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患者さんとの出会いは必然なのかも

看護師として仕事をしてきました。学生の時から出会ってきたたくさんの患者さん。その中でも印象に残っている患者さんはいて、たくさんのことを教えてもらってきた気がします。

富山に転居し、療養型病院に勤めるようになってから、あまり密に患者さんと関わることが少なくなっていて、少し寂しさも感じていたのですが、昨年入院した患者さんから、たくさんのことをもらっている気がするのです。


患者さんとの出会い

その患者さんは、70代女性のTさん。大腸がんで人工肛門があり、癌が進行して終末期の状態で、私の勤める療養型病院に昨年入院してきました。

入院前には、必ず家族と面談をします。ご主人と遠方にいる息子さんがきてくれました。療養型病院って、総合病院と違って出来る検査は限られていますし、延命治療などは行わず、症状に対する治療のみで自然に看ていく病院になります。そういうことを説明して、納得いただいた上で入院をお受けしているのです。

ご主人は奥様のTさんをとても愛していらっしゃいました。面会の出来る日は毎日面会にきています。

Tさんは、ホントは家に帰りたかったのですが、前医で一度家に帰った時に症状が悪化して数日で病院に戻ったことがあって、自宅療養を諦めていました。

そんな気持ちを抱えて私の勤める病院に転院してきたのです。

入院の最初の頃、スタッフの言動に傷つき一度家に帰りたいと言いました。その時から、私が頻繁に関わるようになり、Tさんの気持ちを聞くようになりました。ご主人とも話をするようになりました。

結局、家に帰る自信はないので、このまま入院させてほしいと言われ、話は落ち着いたのですが、「春になったら外出できるかしら?」とつぶやいていましたので、「暖かくなったら考えようね」って話していました。

3月になり、だんだんと春めいてきた頃、私はTさんに言いました。
「そろそろ桜が咲く頃だね。家に行ってみる?」
「行けるかしら・・・。」Tさんは、不安そうに話します。
「ご主人にも聞いてみましょうね。」

そう言って、ご主人と話をしたり、主治医に外出の許可を取ったりして、4月のある日、ご主人、息子さん、お孫さんと一緒に自宅へ出かけました。

庭でお花を植えるのが大好きなTさん。自宅での滞在時間は長い時間ではありませんでしたが、庭のお花を眺めて過ごす、これがとても、うれしかったようです。

体調の悪化

Tさんは、癌の終末期の患者さんです。その後は徐々に弱り、最近は食事も少なく、全身がむくみ、医療用麻薬を使って辛い症状を和らげています。

ベッドサイドに行ってお話していても、だんだん言葉が不明瞭になってきました。そんな様子のTさんですが、私が行くと「いつもありがとう」と、とぎれとぎれに言ってくださるのです。

ただいつもみせてくれていた笑顔はみれなくなりました。

ご主人と面会後に偶然お会いしたのですが、涙を流しておられました。「もうあまり長くないよね・・・。」と。とても寂しそうな姿が私の目に焼き付きました。

私の思い

千葉県で仕事をしている時は、社会資源も多く、訪問看護や訪問診察を入れて、バックアップを整えて自宅療養を調整することをよくしていました。

Tさんは、出来ることなら自宅療養をおすすめしたい方でしたが、自宅に帰る不安が強かったので、入院を継続しました。

でも、本当にそれで良かったんだろうか・・・と思う自分がいます。

自分の無力感をすごく感じながら、自分が出来ることってホントに小さなことだなぁ・・・と痛感。それでも、少しでもTさん、そしてご家族の気持ちの上での力になれていたなら、良かったのかなぁ・・・と思うのです。

そして、こんなふうに“想う”ことも大切なことなのかもしれないですね。

なんとなく、くよくよ考えてしまう自分ですが、看護師としてこれからどんな働き方をしていくのか、考えさせられています。



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