「もう一度だけ。」(詩)
「遠くに、行きたい。」
ただ、それだけを望んで。
何度も武器を手に持って。
心の中の少女をかばって。
過去の苦しみから逃げるように。
ただ、遠くへいこうとした。
歩を進める度に、
少しずつ死が近づいてくる。
何度だって、恐怖に抗った。
「さようなら。さようなら。」
何度だって、この手を赤に染めた。
夕暮れのような赤色に。
そして、終わりの夜がくる。
心の中の弱さは消えない。
しかし、
私が前へと進むなら。
少しずつ、強くなっていく。
隠し通すのが、上手くなっていく。
そして。
今とは違う景色が見れる。
きっと私は、
ここではないどこかを目指した。
どうせ進まなくてはいけないならと。
私だけの理想郷を目指した。
誰も、追い付けないほど遠くへと。
私にとって、他人は怖い。
私の知らない「感情」を教えてくるから。
恐怖、喜び、悲しみ、苦しみ……
そして、怒り。
でも。
それらは
自分らしくあるための感情。
人になるための感情だった。
私にとって、他人は怖い。
傷つけられることが、堪らなく怖い。
……だが、もしも。
こんな独り善がりな私ですら。
愛してくれる人がいるなら。
生涯を、支えてくれる人がいるなら。
私は、過去の苦しみを捨てられる。
別の夢を、叶えられる。
幼い私の、心の中の少女に告げる。
いつの日かの私が、願ったように。
「大切な人達と、いつまでも平和に暮らせますように。」
もう一度だけ、そんな夢を見よう。
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