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お金持ちにいかに高く買ってもらうか

今さら言うまでもないが、日本は少子高齢化社会の中、人口減少を続けている。

アメリカほど貧困の差は広がっていないけれども、中間層が貧しくなっていることは意識を向けなければならない課題である。

現代の日本で薄利による大量の販売を目指すことや中間層をターゲットにしたサービスの拡充は、ますます難しくなっていくだろう。

価格やサービスに幅を持たせようと思ったところで、“平等”とやらを好む日本人は差別的な取り扱いを受けることを極端に嫌い、高付加価値なものは何かと叩かれがちだ。

お笑い芸人、キングコングの西野亮廣氏が“VIP戦略”のない事例の問題について、気になる解説を行っていたので、まずはこちらをご紹介したい。

一部の金持ちが貧乏人の分まで費用を負担してくれているという事実

飛行機にはぼくら庶民が使うエコノミークラスから、VIPたちが乗るファーストクラスまで金額に差がつけられ、受けられるサービスや食べられる食事などに明白な違いを持っている。

西野氏は、飛行機が飛ぶために必要なこの金額を調べてみたのだという。

対象はボーイング777で、東京〜ニューヨーク間の片道運賃。

座席はエコノミークラス147席、プレミアムエコノミー40席、ビジネスクラス49席、ファーストクラス8席に分けられており、全部で244席ある。

それぞれの座席の金額は以下の通り。

 ・エコノミークラス     209,500円
 ・プレミアムエコノミー   386,000円
 ・ビジネスクラス      765,000円
 ・ファーストクラス      1,724,000円

あくまでも片道の料金なので、ファーストクラスなら往復で約350万円と、車も買えてしまうほどの金額になる。

すべての席が売れたとすると、合計で97,513,500円だ。

飛行機で東京〜ニューヨーク間を片道飛ばせば、およそ1億円弱の売り上げになり、言い換えるなら約1億円ないと飛行機は飛ばせないということ。

これを差別のないサービスでやるなら、もし全てをエコノミークラスだけにしたならどうなるだろうか。

ファーストクラスやビジネスクラスといった広い座席を廃止してエコノミークラスに置き換えるので、当然、座席数を増やすことができる。

244席あったものが351席へと大きく増える計算だ。

しかし、プラス100人で約1億円を用意できるにも関わらず、351人が従来通り209,500円の支払いを行なっても73,534,500円にしかならない。

2,400万円もの不足が出るのである。

この不足額は351人であらためて負担する必要があり、一人当たりなら68,316円の上乗せに。

均一なサービスを作るのは、お金のない人にお金を払わせようという日本のダメなところで、VIPに多く負担を求めるのは税金のような仕組みなのだ。

ーーと、西野氏が主張するVIP戦略の必要性はこんな根拠で成り立っている。

価格が決まるのは、需要と供給が釣り合うから

以前、安易な『安売り競争には参加するな』とお伝えした。

それは値段を決めるのが消費者の側だからである。

出典:日本経済新聞「値段はどう決まる? 原材料から始まる需給の攻防」
(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64654370W0A001C2I00000/)

上のグラフの需要曲線は、サービスを買う側(消費者側)から見たものだ。

価格が高ければ買う人が少なく、需要が少ない状況にあるが、縦軸であるサービスの価格が下がれば買う人が徐々に増えていくという右下がりの曲線を描いている。

一方の供給曲線は、サービスを作っている側(生産者側)から見たもので、価格が低いと儲からないから作りたがらないが、高くなってくると多くの生産者が作って供給量が増えるという右上がりの曲線を描く。

「需要と供給のバランスによってモノの値段が決まる」とは、需要曲線と供給曲線が交わる点に価格が落ち着くことを指しており、外的要因などで生産量が上下した際の供給曲線の推移と価格の決定については、図内のイメージにてご確認いただければと思う。

安売り競争に参加するのは需要曲線上で右下を目指すということで、自ら『豊作の場合』の状況を作り出しているに過ぎない。

さて、冒頭でも触れたが、今後の日本において大量のモノを売る“薄利多売”が可能かと言うとーー人口が減っていく以上は不可能だ。

ならば反対に、左上を目指してやれば良い。

サービスの値段を決められる立場になれ

生産者側から見た場合、本来であれば価格が上がるほど生産したいと考える量は増えるはずである。

しかしそれでは他の似たようなサービスと比較した消費者に、「この機能があるから高い」「この便利さがないから安い」などと値踏みされ、消費者主導のもとで価格が決められてしまう。

そこで、あえて世の中に出回る数の少ない“希少性”を目指す。

価格は高くたって構わないし、「高い」と不満を口にするのは、決まってそのサービスを購入しない人たちなのだから気にする必要はない。

事実、その価格で買っている人がいる(需要がある)にも関わらずそんな指摘をするなんて、ここまで読んでいただいた読者なら、いかに愚かな主張なのかお分かりいただけるだろう。

高い価格のサービスがあるからこそ不満を言う人々にも安く提供できるのだし、需要と供給のバランスが取れているから価格として成立しているのである。

サービスの値段と市場に出回る数量をコントロールできる立場になれば、自らの首を絞める安売り競争に参加する必要も、消費者に値踏みされ価格を決めさせられる必要もなくなる。

“お金持ちに高く買ってもらう”ことには、そんな魅力で溢れている。


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