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私と赤ちゃんの授乳の旅
前回の記事から3日後、突然陣痛が来て予定日より1週間以上早く息子は生まれてきた。
それから約一ヶ月。
この小さな存在が私達と一緒に住んでいる不思議を幾度となく感じながら、幸いにも息子はすくすく(ぷくぷく)成長している。
アメリカでは通常分娩で産後に問題が無ければ、産んでから48時間以内に家に帰される。
私も2/23の夜7時に息子を生み、2/25の朝6時に看護師さんに「2,3年後に二人目産みに戻ってくるのよ〜Good luck! 」と笑顔で送り出された。
今にも壊れそうな新生児を連れて帰宅。
疲れ切っているのに赤ちゃんが心配で眠れない。
産後はハイになったかのごとく、アドレナリンが出ているのか、とにかくリラックス出来ず、少しでも眠るのにヨガの呼吸法なども試した。
私は最初の2週間は絶対に母乳だけで育てたいと思っていた。
たった2週間。出来るだろうと甘く見ていた。
生後二日目。
Cluster feedingと言われるフェーズに突入。
看護師さんに教えてもらうまでこの言葉さえ知らなかったが、赤ちゃんがとにかく食べたがる時期だと言う。
それはもう、1日中(大袈裟でなく本当に1日中)息子は私の胸に吸い付いていた。
母乳が出るまでは出産後数日かかる。
初乳がほんのちょっと滲み出るくらいで、生後まもない赤ちゃんの命を繋ぐには十分な量だが、赤ちゃんのお腹を満たすほどの量はない。
よって吸っても吸っても赤ちゃんはお腹が空いている。
うちの息子は最初の数日で8%も体重が減ってしまった。
眠たい、乳首が痛い、休みない授乳。
ひどい時は40分間の授乳の後10分の休憩を挟んで、また授乳…と終わりが見えず、何度粉ミルクが頭によぎったことか。
入院中に授乳の専門家が病室に来てくれたが、「赤ちゃんが欲しがるだけあげなさい」と言われた。
しかし、数日後、小児科の先生には「出てないのに吸わせておいても赤ちゃんがカロリー消費するばかりだから適当なところで止めさせなさい」と言われた。
子育てを始めてたった一ヶ月だが、こういう反芻する情報がインターネットにも溢れていて非常に困る。
こうして始まった茨の授乳の道だった。
日本では見知らぬおばさんが赤ちゃんを見ると母親に向かって「母乳?」と聞くというのがあるあるだ、というのをどこかで見た。
「母乳で育てているの?」という何ともお節介な質問だが、生まれた時からずっと母乳で育てるというのは大変なことだと身を持って学んだ。
赤ちゃんがより強い免疫を取得することが出来るなど、メリットも大きいが、私は母乳で育てることによってメンタルがギリギリまで追い詰められたので、良し悪しだと思う。
母乳で育てようと思っていても粉ミルクを途中で足したり、搾乳パンプで吸って哺乳瓶から母乳をあげたり、臨機応変に対応するべきだと思った。
また、これに関しては周りがとやかく言うのは避けて欲しいと思う。
私の周りは幸いにもそういう人はいないが、もし私の精神がギリギリのところで「母乳で育てるべきよ」なんて言われていたら壊れていたと思う。
母乳が出るようになってからも試練は続いた。
今度は出過ぎる。
ある夜、相変わらずcluster feedingをしている息子。
前と違うのはもう母乳がしっかり出ている。
吸えば吸うだけ出ているはずだ。
しばらくして息子はすごい勢いで噴水のように吐き出した。
マーライオンのように。
鼻からも出ていた。
息子は円らな瞳で悲しそうに私の方をじっと見ていた。
この小さな体からどうやったらこんなに出るんだ、と私は人生で一番くらいに動揺した。
息子が死んでしまうのではないかとすら思った。
あの時、母がいてくれて本当に良かったと思う。
母が冷静に対応してくれた。
結局のところ息子は元気で健康なのだが、精神状態が通常じゃないところに予想だにしないことが起こると人は大変動揺することを学んだ。
この一件を乗り越えるのに時間がかかったのは私で、息子はけろっと元気に赤ちゃんらしく過ごしていた。
私はアメリカまで来てくれた両親に子どもを預けて寝室で思い切り泣いた。
私が途中で止めさせなかったから、私の授乳が上手く行っていないから、幼い息子に苦しい思いをさせた、と自分を責めた。
大袈裟だと思うかもしれない。
ホルモンが荒れ狂う産後の母親はこれくらい繊細なのだと冷静になると、自分でも驚く。
アメリカでは「breastfeeding journey」という表現をよく目にする。
直訳すると、「授乳の旅」。
授乳する、母乳で子を育てるというのは旅なのだ。
良い日もあれば、悪い日もある。
私はこの表現がすごく気に入っている。
痛みがあって、葛藤があって、喜びがあって、やり甲斐がある。
授乳をしながら上目遣いに私を見つめる息子を見ると、ご褒美をもらったような、心から満たされた気持ちになる。
私は他人に母乳で育てるべきだとか、私は母乳で育てたとか、そんなことを言うつもりは1mmもない。
それぞれの選択だと思うし、現代のように医療が発達した社会では赤ちゃんが多少強い免疫を持ってることはそこまで大切じゃないのかもしれない。
それに私は職場に戻らないといけないというようなプレッシャーもないし、赤ちゃんを育てることだけが当面の仕事なので、母乳を選択した。
最後に、一ヶ月完母で育ててみて役に立った事、物を紹介して終わろうと思う。
①乳首の痛みには母乳!
お医者さんから教えてもらったのだが、乳首が痛い時は授乳後に母乳を乳首に塗り、乾かす。
私はこれが一番効いた。
②授乳後にクリームを塗る
授乳後にクリームを塗るようにすると、痛みが軽減する。
拭き取りの必要の無いことがマスト。
昼夜問わず一日何十回も授乳すると考えると、拭き取ってなんかいられない。
アメリカ在住の方へ、となってしまいますが、私はこれを使ってます。
↓
最初は毎回塗るのがすごく面倒だけど、乳首が痛いのは最初だけの人が多いと思うので、これ毎回やるのか何か月も…と思わなくて大丈夫。
私は最初の二週間くらいは授乳後毎回塗ってたけど今ではほとんど塗ってません。
③色々なポジションを試す
最初は胸元に抱えて授乳していた私。
↓
![](https://assets.st-note.com/img/1711655008349-hiylnTXXtB.png)
でも母乳出過ぎ問題が出てきてからは、横になって授乳するように。
重力がかかるから母乳が噴き出しにくい。
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![](https://assets.st-note.com/img/1711655130610-MLdeKaemqU.jpg?width=800)
しばらくこの体勢で授乳してたのだけど、赤ちゃんのお腹を圧迫するからか吐き出すことが多くて(マーライオンのように吐いた時もこの体勢であげてた)、今はこの姿勢に落ち着きました。
↓
![](https://assets.st-note.com/img/1711655198747-vCqBewK8XD.jpg)
↑この画像ではお母さんの頭は腕の上に乗ってる?
私もこの姿勢であげてたのだけど、これを長時間してると首がものすごく痛くなるから授乳クッションの上に頭乗せてます。
首の所をしっかりサポートするのがおすすめ。
本来の使い方とは違うけど、枕+授乳クッションの高さが個人的にぴったり。
首・肩の負担が格段に減りました。
↓
④キーワードは「Surrender(降伏)」
新生児を育てていると、授乳とオムツ替えで一日が終わってしまって家の中はぐちゃぐちゃ、料理もろくに作れない日々、ギリ洗濯だけは必要に迫られて夫婦で何とかやっている。
赤ちゃんを育てるのが最も大切な仕事で重大な任務だ、と割り切って「ああ、今日も何も出来なかった」なんて思わず、今日も私は赤ちゃんを精一杯育てたと思うこと。
赤ちゃんが泣くから1日中抱っこをして過ごしたなら、赤ちゃんにたくさんの愛情を注いであげられたと思うこと。
子供を産み、育てる、その子供が成長し、また子供を…という、巨大な人類のサイクルを担っているのがお母さんなのです。現代のママも、育児という仕事にもっと誇りと責任を持っていただきたいのです。
一か月経った今も授乳関係でストレスに感じることは色々ある。しょうがないとわかっていても、夜中の授乳で息子が上手く乳首に吸い付かない時。授乳をしたことがある人ならわかると思うが、赤ちゃんは乳首を探してぶんぶん頭を振る、それもまあすごい速さで。
顔を胸にくっつけたまま頭を振るもんだから、乳首が右に左に折れ曲がって当然赤ん坊の口には入らない。
脳裏に「そこに私はいません~♪」がよぎる(←世代がばれる)
なんなら赤ん坊は私がいる方向と反対の方向、虚空に乳首を探し求める。
これ、赤ちゃんの目がちゃんと見えるようになってきたら解決するのかな…
他にも、ブラジャーや服が濡れる、シーツが濡れるなども地味にストレス。
一日に二度三度と着替えることになる。
母乳の量が落ち着くまでは4-6週間かかると言うから、その後は着替えの回数も減ることを祈る。
使い捨ての母乳パッドは切りがないと思ったので、私は洗濯して使えるタイプのパッドを使用してます。
↓
母乳で育てることは私と子どもの初めての旅路。
授乳に少し自信がついてきたと思ったら、今度はうちの息子は哺乳瓶を拒否。
これからも日進月歩、自分なりに、育児に邁進していく。
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