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【要約&実践】ブランディングの科学 独自のブランド資産構築編

こんにちは!消費財メーカーのマーケターとして働くmotuです。
マーケティングに関する書籍の"理解"から"実践"への架け橋となる記事を投稿していきたいと考え、活動しています。

書籍の内容を"実務"で活かすことができるよう、要約・体系化していくので、ぜひご覧ください。それではやっていきましょう!

書評

【再現性】   ★★★★
【面白さ】   ★★★★
【おすすめ度】 ★★★★

今回紹介するのは、ジェニー・ロマニウク氏著書の「ブランディングの科学 独自のブランド資産構築編」です。この書籍は、以前の記事で紹介した「ブランディングの科学 新市場開拓編」の第5章「独自のブランド資産を強化する」を1冊の書籍としてまとめ直したものになります。

前著の「ブランディングの科学」シリーズでは、主に大企業向けの解決法が記されていたのに対し、本著はどんな規模のビジネスにおいても実践できる内容が書かれている点がおすすめです。前回紹介した書籍を読まずに、この書籍を読み始めても問題ありませんが、可能なら併せて読むことで理解が深まると思います。それではやっていきましょう!

1. 独自のブランド資産の種類

五感に訴えかける資産であれば、独自のブランド資産になるが、嗅覚、味覚、触覚はノンユーザーやライトユーザーにアプローチしにくい。したがって、聴覚と視覚が独自のブランド資産として使われやすい。映像資産がカラー、ワード、フェイス、シェイプ、ストーリーの5つに分類でき、音声資産がサウンドと音楽の2つに分類できる。

1-1. カラー資産

大きく分けて、①単色カラー資産、②カラーコンビネーション資産、③色とデザインのコンビネーション資産、の3つからなる。

①単色カラー資産
ある1つの色が独自のブランド資産の候補となるためには、カテゴリーの色(赤色でケチャップ売り場を示す)、サブカテゴリーの色(白色でクリームパスタソースを示す)、ブランドの色などの関門を通り抜け、競合ブランドの色を除外して残った色が、自社ブランドの採用すべき色の選択肢となる(パッとしない色であることが多い)。
②カラーコンビネーション資産
色を組み合わせてそのコンビネーションにブランド連想のリンクを構築する(ペプシの赤色と青色など)。
③色とデザインのコンビネーション資産
色と形状などのデザイン要素を組み合わせる(レッドブルの缶にデザインした青と銀の斜めの長方形など)。

一方で、色が背景に溶け込んでしまうことや一貫性を維持できないといった問題が発生してしまい、カラー資産を構築することは難しい。

1-2. 形状資産

典型的な形状資産は、①ロゴ、②シンボル、③パッケージの形状、の3つからなる。

①ロゴ
ロゴの形状の独自のブランド資産としての適応力は大きく、オンラインでもオフラインでも利用可能。一方で、形状を使ったロゴはどこにでも存在するので、それをいつも背景の構成要素の1つとして使っていたのでは、ブランド名との関連性は希薄になってしまう。
②シンボル
製品の形状が独自のブランド資産になるためには、まず他の製品の形状と差別化が図られていなければならない。そのうえで、広告に投資したり、パッケージのプレゼンスを高め、ブランドのノンユーザーの目にも留まらなければならない。
③パッケージの形状
ブランド資産としてのパッケージの形状をデザインするときや決定するときは、その形状が一目で認識できるかどうかが重要。

1-3. ストーリー資産

ストーリー資産とは、広告クリエイティブの中に取り込んで広告ストーリーの軸を作れるような独自のブランド資産のことであり、①スタイル、②モーメント、③コンポーネント、の3つからなる。

①スタイル
レッドブルのアニメーションなど、広告全体のトーンに影響を及ぼす様式。一貫性を維持するために、長期的存続を妨げる可能性のある課題を早期に検討して、回避することが重要。
②モーメント
オレオの「クッキーを剥がし、クリームをなめ、ミルクにつける」など、特定の時点に発生する特定の行動とその映像。一般的な動作など、陳腐なモーメントではブランドとの間にリンクを構築することは難しい。
③コンポーネント
アフラックのアヒルなど、広告のクリエイティブデザインの中に取り入れる構成要素。長期的視点が重要。

1-4. フェイス資産

典型的なフェイス資産は、①セレブリティ、②スポークスパーソン、③キャラクター、の3つからなる。

①セレブリティ
有名であればあるほど、親近感効果を享受することができるが、同時にメンタルコンペティションが発生するため、慎重に計画することが重要。
②スポークスパーソン
広告外での知名度が低いため、メンタルコンペティションが低く、ブランド資産としては確立しやすく新鮮に保ちやすい。一方で、契約と同時に後継者の育成をも念頭に入れた長期的視点を持つ必要がある。
③キャラクター
セレブリティとスポークスパーソンと比較すると、知名度と独自性が有意に高い。顔と声に特徴があり、周囲の環境や他のキャラクターとの差別化が図れるようにする。

1-5. ワード資産

タグライン
他のブランド資産と比較して、話し言葉でも書き言葉でも表現することが可能であり、マルチプラットフォームに適応する。タグラインの知名度と独自性の向上には、以下3つの要因が関与している。

・音声面の強化
音楽を使用したり抑揚をつけてタグラインを音声化している
・ブランド名の使用
ブランド資産を構築するときは常にタグラインにブランド名が組み込まれている。独自性よりも知名度に2倍の影響力がある。
・希少な言葉の使用
まれで目立つ言葉がタグラインに組み込まれている

このとき、タグラインの長さ、リードワード(購入の言葉)の希少性、押韻は、ブランドへのリンクに影響を与えない。

1-6. サウンド資産

典型的なサウンド資産は、①ノンボーカルサウンド、②ボーカルサウンド、③スタイルコンポーネント、の3つからなる。

①ノンボーカルサウンド
レンジのチンという音など、重要な瞬間に入るための区切り音として、あるいは広告終了のジングルとして機能することで人の注意を引き付けているが、他のサウンド資産と比べるとスコアは低い傾向にある。
②ボーカルサウンド
人の声を利用した音声資産。セレブリティの顔と同じメンタルコンペティションのリスクがある。珍しい声や話し方が重視される。
③スタイルコンポーネント
様々な音響スタイルを組み合わせて使う。一定のリズムを持たせることもスタイルづくりの良い例。

1-7. 音楽資産

音楽資産は、①ジングル、②ポピュラーソング、③BGM、という3つの基本的な形態がある。

①ジングル
ブランドを表現した菓子を持つオリジナルの音楽素材。音楽を使って記憶力を高め、そこにブランド名を織り込むことで、相乗効果が生まれる。
②ポピュラーソング
人気のある楽曲をブランディングの手段として利用する。メンタルコンペティションにさらされるリスクはある。長期的視点で利用する楽曲を決める必要がある。
③BGM
ジングルやポピュラーソングと比較して、BGMはブランドとのリンクが有意に低い。しかし、時間をかけて培われて潜在意識に浸透させることができる。

以上で紹介したブランド資産の種類の中から、所有すべきブランド資産の数を決定するときは以下2つの要因をもとに考える。

①メディアと流通チャネルの多様性
ブランドを宣伝し販売するチャネルの数が多いほど、それぞれの環境で最適なブランディングを達成するために必要なブランド資産の数も多くなる
②マスメディアを利用した広告にかける費用
この投資額が低いほど、価値のあるブランド資産に絞ることが重要

2. 独自のブランド資産の測定

独自のブランド資産の測定を開始することが重要なタイミングは、①独自のブランド資産に変更を加えるとき、②ブランドが変化するとき、③会社が変化するとき、の3つに分類できる。

①独自のブランド資産に変更を加えるとき
・資産構築活動の成果を評価するとき
・既存のブランドアイデンティティに大幅な変更を行うとき

②ブランドが変化するとき
・ブランドポートフォリオを拡大するとき
・ブランドを新しいカテゴリーに拡張するとき
・ブランドを新しい国に拡張するとき

③会社が変化するとき
・ブランドを買収するとき
・他企業と合併するとき

3. 知名度

独自のブランド資産の重要指標である知名度とは、「どれほど多くのカテゴリーバイヤーがブランド資産要素をブランド名に関連付けられているか」である。

測定方法は、ブランド資産をきっかけにしてブランド名を純粋想起させるやり方が好ましい。

スコアが高い領域と低い領域を特定するためにセグメント間の差を分析するのが典型的な市場調査の方法だが、セグメント間の差は成功よりも成績不振を反映することが多い。

年齢間の知名度スコアに差が出た場合は、以下のパターンがある。

・ブランド資産の無視
カテゴリー購買客の年齢が上がるとともに知名度スコアが上がるときに観察される。このブランド資産は、最近使われていない場合か、最近のキャンペーンに問題がある
・若年層に依存しすぎるブランド資産
カテゴリー購買客の年齢が上がるにつれて知名度スコアが低下するときに観察される。このブランド資産は、若年層の購買客に過剰な比重を置いたメディアをプランしたため高齢層に訴求できていない
・ショッパー資産
25歳から50歳の女性において知名度スコアが高いときに観察される。このブランド資産は、家庭用品の購買客層を対象にメディアを投資したため、カテゴリー内の全購買客に訴求できていない

男女間の知名度スコアに差が出た場合
広告クリエイティブやメディアプランで、男女間に過度な比重を置くことで発生している。

ブランド経験による知名度スコアに差が出た場合
広告を出稿してもブランド資産の知名度がノンユーザーの間で低ければ、その原因として、広告のプロミネンスか、アンカーとしての機能に問題があると考えられる。

4. 独自性

独自のブランド資産の重要指標である独自性とは、「競合ブランドの資産よりも自社ブランドの資産への反応がどれほど大きいか」であり、0% (リンクが全く存在しない)から100% (そのブランドだけが、ブランドリンクを持つすべてのカテゴリー購買客との間にリンクを構築している)の範囲を取る。仮に自社ブランド資産への反応が50、競合ブランド資産への反応が20だとしたら、50 / (50+20)で独自性は71%となる。

独自性が低いとき、以下2つのメンタルコンペティションが存在する。

①脳争奪戦型メンタルコンペティション
カテゴリー購買客が資産とリンクするブランドを1つだけしか持たない場合。競合ブランドよりも先に購買客の脳争奪戦を行い、競合ブランドがそのブランド資産を育成することをあきらめさせたい
②首位攻防戦型メンタルコンペティション
ブランド資産に触れることで、1人のカテゴリー購買客が複数のブランドとリンクを持つ状況。競合ブランドよりも新鮮な記憶を購買客に与えたい

独自性を高めるためには、以下2つの特徴に注目することが重要。

①ブランド資産のリンクが存在していない、空白の脳がどれだけ存在するか
その人が多いほど、ブランド資産を再生できる可能性が高まる
②競合構造を知る
競合他社がすでにそのブランド資産に大きく進出している場合は、代替の資産を優先させることが賢明

5. 独自のブランド資産管理システム

独自のブランド資産管理システムを構築するためには、以下5段階の手順を踏む必要がある。

5-1. ベンチマーキング

現在のどの資産が、今後さらに使用するための、あるいはさらに開発を進めるための潜在力を有しているかを判断するために行う。

①資産の候補を把握する
まず初めに、ベンチマーク調査でテストに掛ける資産候補を特定する。この段階では、データ収集が可能である限り、資産候補は多く選びすぎるくらいでちょうどよい。

②競合ブランドを把握する
次に、競合ブランドの潜在的資産を探索し、それをベンチマーク調査に反映させる。

・競合ブランドが多くの強い資産を持っている場合
独自のブランド資産は競争力を維持するために絶対に必要な要因であり、投資が早急に必要である
・競合ブランドが強いブランド資産を持っている領域
混乱や誤判断を招く可能性が高いので避けるべき

③定量的測定
最後に、以上のブランド資産の相対的強度を数値化し、独自のブランド資産グリッドを使って、各資産の将来的可能性をプロットする

5-2. 優先順位を決めて不要な候補を外す

第2段階は、①優先順位を決める、②一貫性に欠ける候補を外す、の2つのステップがある。

①優先順位を決める
この段階でクリエイティブ担当やメディア担当に参加してもらい、潜在的ブランド資産が生み出すクリエイティブ面の可能性について、意見をもらう。メンタル/フィジカルアベイラビリティに影響を与える可能性が最も高いブランド資産を特定する。同時に、競合ブランドが強い分野は避ける。このとき、投資の可能性のあるブランド資産を複数所有するよりも、知名度も独自性も100%の1つのブランド資産を所有する方が良いことに留意しておく。

②一貫性に欠ける候補を外す
デジタル素材、店舗、社内外のすべての資料などを広く見渡すことを忘れてはいけない。

5-3. エグゼキューション

第3段階は、①過去の一貫性の欠如を修正して再利用する、②新しいエグゼキューション機会を探す、からなる。

①過去の一貫性の欠如を修正して再利用する
まず初めに、第2段階で特定された一貫性の欠如を資産形成の目的に沿ったものに修正する。

②新しいエグゼキューション機会を探す
次に、優先度が高いと判断した独自のブランド資産を活用できる新しい機会を特定する。以下3つは、コミュニケーションの各部分を見直すときに役立つ。

・プレゼンス
現在どのブランド資産を使っているか?もしブランド資産を使っていなければ、これから導入することは可能か?
・プロミネンス
ブランド資産はブランドコミュニケーションの中で際立っているか?プロミネンスを改善するために何かできることはないか?
・共同提示
ブランド資産とブランド名の距離は近いか?視聴者はその資産に触れたとき直ちにブランドを体験できるか?

また、クリエイティブワークがすべてのカテゴリー購買客に訴求する作りになっているかを確認することも重要。

5-4. フィードバックとモニタリング

この段階は独自のブランド資産の構築活動を開始した直後から始まる。

①フィードバックを得る
通常、全く新しい資産構築活動を展開するためには最低でも6か月は必要。ベンチマーキングから12か月後にフォローアップを行えば、十分な時間を確保することができる。

②競合ブランドをモニタリングする
競合ブランドの活動をモニターして、そのブランド資産のプロミネンスが変化していないか、他社のブランド資産を模倣していないか、新しいブランド資産を導入していないかなどを確認する。

5-5. ブランドを守りながら進化する

ブランド資産を守りつつも、変化しなければならない時期が来たら、レボリューションではなくエボリューションを考える。

最後に、独自のブランド資産構築活動を軌道に乗せるために必要な4つの原則を記す。

①賢明な選択
・そのブランド資産は、他の資産にはまねのできないものをもたらすことができるか?
・そのブランド資産を構築した後も、既存の資産を守るための十分なリソースは残るか?
②正しい優先順位付け
強固な独自のブランド資産を1つ構築することが、その次の独自のブランド資産を構築する際のアンカーになる
③質の高いエグゼキューション
注目を集めることに加えて、ブランドとアンカリングされていなければならない
④変化のための変化を避ける
一貫性を維持することは重要

以上です。長い文章にお付き合いいただきありがとうございました。
本日紹介した書籍は以下のリンクにまとめてあるのでぜひチェックしてみてください。また次回!


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