昭和47年から来た男 第2章
まいど! 50年後にタイムスリップした小川ヨシアキです。 昭和47年の大阪に無事帰れたんで、今までと変わらぬ日々を過ごしております……が、あの千日デパート火災の後なもんで毎日大変ですわ。
あの日一緒に来てた同僚たちは3人中2人亡くなりました。俺と奇跡的に助かった同僚Cは連日マスコミの取材攻めに遭うてます。 猿のように身軽で運動神経の良い同僚Cは、雨どいや配管などを伝ってどうにか地上まで降りれたそうです。で、君はどないして助かったんや?と同僚Cに問い詰められたけど、まさか飛び降りてる途中でタイムスリップして再度こっちに戻れた言うても、多分信じてもらえんやろから適当にごまかしてます。う~ん、説明のしようがないなぁ……
ここで簡単な自己紹介をば。生年月日、出生地は前回言うてるんで割愛、現住所は寝屋川、会社の社宅です。嫁は高校2年から付き合うてた同級生で、23才で結婚。子供は1才の長男、勤務先は大阪市内にある大手の商社、役職なしの平、大卒入社で勤続3年、性格は優柔不断、好きな歌手は南沙織、趣味は草野球、ガキの頃から阪神ファン、特技は別にございません。と、まあこれと言った特徴のない、ごく平均的な浪速っ子です。
なぜタイムスリップ出来たんや?と疑問に思われるでしょうからざっくり言うと、精神的・肉体的に強い衝撃を受ける事で可能らしいです。 ほな、どないして帰ってこれた?やけど、75才の俺から受けたアドバイスに従って淀川大橋から淀川に飛び込みました。で、水面に衝突した時の衝撃で異次元空間に突入して戻れた、という訳ですわ。
世にも珍しい体験ですが75才の俺曰く、小川家の男は先祖代々タイムスリップが出来る遺伝子を持ち合わせているらしいとの事。鍛錬すれば衝撃なしで手軽にタイムスリップが可能になるそうです。ただし順守すべき規則があって過去や未来の出来事及び人物に干渉してはならない、もし万が一規則を破った場合は最初に存在していた時間と場所に永久に戻れなくなり、最悪死んでまうかも、と75才の俺から教育されました。
知的好奇心をくすぐられた俺は、気付いたら淀川大橋に来てました。 よっしゃ、ほな、行くでぇ!と水面目がけてダイブすると、水面衝突の瞬間、目の前にサイケデリックな風景の異次元空間が現れました。 機動隊が浅間山荘に突入するかの如く異次元空間に飛び込むと、数分後出口から放り出されました。俺はとりあえず脳内で50年後の大阪と念じてたけど、さあここはどの時代のどこやろか?
場所ちょっとズレました。神戸ですわ。 メリケン波止場とポートタワーは確認出来たけど、なんかデカい人工島らしきもんがあるなぁ…… 人工島に繋がってる橋をモノレールと一般車両が通りよる。 埠頭にある『MOSAIC』って表記のけったいな形の建物はなんや? 行き交う人たちは手帳の様な物を指で触って、或いは耳に当てがって何か喋ってるし、あの手帳は一体なんや?
ふらふら歩いてるうちに南京町に到着した俺は、腹が減ったので肉まんを購入しました。が、大変な事になりました。 「お客さん、この千円札は使えまへんわ。」 はあ?なんでやねん!店主は怪訝な顔で対応しよる。 「いや、そない言われても……偽札とちゃうで!」 しばらく俺と店主の押し問答が続いた挙句、痺れを切らした店主に通報されたので、俺は最寄の交番に連れて行かれました。 ・・・この人ら、ほんまにポリさんか? 警備員みたいな制服姿のポリさんがどうしても警察官に見えませんでした。
職務質問された俺は、身分証明の為に運転免許証を見せたところ、 「あのなぁ、なんでこんな古い免許持ってるん?」 「昭和47年ですが、何か?」 「はあ?今は令和4年やぞ。あんた怪しいなぁ、色々調べさせてもらうで。」
あぁ、面倒な事になってもうたなぁ……
fin
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