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声とサイエンス

声とラジオ

誰でも「好きな声」があると思う。俳優さんでも歌い手さんでも身近な人でも。私は好きな声の人に出会うと嬉しくなって、大抵長年のファンになる。

「声を聴く」文化の象徴はラジオだろう。ラジオ文化の発祥は1920年代のアメリカだ。当時も今も、その一番の人気の理由は、発信者とリスナーとの間に生まれる「親密さ(intimacy)」と言われている。これは、日本でも同じだろう。

アメリカ人と日本人のラジオの聴き方

アメリカ人と日本人ではラジオの楽しみ方も一緒なのだろうか?

本心は顔より声に出る:感情表出と日本人 - 新曜社 (shin-yo-sha.co.jp)

この本を読んでいたら、両者の楽しみ方は少し異なるような気がしてきた。

その理由は、日本人の独特のコミュニケーションにある。私たちは、相手を嫌な気持ちにさせないために、本心とは裏腹に表情を偽ったり繕ったりする。ところが、表情は繕えても声は繕いにくいのだ。

だから、本心を知りたいときは声にじっくり耳を傾ける。そうすれば本音に迫れることを経験上知っている。他人と話をするときには、相手の表情や発した言葉の意味そのものではなく、声の抑揚やニュアンスから本心を読み取ろうという習慣がついているのだ。

日本人はラジオを聴くとき、声のトーン、明るさ、やわらかいか硬いかの感触に無意識に注意を払っているのかもしれない。表面的ではなく、繊細で深い聴き方だ。

声のサイエンス

ところで「好きな声」に科学的な理由があるのだろうか?

NHK出版新書 548 声のサイエンス あの人の声は、なぜ心を揺さぶるのか | NHK出版 (nhk-book.co.jp)

この本によると、声が人の心を掴む理由は “聴覚と脳の仕組み” にある。「声」は脳の大脳辺縁系に達する。ここを刺激することで好き、嫌いといった本能的な感情を引き起こす。だから「この人の声が好き」と思うのは、理屈抜きの「本能」なのだ。

もう一つ、この本にはちょっと信じられないような興味深いことが書かれていた。多くの人が「自分の声は嫌い」と言うが、「好き」と感じられる声を誰もが必ず持っているはずだと言うのだ。

いま「自分の声が好きでない」人も、好きになる可能性があるということ。自分の声をチューニングする手法があるのだ。声の力で身体全体が整っていくようになれば、それが「その人の本物の声」なのだそうだ。

本物の声に出会いたい

自分の本物の声ってどんなだろう。一生のうちに出会ってみたい気がしてきた。でも、正直なところ、本書を読むだけではチューニングのやり方は良く分からなかった。もし「これぞ自分の本物の声だ!」という声に出会えた人がいたら、ぜひ教えて欲しい。

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