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かたちをうしなったせかいで、ふたたび‐『不可解弐Q1:RE』ライブレポ‐

2021年6月12日、13日の2日間に渡り、花譜2ndワンマンライブ『不可解弐 REBUILDING』Q1:REQ2:RE、そしてQ33公演が開催されました。

事前のクラウドファンディングで8260万円超を集め、過去最大のスケールで開催されたこのライブは、緊急事態宣言下の東京都、豊洲PITにおいて、ガイドラインに従いキャパシティが半減された有観客ライブとなりました。

リアル会場での開催は、直前で無観客開催となった2020年3月の『不可解(再)』以来、有観客としてはおよそ2年前の2019年8月の1stワンマンライブ『不可解』以来です。
ライブ開催に至るまでの「苦闘」はこちらに綴られています。

そしてこの3公演をもって、これまでに7つのワンマンライブが開催されたことになるのですが、セカンドとは一体。

今回もライブ前日から毎度恒例の「公式ファンアート」。YouTubeでは冒頭無料配信の直前に過去のライブのダイジェストが放映されていました。

また、Q3は全編が無料配信され、「不可解弐REBUILDING」及び「不可解弐Q3」のハッシュタグはTwitterトレンド1位を獲得。またしても大きな注目を集めたライブとなりました。

以下は、そんな『不可解弐REBUILDING』のうち、初日のQ1:REの感想です。

第一部

冒頭、前回のバーチャルライブ『不可解弐Q2』でも差し挟まれた実写ドラマのその先が描かれました。突如として一変してしまった、ままならない世界で、少しの勇気を振り絞ってライブ当日を迎えた2人の観測者。いつかどこかで、あったかもしれない物語。現実の私たちの日常と、このライブという特別な空間を見事に接続する役割を果たしていました。

いまここにいる、いるよ。
お決まりの「少女降臨」からの雛鳥黑衣装での一曲目、「不可解」からのライブの幕開け。「Re:HEROINES」、「畢生よ」と続きます。

会場にくっきりと存在する少女。“生身に戻られた”「花譜バンド」の面々の軽快なサウンド。見届ける観測者たち。およそ2年前の「あの時」とは変わってしまった世界に、私たちの『不可解』がふたたび戻ってきたという実感がこみ上げます。

AZKiちゃんをゲストに迎え歌う「未確認少女進行形」。デビュー時期が近く、「限界観測者」として花譜ちゃんにずっとラブコールを送ってきた彼女と、いよいよ念願の共演。花譜ちゃん本人より振り付けがガチなのは流石アイドル。

続いて、春猿火ちゃんとのラップで、ことばの密度とパワーの増す「命に嫌われている」。こうした「共演」という形はまさに、花譜という存在の「可能性の拡張」といえます。
ヰ世界情緒ちゃんとの「深淵」は、ゴスで耽美な映像演出によって引き出されるダークな世界に浸りました。

「痛みを」は、約3000万をCFで集め今夏リリース予定の『神椿市建設中。』テーマソング。「森先化歩」としての彼女の物語も気になるところです。

「メルの黄昏」、今回も五線譜のタイポグラフィが特徴的で、バンドのそれぞれのパート譜が演奏者に重なる表現にセンスを感じました。

「心臓と絡繰」GuianoさんのRemixで。ドラム、アコースティックギター、ピアノ……と主役が移り変わる旋律が心地よく、不思議と夏の祭囃子を感じます。曲の展開と花譜ちゃんのパフォーマンスに合わせて、パズルのピースのようにカッチリとはまった映像演出も見事でした。

“最後じゃないけど、最後の曲です!”と、他所ではおよそ聞くべくもない不思議な宣言。大沼パセリさんRemixで花譜のはじまりの歌である「糸」が溢れ出るリリックモーションに乗せて歌われると、ライブの幕が一旦閉じられました。

第二部

アンコールの手拍子の後、朗読劇「御伽噺」の言葉がこま切れにされた「御伽噺Remix」が挿入されると、会場の空気を引き締めていました。“パンあるけど。”

「青雀」姿に変身すると、後半戦のスタート。「彷徨い」、「アンサー」とバラードの二連続。美しいリリックと、美しい背景。繊細で消え入りそうな一方で伸びやかな、胸を締め付ける彼女の歌声。アーカイブを見直したら自分で「エモの臨界」とかいう謎のコメントを残していました。意味はよくわかりませんが、どうもこのあたりから限界になったみたいです。

“ここからさらに盛り上がっていきましょう!”と、カッコいいバンドメンバー紹介からの「危ノーマル」で一気にボルテージが高まります。続いて「モンタージュ」、暴れまわるバンドサウンドに力強い花譜ちゃんの歌声で熱量は“爆上がり”でした。

「隼」に変身したら、次に来るのは「戸惑いテレパシー」という定番の流れ。続いて花譜ちゃんがノリノリに揺れるダンスチューン「私論理」。最後の「ろんりぃ↑」がキュートでしたね。

給水タイムと「お水助かる拍手」。Pさん困惑。
“Google翻訳みたい”という自己評価な花譜ちゃんのMC。素朴な彼女らしさが溢れる素敵な時間だと私は思っています。

「花譜」という像について、“各々に組み替えられた私を見る度にその人のことが少し分かる気がして、それが嬉しいし、楽しいです。”という言葉がとても印象的でした。彼女は、私たち観測者を含め、自身に関わるいろんな人をよく見ているなと思います。

照明の落とされた暗闇で七色にきらめく特殊歌唱用形態「金糸雀」。続く曲のイントロでぴょんぴょんとジャンプするの何ですか。可愛い。

「過去を喰らう」、お決まりのように左右に激しく体を振ってリズムを刻む花譜ちゃん。そしてシームレスに「海に化ける」へ移行。過去を喰らった「その先」の物語の描かれた新曲でした。再び「過去を喰らう」のフレーズに回帰してきたときの衝撃が忘れられません。カンザキイオリ、やってくれました。

“空を泳いでいるあなた”が、“海になった僕”に反射している。決別したふたつの存在が、“分かり合える日がきっとくる”のでしょうか。

「まほう feat. 理芽」では、『ニューロマンス』以来のふたりの共演。「音楽は魔法」という不変のメッセージ。短い中にも尊い「姉妹」のやり取りがありました。

そしてライブの締め括り。制服姿の彼女が、素直な感情をのせた言葉のひとつひとつが胸に響きます。

“このライブを通して、皆さんに何か返すものができていたら。そしてそれを、受け取ってもらえたら、すごく嬉しいです。
花譜という形は曖昧で、不思議で。私だってよく分からないこともあるし。
でも、私が今歌っていることとか、あなたに話しかけている事、今感じているこの温度は紛れもない真実だと思いたいです。
私はいま、ここにいます。
私は、皆がいたから私になれました”

そんな等身大の彼女の想いを綴った、「帰り路」。“ありがとうをうまく歌えるように”、なんて歌う彼女のこころは、常に周囲への感謝の気持ちに溢れているんだろうなと感じて胸が温かくなります。

彼女のうたう歌を中心に、受け取ったものをお互いに返しあう愛の返礼の循環。互酬的贈与と交換。彼女と私たちの間でこの関係がいつまでも続いていけばいいな、なんて感じたライブ1日目でした。

形を失った世界で、それでも僕らは生きていく。”



セットリスト
第一部
―ショートドラマ「かたちを失った世界でぼくらは」―
不可解
Re:HEROINES
畢生よ
未確認少女進行形 with AZKi
命に嫌われている(RAP ver.)with 春猿火
深淵 with ヰ世界情緒
痛みを
メルの黄昏
心臓と絡繰(Guiano Remix)
糸(大沼パセリ Remix)

第二部
ー御伽噺Remixー
彷徨い
アンサー
危ノーマル
モンタージュ
ー特殊歌唱用形態「隼」ー
戸惑いテレパシー
私論理
ー特殊歌唱用形態「金糸雀」ー
過去を喰らう
海に化ける
まほう feat. 理芽
帰り路

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