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損な家族に思うこと

病院で入退院に関わる仕事をしています。つまり、入院時の関わり、退院にむけての関わりを行う仕事、それはつまり患者さんの家族と関わるということです。

最近は、かなりこだわりの強いというか、かなり癖のあるご家族が増えている印象があって、対応に困ることも多くなっています。


私情と現実

先日、入院の面談をしたご家族は、90代の患者さんのご家族。長男さんは70代で退職後農業をしていると言っていました。

長男さんは、患者さんであるお母さんと2人暮らし。「100でも、120でも長生きして欲しいと思うけれど、そういうわけにもいかんからなぁ・・・。」とつぶやいていました。きっとお母さんが大好きなんでしょうね。

患者さんは、食事が摂れないといって入院したはずが、ミキサー食ではありますが食べられるようになっています。
きっと、もう少し様子をみてからの判断でも良かったんでしょうけれど・・・。

長男さんは、面会にきてはいろんな要望を大きな声でまくしたてます。寝たきりになっているのに「歩かせろ」と言ってみたり、「以前飲んでいた薬を飲ませてくれ」と大きな声で要望を言ってきたり、「入院時の書類をなくしたからもう一度出してくれ」と病棟や受付で大騒ぎしてみたり。

要注意家族として名前があがり、患者さんはご飯食べているし、医療行為はないから施設退院を促していきましょうという方針になりました。

長男さんは決して悪い人ではないのですが、思ったことをストレートに言葉に出してしまう人なんですよね。損な人だなぁ・・・と思うのが私の印象。

仕事に私情を挟むなとよく言いますが、それでもやっぱり人ですから、感情は動くんですよね。もちろん病状的に退院出来ない人を退院させることはしないですが、家族に問題があるので退院をすすめましょう、ということは時々あるのです。

問題がある家族ってどういう家族なのか、これは難しいところですが、お互いある程度の節度は必要なことなんでしょうね。もちろん、家族は職員に対して何も言うなということではありません。ただ、内容や言い方は、お互い気持ちいい関係を築けるような配慮は必要なことではないかと思うのです。

その後、施設の話をすすめて

その後、私の方から長男さんへ電話をし、食事が摂れているので、施設の入所申し込みをしていきましょうと伝えました。

最初は、「ここに最後まで置いてくれ」とかなり言っていましたし、電話から数日後、突然、病院に私を訪ねて来たりと、落ち着かない様子でしたが、結局は入院してからの様子を詳しく説明し、施設の申し込みに同意してもらうことが出来ました。

なんとなく損な方だなぁ・・・と思った私。

それでも、施設に行ける話が出来るなんて元気な証拠ですし、ご本人にとってはいいことなんじゃないかって思うのです。よく病院の方が安心なんて言うご家族がいるけれど、病院は治療を行うところで、生活の場ではないのです。

医療が必要でなければ、こんな無機質な病室で過ごすより、施設の方が生活感があっていいですよね。

家族の理解と現実の乖離

今回は、ご家族の言動が一つの原因となって方向性が急に変わったケースになりますが、背景としては家族が現状把握ができていない、職員の認識とのずれがあることが一つの要因なんだろうなぁ・・・と思うのです。

だから、家族は過大な要求をしてきたりするんですよね。

でも、子どもから見た親って、いつまでもしっかりした親、なんでもできる親のイメージが抜けきれないんじゃないかって思うこともよくあって。

最近、私の友人の義母が脳梗塞になって食事が十分摂れなくて、歩くことも出来なくなっているんだけれど、義妹がそれをなかなか認めることが出来なくて、今後のことをなかなか決められないって言ってて。

「歩いてトイレに自分で行けたら家でみれるんじゃないか」って言ってるらしいけれど、今は立つことも出来ない状態なんだよなぁ・・・って、友人も困っていたんです。

でも、これってわりとよくある話で、現実を説明していても頭に入ってこないご家族って多いんです。

病院の職員も、家族の理解を確認しながら丁寧な説明をこころがけていかないといけないんでしょうけれど、面会をしてもらい、その都度説明しても理解が出来ない家族もいるのが現実。

年々、家族対応が難しくなっていますが私も対応の仕方を工夫していきたいと思います。そして、私自身、家族の立場になることも増えてきていますので、損な家族にならないように気をつけていきたいと思います。


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