見出し画像

#60 「無敵」と思いがちな卒後3〜5年目はお局の予備軍である

 年長者で自己主張が強かったり、年少者に辛くあたったり、仕事をしなかったりする人をお局といいます。

 1、2年目のころは、厄介なお局をみて「自分は絶対あんな先輩にならない」と心に誓う方は少なくありません。
 それなのに、いつの間にか周りからやりにくい人、怖い人になっていて、年齢自体は若いのに、言動はお局のそれと同じだったりします。

 特に、その兆候が現れやすい、卒後3〜5年目のスタッフについて、まとめてみました。

 *ここでいう、卒後3〜5年目のスタッフとは、複数の部署を持ち、毎年新卒者を一定数採用している施設で、異動などなく同じ部署で一定期間過ごしているという方たちです。

1.「無敵だ」と思える圧倒的な自信

 この経験年数になると、以下の理由から、公私ともに自信をもつようになります。

 ⅰ.業務をひと通りマスターしている

 数年の経験を経て、その部署の対象となる患者さんの病状や、治療内容を把握するだけの知識を持ち、必要なケアを考え行動することができるようになっています。その部署で起こる基本的なことは、急変も含め、経験しているため、何かあったときにどう対応するかを知っています。実際、動けるかはまた別の話ですが。
 また、患者さんや先輩とのやりとりにも、得意不得意、好き嫌いはあったとしても、対処方法を習得しています。

 ⅱ.リーダー業務をするようになる 

 施設によって、リーダーの役割や業務は大きく異なりますが、リーダーをすることで、先輩たちと同じ位置に立つことになります。

 いちメンバースタッフのときは、自分の受け持ちを把握していれば十分でしたが、リーダーになると、チームや病棟全体の患者さんについて把握したり、医師と治療に関するやりとりをしたり、メンバースタッフの進捗状況の把握し、適宜フォローするなど、確実に視野が広がり、全体を掴めるようになります。

 ⅲ.医師とも専門的なやりとりができる

 経験が長くなったり、リーダーをしていると、プライベートを抜きにして、医療チームの一員として、業務的なやりとりが増えます。自分のアセスメントが認められたり、案が採用されたりすることは、とても自信につながりますし、治療に参加しているという実感を持て、やりがいを感じられるようになります。

 ⅳ.金銭的に余裕がある 

 看護師の給料は、一般の会社員のそれと少し異なり、入職当初から、ある程度の額をもらえます。しかし、年齢を重ねるとあっという間に抜かされてしまいますし、多少高めの額面であっても、夜勤手当によるところが大きいという事実があります。夜勤手当を引くと、そんなに高くないですよね。

 卒後3〜5年目というと、20代半ばです。一般的な夜勤回数をこなしていれば、同世代の平均的な会社員の方より多くもらっていても珍しくはありません。ですから、友人たちよりもリッチな自分、経済的に自立している自分に自信と誇りを感じるのです。

2.自信に潜む落とし穴

 その部署で頼りにされ、仕事もきちんとこなしていても、盲点になっていることがいくつかあります。そこに気づく人、気づけない人で、その後お局になっていくか、理解ある年長者になっていけるかの分かれ道になります。

 ⅰ.限られたリーダーシップ

 病棟では、各種委員会や係の主要メンバーになり、現場での活動をすることが多いですが、病棟の代表として、施設全体の会議に出て発言するという立場になる機会は多くありません。
 しばらく一緒に働いている、それなりに知った仲間の中で責任を与えられている状態なのです。つまり、言葉は良くありませんが、「お山の大将」とも言えます。

 その部署ではエースでも、他の部署に異動したら、評価は同一ではありません。そこでもエースかもしれませんが、ただの人ということもありますし、むしろ使えない人かもしれません。

 ⅱ.先輩や後輩へのジャッジメント

メンバースタッフのときは気づかなかった、リーダー業務をしり、実践していく中で、先輩の見方が変わってきます。
 優しいと思っていた先輩が、仕事がうまく回せない人という評価になったり、それまで、接点がなかったけど、困難な状況をサクサク対応している先輩を尊敬したりと、メンバースタッフのときとは、異なる印象を持つようになります。

 後輩に関しても同様で、しっかりアセスメントして報告する後輩、何も考えてないなという業務態度の後輩など、顕著に見えてきます。そして、ときには、彼らが犯したトラブルをリーダーが対処しなくてはいけません。他のスタッフの不手際を謝罪することに抵抗を感じる方も少なくありません。

3.落とし穴にハマったら、お局への道が用意されている

 3〜5年の経験で、仕事に対する考え方が確立してきています。そして、自分自身のその考えを大切にするあまり、そこから外れるスタッフを見下してしまう方が多くいます。

 ⅰ.行き過ぎたジャッジメントの弊害:レベル1

 特に問題となるのは、相手を受け入れられなくなってしまうことです。

 相手が報告や相談をしようとしても、話しかけるなオーラを出して関わりを避けようとしたり、報告されたことを信用しなようになってしまいます。

 ⅱ.行き過ぎたジャッジメントの弊害:レベル2

 過度な自信は、自分を擁護し、相手へのあたりの強さにつながります。

 例えば、リーダーに相談できない雰囲気だったから、後輩が相談したくても声をかけれず、不安を抱えたまま処置をして、その結果、インシデントが起きたら、リーダーである自分に非はないとし、100%後輩のせいにしてしまう、といったことです。
 この場合、直接の原因は、間違いなく当事者である後輩です。ただ、後輩が相談したくてもできなかった状況や、事前にリーダーとしてメンバースタッフに確認の声かけできたのではないかといった、検証をせず、当事者だけを責め立ててしまうようになるのは、リーダーとしても、指導する先輩としても問題です。

 ⅲ.行き過ぎたジャッジメントの弊害:レベル3

 このような行為がさらにエスカレートすると、「指導」をしなくなる人もでてきます。

 質問されても、自分で調べるよう伝えるだけで、根本的なことは教えないとか、できていないこと、知らないことを、責めるだけせめて、何も指導せず終わる、ということを平気でするようになります。
 恐れられている自分、自分の指導で泣いた後輩の数が自分のステイタスだと感じるようになる人もいます。

 ここまできたら、歳が若いだけで、やってることは何らお局と変わりません。

4.お局への道に進まないために注意すること

 自分との違いを受け入れられないのは、仕事への情熱だったり、年齢や経験値、環境なども大きく関わってきます。
 疎まれるお局ではなく、信頼できる先輩になるために、以下のことを意識していきましょう。

 ⅰ.使えないと思う相手にも、ビジネスライクに接する

 手を焼く同僚は程度の差はあれど、一定数います。その方たちに、あからさまな嫌悪感を見せないようにしましょう。どんな相手であれ、同僚である以上、一緒に仕事を進めなくてはいけません。
 リーダーの醸し出す雰囲気が、その場の雰囲気を左右します。リーダーが好き嫌いを露骨に表現することは、全体の雰囲気も悪くなりますし、その対象となったスタッフが萎縮して、パフォーマンスが低下したり、必要なことを伝えられなくなってしまいます。

 また、感情的に仕事をする人間は最終的に信頼されませんので、プロとして、自分の言動、態度に責任を持ちましょう。

 ⅱ.教育する立場であることを自覚する

 プリセプターやメンターなど、教育的役割がついていなくても、先輩が後輩を指導することは当然の義務です。そして、後輩の成長が乏しければ、後輩の勉強不足を理由にするのではなく、自分たちの指導方法、関わり方を検証する必要があります。
 時々、自分はプリセプターじゃないからと指導することを拒否している人がいますが、リーダーをしているならメンバーのフォローや指導はどんどん行いましょう。スタッフの成長は、リーダーの負担の軽減にもつながります。
 業務に直結することだけではなく、雰囲気づくりなど、パフォーマンスアップにつながる工夫もしていきましょう。あなたの成長にもつながります。

 ⅲ.自分も不完全であると認識する

 人は、「自分は完璧だ」と思った瞬間、傲慢になり、完璧ではないと感じる相手に、横柄な言動をとるようになります。
 自分は完璧に業務をこなしているつもりでも、他から見たら、不十分なところがあるはずです。人相手の私たちの仕事は、明確な正解があるものばかりではありません。譲れないもの、大切にしているものは人それぞれ異なるということを心に留めておいてください。

まとめ

 卒後3〜5年目は公私ともに自信を持つようになります。その自信には、落とし穴がありますが、それに気づかず、落とし穴に落ちてお局となってしまう方もいます。
 落とし穴に気づき、理解ある先輩になるために、傲慢にならないように意識し、行動していきましょう。

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?