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【読書感想文】後悔のおかげで、人間として肝心なことを心にしみとおるようにして知れば、その経験は無駄じゃあない ⭐︎吉野源三郎「君たちはどう生きるか」を読んだ

例によって、ネタバレありです。ご容赦いただければ幸いです🙏

猛暑が続いております。
沢山の本の中でも、
やめられない止まらないおすすめ本を
ご紹介しております。
エアコンのきいた室内で読書をお考えの方
のお役に立てれば幸いです💕

1937年7月(戦前)発行。池上彰氏の序文解説によると「戦前に発行されたにもかかわらず、戦後も売れ続け」たらしい。
読んでわかった、非常な良書!

自分は、小説作品において、冒頭の一文、
最後の一文にこだわる、読んでいても書いていても。
そしてこの作品の最後、痺れた。

僕は、すべての人がおたがいによい友だちであるような、そういう世の中が来なければいけないと思います。人類は今まで進歩してきたのですから、きっと今にそういう世の中に行きつくだろうと思います。

そして僕は、それに役立つような人間になりたいと思います。
(中略)
そこで、最後に、みなさんにおたずねしたいと思います。

君たちは、どう生きるか。

「君たちはどう生きるか」吉野源三郎

ページをめくり最後の一文を読み「うおっ」とむせぶ。
涙が出るという事ではなく、
感激の身体反応。そうきたか!と敬服

上記文中の「僕」は中学1年生(14才)通称コペル君で、
ここまで至るのに色々あった。

クラス内で一人がいじめにあっている場面が序盤に出てくる。
そのいじめられっ子がまた、いい子で。
終盤にも登場してくれる!

申し遅れましたが、
宮崎駿氏の映画「君たちはどう生きるか」を
(一年経つかな?)先に観た。

口の中にもう一羽笑

これまた良き作品で、観終わった後には生きる活力がみなぎった。
(村上春樹氏的)メタファーには慣れているので、
作者のメッセージがスッキリ伝わってきて、今までの色んな謎が解けた。
代弁してもらえた感があった。
(独自の病「載せるのが億劫病」にかからなければ、後日映画感想も記載しますね)

映画が自分にとってあまりにも良かったので、
本もいいんだろう、
という薄い動機で手に取る。
読んで良かった!売れるよそりゃ!

で、普通に、宮崎駿氏は、題名にまでしたし、
一人でも多くの方にこの本を読んでほしいと、
思ったのではないか?←推察。もし外れていたらすみません🙏🙇

↑Amazon実物画像によれば「永遠の名作!」と帯にある、まさに!
教科書会社の皆さま、これは
道徳の教材に一部抜粋で使えるのではないでしょうか?既に使っておられますでしょうか?

ゲーテのように人道と平和とを要し、人類の進歩に大きな希望をつないでいた文葉でさえ、ナポレオンの話が出ると、いつもその湧き出るような活動力と天才的な決断力とを心から感嘆して語っていたくらいだ。
(中略)
僕たちがナポレオンの伝記を読むと元気になってくるのも、また、いまだにナポレオンの伝記が愛読されているのも、そのせいなんだけれども、実行力といい、活動力といい、すばらしい精力といっても、それは、(中略)この世の中にある何かある目的を実現していく力ではないか。

「君たちはどう生きるか」吉野源三郎


この前後のくだりでナポレオンについて、
詳細に述べられている。ロゼッタ石、
ベルロフォーン号の甲板の上に現れた時の数万のイギリス人のリアクション、など、

彼がどういう風に偉人だったのか、
真面目に学校教育を受けた割に知らなかった
のだが、ゲーテまで絶賛していたし、
勉強になった。

こんな感じで、難しい事を、色々、
わかりやすく伝えてくれている。

吉野源三郎氏は東大(当時は東京帝大)哲学科卒なんだが、
自分は常々思っていた。
本当に頭いい人は、難しい事を、
その人にとってわかりやすく説明できる、
してくれる親切さを併せ持つ。
この点でも作者の素晴らしさに感動する。

話を戻して、世の中のある目的を実現していく力がたくさんある人は、
後世、偉人と言われるのだね。
「たくさん」じゃなくて少しでもいい、
世の中の役に立ちたい、と自分も思えた。

ちなみに、この語り手は、主人公コペル君の叔父だ。
亡くなった父親にコペル君には「人間として立派なものになってほしい」と言いおかれたので、ノートブックに、
いつか読んでもらう前提で書き綴る、
という設定もいい。
親から子へ、というものより、
ある意味読みやすい。

世間には、悪い人ではないが、弱いばかりに、自分にも他人にも余計な不幸を招いている人が決して少なくない。人類の進歩と結びつかない英雄的精神も空しいが、英雄的な気魄を欠いた善良さも、同じように空しいことが多いのだ。
君も、いまに、きっと思いあたることがあるだろう。

「君たちはどう生きるか」吉野源三郎

今までに、思いあたることが自分もあった。
人に対して思う事もあったし、
自分に対しても一時期思った。
が、それは少なくない、と。それは、真理だ。

余計な不幸を招かぬために、
強くあろうとこの一節を読んで思う。

夏の雲

この後、事件が起こり、コペル君がしょげてしまう、で、
この事件描写がリアルだった。あるある!
だよね、約束していたとしても、
その場になると流されてしまうのが人間だよね、
わかる!して、その後に
自責の念に異常にかられるのも、わかる!

母親が編み物をしながら
病床のコペル君に話すシーンがある。

いわく、神社の階段を上っている時に
前のおばあちゃんが重そうな荷物を持っていて、
持ってあげなきゃならない、と思いながら
言い出せず、気を揉んでいるうちに、
階段を登り切ってしまった、この時の事を
時々思い出す。で色々喋った後の最後、
が下の引用となる。「その事」とは
前述の「事件」中の事を指す。

その事だけを考えれば、そりゃあ取りかえしがつかないけれど、その後悔のおかげで、人間として肝心なことを、心にしみとおるようにして知れば、その経験は無駄じゃあないんです。それから後の生活が、そのおかげで、前よりもずっとしっかりした、深みのあるものになるんです。潤一さんが、それだけ人間として偉くなるんです。
だから、どんなときにも、自分に絶望したりしてはいけないんですよ。」
(中略)
こんどの事件を知っているのかもしれない、
知っていてもその事には触れないで、こんな話をして下さるお母さん!

「君たちはどう生きるか」吉野源三郎


母親はコペル君というニックネームではなく「潤一さん」と呼ぶ。
やはりこちらは、叔父のノートブックより
「親から子へ」という空気が強い。
強くて、終盤に出てくるのもまたいい。

人間って失敗する。例えば仕事で。
頑張っている人ほど、失敗したりする。
が、後悔こそ人として大事な事を教えてくれる、とは…

さすが吉野源三郎!

そして、冒頭に書いた結論

「すべての人がおたがいによい友だちであるような、そういう世の中が来なければいけない」し「人類は今まで進歩してきたのですから、きっと今にそういう世の中に行きつくだろう」

というのを87年前に言っていた人がいた。
「ユダヤ人大富豪の教え」(別記事参照)でも
同じくらいな世代、つまり太平洋戦争を生き残った方が、

「みんな好きなことをやって」「競争したり、お互いに意地悪したりする余地がな」く人々が「幸せに暮らしている」「そんな世界」が夢だ

と、言っていた。こんなに前から既に言ってる人が、
私の読書内だけでこんな複数いるんだから、
多分自分が生きている間ギリギリくらいには
そういう世の中に行きついている、気がする。
自分も行動する、
と改めて思わせてもらえた。

彼ら(及び私)の希望へ一直線に最短で進めていない、のはわかっている。が、
進歩して後退し、後退して進歩してを繰り返しつつそこへ近づいている
のは、感覚としてある。
現代、そう感じる人は多いのではないか。

以上です。(読み手によっては)暑苦しい終わり方になりました、すみません。

今回も想像を超える長さとなり、対策考案中。最後まで読んで頂きありがとうございました❤️
ここまで読んでくださった皆様の幸せを
心よりお祈り申し上げます❤️❤️❤️


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