m.miyaoku

定年退職者です。誰もが、一度は素朴な疑問として思ったこと、感じたことを大切にし、自分な…

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定年退職者です。誰もが、一度は素朴な疑問として思ったこと、感じたことを大切にし、自分なりに考えて、エッセイや自己流の詩などを投稿します。

最近の記事

映画の感想 「シモーヌ」を観て

1 映画のテーマ  この映画のテーマは、主人公シモーヌが彼女の生涯を通じて取り組んだ人権問題であると思う。  映画は冒頭に、1974年のフランスの国会の様子が現れる。フランスは大部分がカトリック教徒であり、しかも男性ばかりの国会において、シモーヌは「人工妊娠中絶」の合法化のために次のように向けて訴えた。「喜んで中絶する女性はいません。中絶が悲劇だと確信するには、女性に聞けば十分です」この場面から、主人公のシモーヌが女性の諸権利獲得のため奮闘する姿がテーマであるのだろうかと一

    • 随筆: 寝ない子はどうなる?

       今年も、冬になると「火の用心」を知らせる消防署の車が我が家の近くにやって来た。この「火の用心」を知らせる声が聞こえてくると、二年前までは、我が家では電気を全部消して寝ることにしていた。なぜなら、この車のことを「寝ない子がいたら」という「人さらいの車」ということで、通してきたからである。  娘は私に似て、乳児の時から寝つきが悪かった。娘が生まれたときは、仕事が終わって毎日病院に行くと、大きな声で一人どこかの赤ちゃんが泣いていた。どこの子どもが泣いているのかと思うと、なんとそ

      • 随筆: 番犬の大五郎

          番犬の大五郎  「大五郎、これから買い物に行ってくるよ」と言いながら、イヌの頭をなでた。大五郎はじっと前を向いて、微動だにせず今日もきちんと門番をしている。  実を言うと、番犬と言っても大五郎は本物のイヌではない。座った状態で高さ七五センチ程度の大きさで、実物大の黒い色をしたラブラドールという種類のイヌの置物である。八年ほど前から玄関の前で門番をしている。しかし、名前を付けてからまだ一年も経っていない。  大五郎との出会いは、もう十年以上も前のことである。当時私は

        • 映画の感想: 「I can speak」を観て

          1 映画のテーマ  この映画のテーマは韓国における慰安婦問題である。慰安婦問題を扱った映画としては、日系アメリカ人ミキ・デザキが製作し大変話題になったドキュメンタリー映画「主戦場」(2019年公開)が思い浮かぶ。  今回観た「I can speak」はドラマであり、ネットの百科事典『ウィキペディア』によれば、原作は「日本軍慰安婦被害者シナリオ公募展」1位選作とのことである。そして、2007年にアメリカ合衆国下院121号決議採択前、公聴会で李容洙(イ・ヨンス)さんが証言した

        映画の感想 「シモーヌ」を観て

          読書感想:  田坂広志『教養を磨く』を読んで

          1 初めに  田坂広志 『教養を磨く』を読んで感銘を受けました。この本は今後大量の失業者を引き起こすと言われる「AIの時代」をいかに生きていくか、そのヒントを与えてくれると思いました。  この本は様々なテーマを扱っています。紹介したい点はたくさんあるのですが、その中で大変印象に残った2点を取り上げます。 2 「知能」と「知性」の違い  著書の中では「知能」と「知性」の違いについて述べてあります。「知能」とは「答えのある問い」に対して、いち早く正解に辿り着く能力こと、「知

          読書感想:  田坂広志『教養を磨く』を読んで

          随筆:病院の壁に展示された「詩」

          私が数か月に1回程度通う病院の待合室に、 写真に載せた「詩」が展示してある。 この詩は坂村真民氏の作品である。 引用すると   二度とない人生だから   一輪の花にも   無限の愛をそそいでゆこう   一羽の鳥の声にも   無心の耳をかたむけてゆこう 多くの病院の待合室には、日ごろ健康に注意するように 様々なポスターが貼ってある。 糖尿病の予防、高血圧の予防、感染症の予防 などなど、ポスターに加え、ビラやパンフレットまで 置いてある。 しかし、そんなポスターよ

          随筆:病院の壁に展示された「詩」

          随筆: 詐欺電話がかかったことはありますか?

           詐欺電話がかかったことはあるでしょうか。私は本当に詐欺にかかるところでした。  「市役所の健康福祉課の者ですが」 昨年の暮れのある日のこと、見知らぬ番号から「市役所の健康福祉課の者ですが。」と電話がかかって来た。 「高額医療費の補助の申請をまだされていないようです。申請期間が過ぎない内にしてください。」  そう言えば、その前の年、病気をして2回にわたり合計1月近く入院したことがあった。その時はしばらくして高額医療補助の申請をして補助を受けた。さらに、入院はしなかったものの

          随筆: 詐欺電話がかかったことはありますか?

          映画の感想:「Lost King」を観て 

          映画「Lost King」を観ました。感想を述べてみます。 1.      リチャード3世  歴史上の人物はしばしば伝説がつきまとう。さらに、その人物は有名な作家などによって描かれれば、それはまるで人々の間では揺るぎない事実であったかのように信じられる傾向がある。この一つの例が映画「Lost King」で描かれたリチャード 3世であると思われる。  リチャード3世と言えば、イギリス人はもちろんシェークスピアの作品を知っている人が、すぐに思い出すのが「リチャード3世」とい

          映画の感想:「Lost King」を観て 

          映画の感想: Paris Taxi を観て

             1 第一印象  この映画を観て最初に思ったことは、90分という映画としては比較的短いにも拘わらず、92歳の女性マドレーヌの一生を、上手に描きまとめている点であった。 2 簡単な内容紹介  ある日パリの中年タクシー運転手のシャルルは、高齢者のための施設に入るこの女性を、ちょうど街の反対側まで送り届けることになった。20Km程度の道のりで、まともに行けば1時間もかからないはずであった。ところが、マドレーヌの希望により思い出の場所を次々と訪れることになった。その道すが

          映画の感想: Paris Taxi を観て

          独り言:「物価上昇分の年金増額を!」―主張していいかな?―

          「物価上昇分の年金の増額」、これをしてくれないかな?でも、これを大きな声で主張してもいいかな? 「物価上昇分の年金の増額を!」こんな要求を掲げてデモをしている老人を、少なくともTVニュースで見たことは無い。  もし、署名を求められたら、年金受給者の私はすぐに署名します。しかし、デモの参加を求められたら、私は迷います。「ひんしゅくを買うのではないだろうか」と心配するからです。  現役世代のこころ優しい人は、「近年物価も上がっているし、物価上昇分ぐらい上げて上げてもいいので

          独り言:「物価上昇分の年金増額を!」―主張していいかな?―

          随筆: 定年退職者は時間を持て余しているのか?ー私の場合ー

          定年退職後、よく分かったこと 1 お金の価値がよく分かる 定年退職前、退職予定者の研修会で次のように言われた。 「お金の価値が本当によく分かりますよ。」つまり、今まで 何気なく使っていた千円が、三千円、時には五千円ぐらいの 感じになるとのことだった。これはすぐに実感することとなった。 何気なく使っていた千円ぐらいの買い物も、本当に自分にとって必要かどうか考えるようになった。 定年退職してもすぐには年金はもらえなかった。退職金を切り崩して生活するしかない。幸いなことに、し

          随筆: 定年退職者は時間を持て余しているのか?ー私の場合ー

          自由詩: 無言の里帰り ー変わり果てた姿でー

          快晴で少し汗ばむ五月下旬の昼前 厚く重い石の扉がそっと開かれた 二十数年ぶりに 空洞の奥深くまで光が差し込み 二つの白く丸いものが光った 父と母の壺である ゆっくりと義兄が白い壺を中に入れると 扉は再び堅く閉じられ  姉は深い闇の中へと消えて行った まだまだ寒い二月上旬の昼過ぎ  けたたましく叫ぶように 大声をたてて電話が鳴った 遠くに住む息子の自宅で 姉が急に倒れたのだった 昨年十月 久しぶりに会った時は元気だったのに タクシーを降り ひんやりとした明るい部屋に入った

          自由詩: 無言の里帰り ー変わり果てた姿でー

          自由詩: 黒ネコの昼寝

          ある日の午後 車を駐車場から出そうとした 車の少し前に 黒いネコが気持ちよさそうに寝ていた どうしようかな ゆっくりと車を近づけた 黒ネコは気が付かないふりをしていた 起きてくれないかな 軽くクラクションを鳴らした 眠そうにうっすらと目を開けた 早くそこをどいてくれないかな 知らん顔をして また目を閉じて眠り始めた 少し大きめにクラクションを鳴らした 目を開けると、少しにらみながらこちらを見た うるいさいわね 見たらわかるでしょ 私は昼寝をしているのよ そんなこと分か

          自由詩: 黒ネコの昼寝

          自由詩: 君の名は?

          君の名はなんと言うんだい? 庭の隅にひっそりと咲く小さな花 ピンクや白色の六枚のはなびら はなびらの中央には 濃いピンクの模様 葉は細長い 種や球根を植えた覚えはない 数年前から 五月になると咲き始める ひょっとしてランの仲間だろうか 君の名前は何と言うんだい? そんなこと知りませんよ あるとしても 人間が勝手に名前を付けただけでしょう 私の名前を知って いったい私の何が分かるのですか それで私をどうするのですか そんなに私が気になるなら きちんと育ててよ

          自由詩: 君の名は?

          映画の感想: 「怪物」を観て 

          映画「怪物」を観ました。簡単に基本情報を紹介した後で、私の感想を述べてみます。 1 基本情報   監督:監督:是枝裕和   配役:安藤サクラ (シングルマザーの母親役)安藤サクラ      永山瑛太 (小学校教師役)      黒川想矢 (息子役)麦野湊      柊木陽太 (息子の友人)      その他     (以上は下記の参考資料からの引用です。) 2「怪物」とは何のことか?  「怪物」という映画の題名を聞くと、真っ先に思い浮かべるのはホラー映画ではないでしょ

          映画の感想: 「怪物」を観て 

          随筆: 悪夢、そして苦笑

          今朝も何度も見る同じような悪夢で目が覚めた。 ほっとして、そして、苦笑した。 もう定年退職をして10年になるというのに。 私の悪夢といえば、学校での勤務中に関することである。 その1 チャイムが鳴り始めたので、教室に行こうと急いで席をたった。 ところが廊下を歩き、つきあたりの階段を登ろうとすると 階段が見あたらなかった。 「あれ。階段が無い。どうしたのだろう。 これでは教室に行けない。」 困り果てているところで目がさめた。 その2 授業に行こうと席を立った瞬間、周りの雰囲

          随筆: 悪夢、そして苦笑