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徒然なる地球温暖化 No.2:電気自動車が普及するとどうなるか?

世界の雰囲気を何となく後追いする日本…

多少陰りは見えますが、EVへの政策転向は世界的流れとして変わらなさそうです。EVの導入を促進するため各国がガソリン車の販売禁止を打ち出しています(最近は、トーンダウンして先送りする国もチラホラ出てきました)。

 2025年:ノルウェ-
 2030年:アイルランド、スウェーデン、オランダ、ドイツ、イギリス
 2035年:日本
 2040年:スペイン、フランス

本当にできるの⁉

 現状の各国のEV販売割合を見てみると、各国ともに急速に伸びています。
ノルウェーは来年にはガソリン車販売を禁止すると言っていますが、実際にノルウェーで売られている車の8割はEVで、ガソリン車は2割しか売られていないそうです。
 購入補助金も出して、EVは有料道路や駐車場代をサービスしたりして、かなりの優遇策がとられています。

EV販売割合の推移

日本はPHVを入れても4%程度しかない!

 日本は2035年にガソリン車をやめようと言っていますが、プラグインハイブリッドはOKですので、車からのCO2排出を完全に無くしたいわけではないようです。
 そもそも電力源の大半が化石燃料ですので、ガソリン車をEVに置き換えてもCO2排出量が多少減るという程度の効果しかない・・・。
 とは言え、日本の発電事情とは無関係に世界は変わり続け、日本の自動車メーカーに対するおいてけぼり感が半端ないのも事実です。日本の自動車産業の顧客は日本人ではなくヨーロッパやアジアだったりするので、国外でEVの方が売れるならEVを作るしかない。
 火力発電所が減るまで、国内でEVを導入するメリットはあまりないのに海外出るためのEVを作らないとジリ貧になるという悲しい状態です。しかも、EV用バッテリー材料は中国に握られていて、資源のない日本はスキマを探すしかない・・・。かなり辛い状態といえます。

日本でEVが普及する日が来るのか?

日本は既に、
EVが増えない→高圧急速充電器に投資が進まず普及が遅く、充電スタンドもほとんど増えない→充電時間などで不便なのでEVを買わない→EVが増えない

という、負のスパイラルにはまっています(この基底には中流家庭が減った、若者が安い給料で車を買って維持するメリットを感じられないなど、社会環境の変化もあるでしょう)。
 2035年まであと10年足らずとなり、車の買い換え時期に来ている人は、なんとなく次はEVか?と思ってるかもしれません。
 しかし、ドライブに出かけても充電もろくにできない状態では誰もEVを買わないでしょう。

充電スタンドの整備状況

 しばらくは、ガソリン車かPHVで様子見ようというのが普通の感覚です。
2035年になったら新車のガソリン車販売はないけれど、中古のガソリン車は買えるので、ちょっといい中古車を探そうということになります。
 2030年頃からは、ガソリン中古車の値段が乱高下するでしょう。お手持ちのガソリン車は趣味の人向けに、高値で売れる可能性もあります。

 負のスパイラルを反転させるためには、充電スタンドを増やすとか小手先のやり方ではなく、「補助金抜きでEVをガソリン車より安くする」、の一択しかありません。

 購入補助金を全国民に配分できるほど日本は裕福な国ではないですし、普通の人は環境よりも自分の財布の方が大事ですから、お上がEVを増やしたいために2035年にガソリン車販売を禁止しても、EVの車体価格、燃料代、メンテナンス代を含めた費用が、ガソリン車に比べてお値打ちになるまでは、なかなか普及しないでしょう。

 中国製EVには既にガソリン車より安いものもありますが、日本メーカーはガソリン車と同じ価格帯でEVを作って販売することができるでしょうか?
 うかうかしていると中国製EVを並行輸入して売る人が増え、いつの間にか街中に中国製EVが溢れかえっているということになりかねません。

 EVに先立ってE-バイクが既にそういう状態になってきました。電動バイクは電動自転車との境が曖昧で、多数の中国製E-バイクが電動自転車のカテゴリーで取引されています(しかも、結構格好いいデザインのものが多い)。
 E-バイクは先例ですが、バッテリーがヘタってきた時に交換できるのか?リサイクルされるのか?と言った全体保証で日本メーカーの信頼は厚いですから、多少高くても日本製を選ぶようにしましょう!

負けるなホンダ!負けるなヤマハ!

 EVについては、全固体電池を開発して巻き返すのだ!とか様々なニュースが散見されますが、これから車を買い替えようとしているのに、現時点で日本製EVの選択肢がほとんどないという事実が全てを物語っています。
 日産サクラとか、欲しいなぁと思いますが、値段を見たら、まだ先だな…と思い留まります。

 そのような状況下で、BYDなど世界実績のある中国製EVメーカーが、ガソリン車と同等の販売額で小型EVを日本市場に投入してきたら買う人も少なくないでしょう。
 日本社会では永らく経済が低迷し、多くの人が収入が上がらずもがいています。そんな状態で何年も「トヨタ最高益をまた更新!」といった独り勝ちニュースを聞かされてきましたので、ざまあ見ろトヨタ!という妬み気分で中国製EVを選ぶ人もいるでしょう。

日本でEVが普及したらどうなるのか?

 日本ではEVが普及しきるまでには今後10~20年かかるでしょう。徐々にガソリン車からEVに入れ替わる過程で、これを機会に自宅にソーラーパネルを付けようという人も増えるでしょうし、アパート・マンションや契約駐車場は充電スタンドが付いてないと契約が取れなくなるでしょう。

 街のガソリンスタンドも減り、充電スタンド付きのコンビニ、マンガ喫茶などに置き換わっていくでしょう。
 また高齢化が進み、若者のシェア文化がさらに広がって、わざわざ高い自家用EVを保有しないという選択肢も普通になってくると予想されます。

 EVは必要なときにEVステーションでサブスクするものという常識になると、遠出や旅行をするときも充電が無くなってきたらEVステーションで充電済みのEVに乗り換えて移動ができますので、途中途中で何十分も充電に時間を取られることがなくなります。

 レンタカー会社は既に乗り捨てネットワークを形成していますので、EVサブスクサービスへの親和性が高く、ガソリンスタンド跡地や地域公民館の空きスペース、駅前のタクシー乗り場などのほか、全国で急増している町中の空き家のスペースに、細かいサブスクEVネットワークを広げることで、移動する全ての人間を収益化できるビジネスチャンスがあります。

 また、大規模なEVステーションは「道の駅」の役割も担って様々な商業施設も兼ねた小地域の地場経済のハブになる可能性があります。
 2035年頃には自動運転技術がより進んでいるでしょうから、利用者の多い駅前やショッピングモールなどのEVステーションに使用されたEVが自動回帰するようになると、自家用車を持つ人は更に減っていくでしょう。

EV用の電力はどれくらい必要になるのか?

 EVはCO2 排出量を減らしたいために各国が導入しているので、それに必要な電力を得るために、CO2を出す石炭火力発電所や天然ガス火力発電所を作っていたら意味がありません。
 EVのために新たに必要になる電力は、CO2を出さない原子力や太陽光、風力発電などで得る必要があります。
 特に太陽光、風力発電では、発電量が不安定で足りないことがありますが、逆に発電しすぎてその余剰電力を使わずに捨てている時もあります。それをEVの充電池で吸収することが大事です。
 EVは徐々に(あるいは遅々と)増えていくので、自然エネルギーの余剰電力をEVステーションに供給して、EV自体を蓄電池として使うという産業構造をゆっくり作り上げる必要があります。

 少し古いですが統計資料で、日本の乗用車・貨物車の年間走行距離総計はおおよそ5,000億kmというデータがあります(https://www.nikkoken.or.jp/pdf/publication/2014j/2014j_80.pdf)。
 また、他の資料では12,000億kmというデータもありますので統計の仕方によって幅があるようですが、ここでは5,000億kmというデータをもとに考えます。
 年間走行距離総計5,000億kmを電費8km/kWhのEVで走らせた場合、約6万GWhの電力が新たに必要になります。
 年間6万GWhの電力を、新たに原子力や太陽光や風力発電で作れるのでしょうか?
 そもそも、日本で化石燃料以外で作れる電力ってどれくらいでしょうか?

また 次回。

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