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「東アジア諸国人が結婚に消極的な理由 日本・中国・韓国の比較」(第1章関連)(2023.7.12議論)

日本
・欧米と比較して自立志向が弱い
 欧米:自立への圧力が強く、低収入の若者にとって同棲・結婚は経済的に合理性
    がある
 日本:親元を離れて自立しなければならないという圧力が弱い
    →生活水準の低下を避けるための親との同居(18-34歳の未婚者の約75%)
     が合理的な選択で同棲・結婚以外の選択肢がある

・「恋愛結婚」の衰退
 交際相手を持つ若者が減少し、恋愛=面倒・リスクと捉える人が増加している

 ↓↓↓
 欧米と比べ、日本では決まったパートナーがいなくても豊かに生きられる社会
 →母親や同性の友人の存在(親密性)
 →広い意味での風俗店の存在、漫画等の娯楽で欲求が満たせる


中国
中国都市部における未婚・非婚の背景
・就職難により安定した生活が送れない
 2023年5月の16-24歳の失業率が20.8%で、失業率は全世帯の4倍
 →コロナ禍での景気低迷、寝そべり族の増加

・高学歴化 「剰男(シェンナン)」と「剰女(シェンニュイ)」の存在
 高学歴のホワイトカラーほど未婚率が高く、未婚のままアラサーを迎えた男女を
 剰男・剰女と呼び、社会現象となっている
 ※学生数の増加が原因

中国農村における未婚・非婚の背景
・「男余り」の現状
 若い女性は都市部に働きに出て、またそもそも人口的に男性が余っている
 →生まれた女児100人に対して男児は118.64人(男児は102-7が正常とされる)
 ※一人っ子政策下での後継としての男児を優先した女児の中絶、出産後の遺棄が
  原因

・多額の結納金
 農村の慣わしとして、男性が多額の結納を負担(住宅、車など)
 →男性側の負担金額は最大で約3560万円にのぼる
※2022年の婚姻件数は683.3万組で、ピーク時2013年の1346.9万組から半減


韓国
男性:経済的な理由
・不安定な雇用、低い所得、結婚後の生活費
→学費に見合わない低賃金、最適賃金の上昇により非正規雇用の競争率も激化
→学歴社会のため大手企業に入れるのは一流大学卒のみで、中小企業の賃金は一流
 企業の6割未満
→上記の理由で希望職種に就くことも困難で、募集時の内容と実際の仕事内容が異
 なる

・住宅事情
→他国に比べて家を借りる際に数十万〜数千万の補償金が必要となり、上記の理由
 と合わせて、自立・安定した生活が困難

女性:結婚が人生に支障をきたす
・社会復帰が難しい
→出産を経験した女性の社会復帰には平均6-7年かかる
→徴兵経験が男性中心主義・性別役割意識を強めている


参考文献
・尾崎裕子・山谷真名著, 「婚姻意識と性役割意識」, 作品社, 2008, p94-97
・坂根真里「中国の結婚事情 日本との共通点・違いとは」,毎日新聞, 2023-2-16
・篠塚英子・永瀬伸子編, 『少子化とエコノミー パネル調査で描くアジア』
・柴原直樹・遠藤正雄・石井恒生・田仲由佳,「日本人大学生と中国人留学生の結婚
 観の比較」,神戸医療福祉大学紀要14-1, 2016-9-21, p1-16
・西谷格,「上海で婚活して卓球美女とデートした結果 30歳を過ぎると『男剰、
 女剰』に」, PRESIDENT Online, 2018-5-7
・安宿緑, 『韓国の若者―なぜ彼らは就職・結婚・出産を諦めるのか―』, 中央公論
 新社, 2020, 19-95
・山田昌弘, 「日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?結婚・出産が回避される本
 当の原因」, 光文社新書, p69-73 p89₋96
・山田昌弘, 「結婚不要社会」, 朝日新書, p177-182
・読売新聞, 「男女差3000万人、中国の結婚できない男たち」, 日朝刊, 2018-10-
 14
・読売新聞, 「結納金にいえ・車用意しても…『男余り』の中国農村、結婚難が深
 刻」,2021-10-27
・読売新聞, 「中国婚姻件数、10年で半減…『一人っ子政策』での男女比不均衡も
 影響」, 朝刊, 2023-6-14
・読売新聞,[スキャナー]「中国で就職『超氷河期』、若年層の失業率20%
 超」,2023-6-18

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