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「名も知らぬ羽へ。」(詩)

動かない羽を見つめる。

いっこうにその場から離れない君を見る。

微かに動く羽の合図。

もう遠くへはいけない。

風を背に受け、ただ灯火は佇んだ。

戦いの日は

終わりを告げた。

僕が揺らしても。

手を差し伸べても、きっと。

お互いに、何も知らぬのだ。

解り合えぬのだ。

動かなくなった羽を見る。

私は、それでも生きようとする。

ただ一度、微かな一度。

道行く人の人生よりも。

心を奪われた、誰かの記憶を。

忘れぬように。

踏み締めて、飛んだ。

「……いつか、僕もそっちへ。」

名も知らぬ羽へ、

私がそんな羽を手に入れる日まで。

今は、この青い地面を踏み締めよう。

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