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#4 波瀾万丈…西日本緊急周遊記

#3 のつづき)

得意競技は徒歩です(Day1 / 朝~昼)

警察に思わぬ形で起こされた私は、野菜ジュースを片手に北を目指して歩いていた。この日の空は前日の雪が嘘のような晴模様で、おまけに「徒歩」は運動全般を苦手とする私の唯一自信が持てる種目であったため、長距離の歩行は全く苦ではなかった。前述したとおり、明日、取材対象者の両親への挨拶と彼らの経営するお店でお土産の購入をするためそんなに遠くへ行くことはできない。いろいろと考えた末、7キロほど離れたJRの駅まで歩き、その後列車で春日井という街へ向かうことにした。調べたところ、春日井には24時間営業のネットカフェがあるようだった。

7キロの道のりは大通りに沿って進むだけのはずだった…のに、あれれ??山道に入ると同時に歩道はどんどん狭くなり途中で遂になくなってしまった。私のすぐ横をダンプカーがビュンビュンと通りすぎ、怖いったらありゃしない。おまけに山道と言っても自然豊かで素敵な道ではなく、不法投棄のゴミが散乱した見るに堪えない悲惨な山道であった。私は感情を無にして歩き続けた。

しばらく歩くと集落が現れ、向こうにコンビニが見えてきた。9時頃、こうして私は久しぶりのまともな食事にありつくことができた(山菜おこわおにぎり108円)。コンビニのイートインにしばらく滞在し、切れかけていたスマホの充電をフルにすると、再び駅に向けて出発した。スマホを開くと、昨晩のトラブルのせいで精神に異常をきたしてしまった取材対象者の彼から尋常ではない内容のLINEが80件以上届いていた。おそらく彼とは全く別の人格になってしまっているようなので、いったん放置。ここで下手に返信をしても彼(の中にいる複数の別人格)を刺激してしまうだけなのは明らかだからである。

Can you speak English?(Day1 / 昼~夜)

更に汚い山道を歩くと、ようやくJRの駅に着いた。駅ナカの薬局で昼食(パン2個211円)を購入、ベンチに腰掛けて昼食を摂り、切符売り場へ向かった。すると、アジア系の青年が声をかけてきた。「わたし、日本語わからない。ここへ行きたい」そう言って見せてきたスマホの画面に映っていたのは愛知県内のとある駅名だった。

(いやいやいや俺東京の人間なんだけどおお…周りにいっぱい人間いるのになんで俺に聞くのさ??)

とも思ったが、心優しい私は断り切れず、彼の見せてきた駅名を路線図で探しながら英語で話しかけてみた。

「Where are you from?」

青年はきょとんとした顔をしている。

「わたし、日本語わからない」

(いやいやいや英語だよ)
「Can you speak English?」

やはりきょとんとした顔で黙っている。

(おい、こいつマジかよ英語も喋れねえのかよ、大丈夫か?日本で生きてけんのか?)

俺は適当な国名を何個か言った。
「タイランド?ベトナム?」

どうやら彼はベトナム人らしい。駅名から推測するに工場で働く技能実習生かもしれない。なんとか券売機で切符を購入できた彼は、片言の日本語で「ありがとうございます」と礼を言って改札の奥へと消えていった。

(あいつ大丈夫かな?)

どうせ暇だった私は、自分用の切符も買うとこっそり彼を尾行してホームで彼の行動を見ていた。どうやら彼は母国語で誰かと電話をしているようだった。しばらくするとホームに列車が入ってきて、私の心配を他所に正しい列車に乗って私の前から消えてしまった。

(なんで正しい列車がどれかはわかるんだよ、ますますわけがわかんねえな)

もしや?と思った私は念のためカバンの中の財布を確認したが、これも杞憂だった。ただの切符の買い方だけわからないベトナム人だったわけである。

途中で適当に時間をつぶしていたので、列車に乗って春日井駅に着いたのは夕方くらいだったと思う。ただ、すぐにネットカフェに入ってしまっては無駄に値段が高くなってしまう。限界まで市内で時間をつぶそう。

読者各位は街中で時間をつぶす必要が生じたとき、一体どこへ行くだろうか?カフェ?ファミレス?池袋や新宿などの大きな街ならヨドバシなどの家電屋や大型書店もあるだろうが、ここは春日井である。そんなものはない。カフェやファミレスはあるだろうが、お金を払う必要があるので極力避けたかった。
地方にも必ず存在しお金を使わずに居座れる場所、それは他でもない「図書館」である。

たかが春日井、されど春日井だ。図書館くらいあるだろう。Googleマップで調べてみたところ、予想以上に立派な見た目をした図書館がヒットした。しかも21時までやっているとは上出来だ。早速、図書館のある方角へと向かった。

世にも立派な春日井市立図書館(画像:ホームページより引用)

図書館のある建物に入ると、私は喜びのあまり声を出しそうになった。併設カフェで売っていたお弁当がまさかの半額で売られていたのである。健康的なお弁当が280円で手に入るなんて!買うしかない!私がお弁当を購入して店を出ると、ちょうど閉店時間だったようで、店主が「close」と書いた看板を表に出しているのが見えた。ついてるな…。私はお弁当の袋を持つと、図書館に入り、雑誌や本を読んで夜まで時間をつぶした。

図書館の閉館とともに外へ出るとあたりはすっかり暗くなっていた。LINEで事情を話した友人と通話をしながら、スギ薬局で万が一に備えて大福5個入り(170円)を購入すると、3キロほど先にある国道沿いのネットカフェへと歩いた。通話途中でバッテリーが落ちてしまい、自分がどこにいるのかわからなくなった。途中、消防署から救急車が出動していく様子が見えた。なぜか心細い気持ちになった。それでもなんとか国道沿いに歩き続けるとネットカフェにたどり着いた。弁当を食べ、飲み放題食べ放題のドリンクバーを飲んでアイスを食べた。無料のシャワーも浴びた。もちろん明日は警察に起こされる心配はない。個室ではないので隣近所の利用者の物音が気になるのが玉に傷だが、つかれた体を休ませるには申し分ない場所に感じた。

長い長い2月23日が終わった。

【2月23日】
・行程:愛知県某市- JR某駅-(JR線)-春日井駅-春日井市立図書館-快活クラブ春日井インター店
・出費:夜食(103円)、朝ドリンク(110円)、朝食(108円)、昼食(211円)、夕食(280円)、非常食(170円)=食費計982円
コインランドリー(100円)、交通費(190円)+食費=合計1272円

#5 につづく)

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