほど広い訳ではありませんが、木やお花が植えてあるお庭は季節を感じることができます。
今の時期はひまわりも綺麗に咲いています。

さっちゃんは今日もひまわりさんにあいさつを
しました。「ひまわりさん、おはよう」
さっちゃんにはひまわりさんが「おはよう」と返事をしてくれたように感じました。嬉しくなったさっちゃんはニコッと微笑みました。

突然、さっちゃんの視界に動く物体が現れました。よく、みるとそれはイモムシでした。
白色のイモムシがノソノソとひまわりの
葉っぱの上を行進していました。

「わあああ。」さっちゃんは初めてみる
イモムシに感激しました。 
「イモムシさん」
イモムシはさっちゃんを横目にせっせと
行進しています。
「イモムシさん、おはよー」
さっちゃんはイモムシを驚かせないよう、
小さな声で囁きながらあいさつしました。

「お母さんーイモムシさんいた!」
さっちゃんはお母さんの所に行き、
イモムシに会ったことを伝えました。
しかし、お母さんにも見て欲しくて連れてきたときにはイモムシは居なくなっていました。「どこ行っちゃったんだろ。」

お母さんとお買い物から帰ってきたさっちゃんは
「さっちゃんもイモムシさんになる」と言って床の上でモソモソしています。

それを見たお母さんは「さっちゃん何やってるの」と驚きました。「イモムシさん」
「あーさっちゃん、イモムシさんの真似してたのねー。」

さっちゃんはさらに白色の大きなバスタオルを
どこからか持ってきてそれに全身を包みこんで、床の上でノソノソとイモムシの真似をしました。

さっちゃんは歌います。
「ノソノソ、イモムシさーん。さっちゃんはイモムシさーん」

さっちゃんはよっぽどイモムシが気に入ったのか、その日は一日中イモムシごっこに興じていました。

お母さんが夕飯の支度をしています。
温かい味噌汁の匂いや魚の焼いた匂いがします。
「ただいまー」と声がしました。
お父さんが帰ってきたようです。

「ガチャ」っと扉が開くのと同時に「コツン」と音がしました。

と、同時に「わーんわーん、痛いよう」とさっちゃんの泣き叫ぶ声がします。びっくりしたお母さんが様子を見に行くとお父さんが泣いてるさっちゃんをなだめていました。

バスタオルをかぶってイモムシごっこをしていたさっちゃんはお父さんを驚かせようと待っていたら、お父さんが開けた扉に頭を打ってしまったようです。

おでこから血がでて、少し赤色に染まったバスタオルをみたさっちゃんは驚いてさらに大泣きしてしまいました。

「うぇーんうぇーん」
さっちゃんは大きな声で泣き叫びます。
お父さんはおろおろしながら
「さちこ、ごめんな」

「さっちゃん、びっくりしたね。
少しおでこ切れただけだから大丈夫よ。」
お母さんは鏡を持って
さっちゃんのおでこを見せてくれました。
多少出血はして傷はあるもの、
さっちゃんがびっくりするほどの傷では
ありませんでした。

それを見たさっちゃんはだんだん落ち着いて
きました。
「そっか、さちこはイモムシさんになりたかった
のかーでも、あんな所で床でモソモソしてたら危ないぞー」とお父さんが微笑みながら言います。

「そうよ、さっちゃん、さっちゃんはイモムシさんにはなれないけど、さっちゃんには唯一無二のさっちゃんの身体さんがいるのよ。」

「さっちゃんの身体さん?」
さっちゃんは不思議そうに呟きました。 

「そう。さっちゃんが笑ったり、遊んだりできるのはさっちゃんの身体さんのおかげなの。さっちゃんはさっちゃんの身体さんを危ないことから守ってあげて。」

何かを考え込んだ様子のさっちゃんでしたが「さっちゃん、さっちゃんの身体さん大切にしてあげる」とさっちゃんは小さく決心したようでした。

それからお母さんがおでこを消毒をしてくれて、
絆創膏を貼ってくれました。
「ほら、もう大丈夫よ。」
「ありがとう」
さっちゃんはお母さんにお礼を言います。
それからおでこを優しくポンポンして
「さっちゃんの身体さん、ありがとう。」
と優しく呟きました。
さっちゃんは、さっちゃんの身体さんが喜んでるように感じ、嬉しく思いました。

おわり







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