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訪問看護師の仕事内容・向いている人とは?病棟との違いを徹底解説!

看護師の勤務先として、在宅でも医療が不可欠な方をサポートできる訪問看護
の需要が増えています。

今後も需要が拡大していく訪問看護は、看護師の働くフィールドを広げるものとなり、働き方も病院とは異なります。

とはいえ、訪問看護師の仕事について知らないと、自分に合った働き方ができるのか不安で転職できないですよね。

私の友達は、看護学生時代から在宅看護に興味があり、病棟経験3年間を経て現在訪問看護で活躍しています。
「とても楽しいよ」と話していた友達の活気あふれる表情が印象深かったです。

少しでも在宅看護に興味がある方、働き方を見直したい方は、ぜひこの記事で訪問看護について理解を深めましょう。

そもそも訪問看護師ってなに?


訪問看護とは、自宅療養をする利用者に看護師が自宅へ赴き、看護ケアを行うサービスのことです。

訪問看護師の仕事は、病気や障害のある方が住み慣れた自宅・地域でその人らしく生活を送るためのサポートです。

主治医が作成する訪問看護指示書のもと、身体状態のチェックや家族への療養指導、医療処置、身体介助などを行います。

下記では、より詳細に訪問看護師の役割や職場について解説します。

訪問看護師の役割

訪問看護師は、医療はもちろん、生活の視点からも利用者の「その人らしい暮らし」をサポートします。

在宅療養では、家族が主体となって利用者の療養生活を支えているため、必要に応じて家族のメンタルサポートも行います。

また、他施設・他職種との連携を行っていくことも訪問看護師の大切な役割です。

訪問看護師の職場はどんなところがある?

訪問看護師が在籍している具体的な施設は、以下の3つが挙げられます。
・訪問看護ステーション
・病院
・クリニック

<訪問看護ステーション>
訪問看護を実施する職員たちの事業所であり、そこを拠点として利用者宅へ訪問し、看護ケアを行います。
2023年度では、15697事業所と去年より1393事業所増えており、今後も増えていくと推測ができます。

<病院>
病院の中に訪問看護部があり、病院を拠点として利用者宅へ訪問し、看護ケアを行います。

<クリニック>
一般のクリニックや訪問診療クリニックに訪問看護が併設されている形が多いです。
そこを拠点として利用者宅へ訪問し、サービスを提供していきます。

訪問看護を利用する方の特徴

訪問看護ステーションの利用者は、高齢者が多いです。
厚生労働省の調査では、平均年齢は82歳でした。
また、疾患の中でも高血圧や脳卒中、認知症などの利用者が目立ちます。

「今はターミナルの利用者が多い」
「このステーションは、小児の割合が多い」
「このステーションは難病の方が多い」
「呼吸器をつけている利用者が多い」

このように、時期や事業所によっても、利用者の特性・傾向は異なります。

「どのような利用者層なのか」気になったステーションのホームページや直接質問するなど、事前に利用者層を知っておくと良いでしょう。
自分のスキルや経験、のちのスキルアップを考える材料になります。

訪問看護と病棟の違う点

〈環境・設備〉
病棟では、設備や備品が整っているため、スムーズに医療を提供できます。
また、人手がそろっており、何か急変や人手が必要な時に助けを求めやすいです。

それに比べ、訪問看護は基本的に1人で訪問するため、気軽に他の人に聞ける環境ではなく、自分自身で対応する場面が多くなります。
また、利用者宅で看護ケアを実施するため、設備・備品が不十分であることが多いです。

限られた設備や備品、1人で訪問する必要があるため、臨機応変な対応力が求められます。看護師としての経験が浅い方でも、ステーションによっては研修が整っているため、ステーションに事前に聞いておくといいでしょう。

訪問看護師の仕事内容・勤務形態


新卒後、病棟に就職する看護師が大半のため、訪問看護の仕事内容や勤務形態について知らない人もいるでしょう。
中には、「訪問看護に行く前に、どんな仕事なのか」「1日のスケジュールを知りたい」と言う方も多いです。
以下で、訪問看護の仕事内容などを詳しくご紹介します。

訪問看護師の仕事内容

  • 利用者の身体状況の把握

  • 医師の指示に基づいた医療処置や内服管理

  • 利用者の家族から相談・メンタリング

  • 看護記録や報告書の作成

  • 関連機関との連絡や調整

〈利用者の身体状況の把握〉
利用者宅へ訪問すると、まずバイタルや症状など、身体のチェックを行います。

利用者の病状に著変ないかを観察し記録します。
健康管理は、医師が今後の治療方針を決定する際の判断材料となるので、詳細に記載することが重要です。

〈医師の指示に基づいた医療処置や内服管理〉
医師の指示に基づいて、点滴の管理や在宅酸素管理などの医療処置も行います。
誤飲や飲み忘れを防ぐための内服管理も訪問看護師の重要な仕事のひとつです。

〈利用者の家族から相談・メンタリング〉
家族が在宅介護で困っていることや悩み等を聞き、アドバイスなど必要な支援を行います。

家族が主体となって介護をしているため、家族への支援は必要です。

介護と仕事をしながらの生活は、身体的・精神的にも非常に負担が大きいことが予想できます。
家族にも生活があるため、周囲へのメンタルサポートも訪問看護師の大切な役割と言えるでしょう。

〈看護記録や報告書の作成〉
訪問後、その日行った看護ケアや利用者の状態を記録します。
看護記録の記入・訪問看護報告書の作成などを行い、利用者の現状を医師や訪問リハビリなど他スタッフと共有します。

毎月、「訪問看護報告書」の作成やカルテの管理なども業務の1つです。

〈関連機関との連絡や調整〉
利用者やその家族の相談に乗ってアドバイスを行いつつ、医師とのコミュニケーションを取り持つ大切な役割を担っています。

「その人らしい暮らし」を支援していくため、ケアマネージャーや医療機関との連絡もしてその人に合った看護ケアを提供していきます。

訪問看護師の1日の仕事の流れ

1つの例として、訪問看護師の一日の流れについて、ご紹介します。
病棟との違いを比較し、イメージしてみましょう。


9:00 出勤、ミーティング
   ・前日、前夜からのメールやFAXなどの連絡を確認します。
   ・全スタッフ(各チーム)で朝のミーティングを行います。
   ・その日のスケジュール、申し送りを確認します。

9:30 午前中の訪問へ
   ・1件目の訪問(自宅や施設)
   ・移動手段は主に車です。
   ・東京都内は自転車が多い傾向です。

12:00 ステーションに戻る
   ・お昼休憩や午前中訪問した利用者の記録をします。
   ・スタッフ同士で利用者の情報交換をしたり、かかりつけ医や
    ケアマネと連絡を取ったり、サービスの調整を行います。
   ・スケジュールによっては、車の中でお昼休憩を取ります。

13:00 午後の訪問へ
   ・午後の訪問件数は、2~3件が一般的です。
   ・次の訪問まで時間があると、その合間に記録を書きます。

16:30 訪問を追え、ステーションへ
   ・まだ入力出来ていない訪問看護記録の入力をします。
   ・午前中に引き続き、かかりつけ医やケアマネなど医療機関への
    連絡、相談をします。
   ・訪問看護計画や訪問看護報告書の作成や修正を行います。
   ・夕方のミーティングや、情報共有をします。

17:00

18:00 退勤
   ・1日の仕事が終了です。
   ・比較的残業が少なく、プライベートとの両立がしやすいです。
   ・場所によっては、直行直帰の場合もあります。


訪問看護師の勤務形態は?

基本的に「日勤のみ」です。
利用者の訪問時間は、1回あたり30分や60分と決められているので、比較的残業も少ないです。
もちろん、急変などの場合は対応する必要がありますが、病棟に比べ、緊急入院や手術などの対応はないため、働きやすい環境なのが魅力的です。

夜勤はないですが、「オンコール」の制度をとっているステーションがほとんどです。
病院では夜勤が主流なので、「オンコールって何?」となる方も多いですよね。

以下で、少し具体的に「オンコール」について解説します。

オンコールって何するの?

「オンコール」とは、「専用携帯を持って自宅待機」をし、何かあった際に電話対応をする仕組みのことです。

場所によっては、ステーション内の当直室での待機の所もあるので、事前にステーションに確認しましょう。

基本的に、オンコールの当番日が決まっており、だいたい月4~8回対応することがほとんどです。大抵は、電話による相談対応で済みます。

急変やお看取りなど、出動する必要がある場合もあります。
利用者層によって、月の出動回数も変動するので、確認が必要です。
(平均月1~2回の出動するステーションもあれば、年2∼5回の出動のステーションもあります。)

また、自宅での待機が基本です。
電話がなった際のみ対応になるため、家事やプライベートなことをやりながら勤務できるところが魅力的ですね。

オンコールで出勤日の翌日は、ステーションによって休日になるのか出勤になるのか異なるため、事前にステーションに確認しましょう。

〇事前にステーションに確認しておくべきオンコール体制〇
・オンコールを持つ回数
・実際の出動回数
・オンコール出動後の勤務体制

訪問看護師の給与

看護師の平均所得は、一般サラリーマンより高い傾向です。
その一番の理由は、夜勤手当が大きいと言えるでしょう。
「夜勤をやらずに手取りが減るのは避けたいけど、病棟はもう辛い」「もう少し患者に寄り添いたい」などの理由から訪問看護に興味を持つ人もいるかと思います。

では、実際の訪問看護師の給与について、一例ですが病棟と比較してみましょう。

病院(病棟):おおよそ年収440万(夜勤手当込み)
訪問看護  :おおよそ年収400万
      (オンコールや訪問件数により追加でインセンティブ等あり)

ご自身の求める収入や看護観を踏まえて、訪問看護師が自分に合っているのか見定めてみると良いでしょう。

訪問看護師のメリット・デメリット

ここまで訪問看護師について解説しましたが、「実際私に合ってるんだろうか?」と疑問に思う方も多いはずです。

以下で訪問看護師のメリット・デメリットを説明します。

双方の視点を加味して、現在の自分が望むことに訪問看護師の働き方が当てはまっているか考えてみましょう。

メリット

まず、メリットを5つご紹介します。

  • 夜勤なし

  • 日勤のみでも給与水準が高い

  • 土日休みも可能

  • 訪問看護は需要が高い

  • 1人ひとりにしっかり寄り添った看護ケアができる

〈夜勤なし〉
前述した通り、訪問看護は夜勤がなく日勤がメインです。

病棟では、夜勤があり生活リズムが崩れやすいですよね。
「体調を崩しやすい」「夜勤がつらい」と言う声は、看護師の間では日常茶飯事でしょう。
その点、訪問看護師は夜勤がないため、生活リズムが整いやすく、家庭のことにも時間を割きやすい環境で働けます。
また、訪問看護ではママさんナースも多いため、時短やパートタイムなど子育てに理解のあるステーションがほとんどです。このように柔軟な働き方ができるところも、訪問看護の魅力の1つです。

※基本的に夜間・休日のオンコール体制がほとんどなので、前項の「〇事前にステーションに確認しておくべきオンコール体制〇」を参照し、事前にステーションに確認しましょう。

〈日勤のみでも給与水準が高い〉
一般的に病棟や施設では、日勤のみだと給与が大きく下がってしまう傾向にあります。
日勤のみだと、350万前後になってしまうこともしばしばです。

一方訪問看護は、平均年収が430万円ほどです(オンコール対応ありき)。
夜勤手当がなくなるため、病棟の平均年収には及びませんが、「日勤のみで生活リズムが整う」条件で、病棟日勤のみと比較すると、給与面でも非常に魅力的であると言えます。

また、ステーションによっては訪問件数に応じてインセンティブが支給されるところもあるので、「日勤のみだけど稼ぎたい」方にもおすすめです。

〈土日休みも可能〉
ステーションによって、土日祝日休みにしているところもあります。

ご家庭の事情で土日祝日休みが良い方にはぴったりの働き方です。

ただ、交代制での出勤や、オンコール対応があるステーションもあるため、
休日や勤務体制については、ステーションのホームページや電話での確認など、事前に把握しておきましょう。

〈訪問看護は需要が高い〉
訪問看護師の経験を積むことは、看護師としてこれからのキャリアアップにとても大きな強みになり、働くフィールドが広がることも魅力的です。

2025年には65歳以上が5人に1人になる超高齢社会に我が国が突入している中、在宅医療や訪問看護のニーズは年々高まっています。病棟や施設が満床である場合や、利用者自身が「最後は住み慣れた自宅で過ごしたい」などの希望が叶えられることも、訪問看護のニーズが高まる要因の1つです。

こういった背景があり、「訪問看護の経験者」は、いずれ転職する際にも貴重な存在だと言えるでしょう。
訪問看護からいずれ病棟に戻るとしても、退院支援などで訪問看護で培った知識や技術は高く評価されるため、キャリアアップにも魅力的な働き方です。

〈1人ひとりにしっかり寄り添った看護ケアができる〉
訪問看護では、利用者の生活に寄り添い、その人らしい生活を尊重した看護を提供できます。

病棟では、緊急入院や手術対応など救急対応などに追われ、1人ひとりの患者との時間を取ることが現実的に難しいのが実態です。
私自身も急性期病棟で勤務しておりましたが、なかなか患者との時間を割くことができず、目の前の業務に追われる日々を送っていました。

訪問している時間内は、その利用者のことだけを考えて看護を実践できます。「患者に寄り添った看護」がしたい看護師なら、訪問看護はとてもやりがいを感じる魅力的な仕事だと言えます。

デメリット

訪問看護師として働くことのデメリットは、主に以下の5つです。

  • オンコールがある

  • 教育体制が整っていないこともある

  • 処置スキルが衰える可能性がある

  • 現場では1人対応のため、不安がある

  • アセスメント能力がかなり必要

〈オンコールがある〉
月に数回、夜間の相談や緊急対応の対応のため、オンコール体制がある訪問看護が大半です。
基本的に、オンコール専用の携帯を持ち、自宅待機になります。

人によっては、

  • 「いつかかってくるか分からないから、自宅でも休まらない」

  • 「寝てて電話がなっても起きれなかったらどうしよう」

と緊張状態が続き、夜勤のほうが合っていると感じる看護師もいます。

「オンコールを持つ頻度」「実際にかかってくる頻度」「出動頻度」などは、事前にステーションへ確認しておきましょう。

〈教育体制が整っていない場合もある〉
ステーションの中には、教育プログラムやカリキュラムがないケースもあります。

訪問看護は、5人前後と小規模なステーションもあるため、教育体制を手厚くすることが難しいところもあるようです。

ただ、最初は先輩と一緒に同行し、自信がついてきたら独り立ちになる場合が多いです。教育体制が整っていないからすぐ独り立ちになってしまうことは、少ないでしょう。

また、訪問看護の需要が高まっているため、ステーション内で教育プラグラムやラダーを整えていくステーションが増えてきました。

仕事の進め方やどんな教育制度があるのか、ホームページなどで事前に把握しておきましょう。

〈処置スキルが衰える可能性がある〉
病棟では、急性期の患者の対応があるため、最先端の医療技術を磨くことができます。
しかし訪問看護は、見取りや、病状が落ち着いた利用者の看護が多いため、高度な医療技術が必要な場面は少ないです。

難病や末期がんなど、医療依存度の高い利用者もいますが、療養病棟での対応を自宅で行うイメージになります。自宅なので、病棟と比べるとできる医療処置も限られます。
医療処置技術を提供する場面が少ないため、そこをデメリットに感じる方もいるでしょう。

〈現場では1人対応のため不安〉
訪問先では、基本的に1人で対応することがほとんどです。
病棟では他スタッフがいるため、気軽に質問や相談ができますが、訪問看護は1人で判断しなくてはなりません。
「自信がないのに、1人で大丈夫だろうか」と不安になる看護師も多くいます。

ただ、何か困ったことや心配事があった際、電話などの連絡ツールで先輩看護師や管理者へ相談できる体制を整えているステーションが多いです。

「まだ経験が不安が少なくて不安」
「利用者や家族の対応にも不安が大きい」

このような不安を抱えている看護師は、病棟や施設で経験を積んでから訪問看護へ挑戦するのが良いかもしれません。

〈アセスメント能力が必要〉
前述したように、訪問先では1人対応が基本です。
また、病棟では患者の様子をすぐ確認にいけますが、訪問看護は時間が決まっています。
その時間内で、会話や生活の変化、表情から利用者の症状、様子をアセスメントし、今後の看護計画を立案、修正していく必要があります。

訪問看護では、アセスメント能力が鍛えられることはメリットでもありますが、
その重圧に耐えられない看護師も一定数います。

訪問看護師に向いている人・向いていない人の特徴


繰り返しになりますが、訪問看護は利用者宅へ伺い、時間内で1人ひとりに応じた看護を提供します。

下記では、訪問看護に向いている人、向いていない人についても解説していきます。
やってみなければ分からないこともありますが、自分に合っているのかどうかを判断する1つの材料にしましょう。

向いている人の特徴

向いている人の特徴は以下の通りです。

  • コミュニケーション能力が高い

  • 臨機応変に対応できる

  • 時間内で効率よく看護を提供できる

〈コミュニケーション能力が高い〉

訪問看護は、利用者宅へ1人で訪問するため、
家族や利用者とのコミュニケーションを1人で取らなければなりません。
中には、苦手な利用者の対応することもあるでしょう。しかし、訪問看護のプロとして1人ひとり適切に看護を提供していく必要があります。そのため、どんな方とも問題なくコミュニケーションが取れることがとても大切です。

〈臨機応変に対応できる〉
訪問中は1人で対応するため、その日の患者の表情や話し方、症状、様子を観察し、アセスメントをします。
その場での緊急時やオンコールにおいて、冷静で柔軟な対応が求められます。臨機応変な対応に自信がある人は、訪問看護に向いていると言えるでしょう。

〈時間内に効率よく看護を提供できる〉
訪問看護も訪問先によって30分だったり60分だったりします。
その中でやらなければならない看護処置は多岐にわたるので、時間内にできるようにしなければなりません。効率を求めつつ実施しながら、1人ひとりに寄り添った看護を提供していくため、病棟で鍛えられたことが発揮できると言えるでしょう。

向いていない人の特徴

向いていない人の特徴は以下の3点です。

  • 訪問先への移動が苦痛

  • 医療処置がしたい人

  • 潔癖症な人

〈訪問先への移動が苦痛〉
施設への訪問が中心のステーションもありますが、一般的には自宅への訪問が基本です。

自転車や車での移動時間がかかってしまい、場合によっては訪問距離が空いてしまう可能性もあります。
移動時間が好きじゃない方や車の運転に不安がある方(ペーパードライバーなど)は、ストレスになるかもしれません。
移動手段についてもステーションごとで異なるため、事前に確認しましょう。

〈医療処置がしたい人〉
訪問看護は、自宅での療養上の世話(おむつ交換や風呂介助、排便コントロールなど)が基本です。人工呼吸器や胃瘻などの管理はあるものの、医療処置は少ないと思ってください。

「医療処置を的確にできるようにスキルアップしたい」看護師にとっては、訪問看護の業務に対して大きなギャップを感じる可能性があります。

〈潔癖症な人〉
訪問先がきれいな自宅とは限りません。
片付いている自宅が多いですが、自身の疾患が原因で身の回りの整理整頓ができず、一般的に「ゴミ屋敷」と呼ばれる自宅もあるのです。

認知症の利用者だと、排便を認識することが厳しく、オムツごとベッド上やベッド周りに捨ててしまっていることもあります。

きれいな自宅でないと訪問したくない方には、苦痛に感じるかもしれません。

訪問看護師の働く領域とそれぞれの特徴


訪問看護でも、専門の診療科目の訪問看護ステーションがあります。
以下では、それぞれの特性なども紹介します。

一般の訪問看護

内科や外科などで急性期を脱した後、自宅で医療が必要な方が在宅療養の利用者として多いです。このような在宅での療養をする利用者を看護するのが一般の訪問看護で、最もイメージしやすいのではないでしょうか。

人工呼吸器や胃瘻処置、褥瘡処置、点滴、採血など、混合病棟の患者が多いです。
また、これまでも解説したとおり、オンコール体制があるステーションが多いです。

精神訪問看護

精神疾患の利用者に特化した訪問看護です。

基本土日祝日休みが多く、オンコールがないのが特徴です。
具体的な仕事内容は、利用者のバイタルチェックや内服管理、周囲の人たちとの関係構築をはじめとした生活する上でのサポートがメインです。

「精神領域は暴れたりしないか、少し怖い」と思う看護師も多いでしょう。しかし、急性期を脱して自宅での生活が問題ないと判断された利用者しかいません。
もちろん100%急変しないとは言えませんが、あまり身構える必要はないかもしれません。

プライベートを重要視したい看護師にはとてもおすすめのステーションです。

施設内訪問看護

施設内訪問看護は、その名の通り施設内の各部屋へ訪室し看護ケアを提供します。
施設内の部屋が利用者の居住地で、その訪室した時間が、自宅へ訪問した勤務時間という認識になります。
一人ひとりの自宅への訪問はないということですね。

とはいえ、訪問看護にはなるので、一人ひとりの部屋への訪室時間(看護ケア提供時間)は決められているので、効率よくケアしていくことには変わりません。

また、基本オンコール対応もあります。

移動時間が苦痛だけど、訪問看護に興味のある看護師には、とてもおすすめです。

訪問看護師に必要な能力・スキル


訪問看護師になるために必要な能力やスキルについて、ご紹介します。
基本的には病棟でも身につくスキルですが、意識することでより一層スキルを磨くことができます。

基本的な看護技術、観察力

バイタル測定、点滴や採血などはもちろんのこと、ストマや褥瘡処置、胃瘻などの基本的な看護手技は必要最低限できるようにしましょう。

また、限られた時間の中でアセスメントに必要な情報を得る必要があります。そのため、利用者の表情や話し方などにも注意して観察できる力があると良いです。

アセスメントスキル

何かあった際に、気軽に様子を見に行ける病棟とは違い、訪問看護はその日に行ける時間は限られています。
限られた時間の中でかき集めた情報から、「いつもと違うな」という違和感を素早く察知し、対応することが求められます。

訪問中は1人での対応になるので、高度なアセスメントスキルがあると良いでしょう。

緊急時に対応できる力

利用者がベッドから転落していたり、転倒していたり、症状の急変があったりした際に、即座に対応しなければなりません。

他の医療スタッフが駆けつけるまでの間、設備が整っていない状態でも焦らず柔軟に対応できる力が求められます。

限られた時間で優先順位をつける力

訪問看護は、利用者の自宅へ訪問する日数や時間が定められています。

時間内に、その日のケアを終わらせなければなりません。
利用者の病状や状況に応じて優先順位をつけ、計画的に看護ケアを進めていく必要があります。

時間オーバーになってしまうと、利用者や家族に迷惑が掛かり、信頼関係に影響が出てしまいかねません。
日ごろから時間管理を意識して業務に励むと良いでしょう。

コミュニケーション能力

コミュニケーション能力は、看護師として働く上で非常に重要な能力です。

訪問看護は、利用者やその家族との適切なコミュニケーションによる信頼関係構築が非常に重要です。また、関わり方によっては、安心感も与えられる、精神的なサポートができる看護師はとくに求められる人材と言えるでしょう。

また、適切な看護ケアを提供をするために、医師や介護士、理学療法士など他の医療従事者との連携が取れるコミュニケーションも大切です。

訪問看護師になるおすすめポイント

訪問看護師として働くおすすめポイントを詳しくお伝えします。

訪問看護ステーションは需要が高い

現状、超高齢社会に入っているため、病院や施設は飽和状態(いわゆる空き待ち)です。

また、最後まで自分らしく生きたいと個別性を大事にする患者も増えてきました。

そういった面も含め、訪問看護ステーションの数は全国的に増えています。
人口ピラミッドで考えても、今後利用者は増加していくのと同時に、訪問看護師の需要も高まるでしょう。

利用者1人ひとりとじっくり向き合える

訪問の間は、その利用者と1対1での対応になるため、じっくりと利用者に向き合うことができます。

病棟では、日々の業務に追われ「もっと患者との時間を取りたい」「寄り添った看護がしたい」と思う看護師は多いです。
訪問看護は、そのような疑念をもつ看護師に非常におすすめです。
また、自身でスケジュールを管理しながら業務を遂行し、イレギュラー対応も起こりにくいのもおすすめのポイントです。そのため、自分のペースで看護ケアを提供していくことができます。

利用者の意思を尊重した看護が提供できる

利用者は、「自分らしい生活を送りたい」と自宅療養を選ぶ方も多いです。

病院だと、治療になってしまうため、禁止事項に縛られてしまいます。

在宅で、その人らしく生きることを看護の視点からサポートできることが訪問看護のやりがいの1つだと言えるでしょう。

病院のルールに縛られない

看護師の中では、「この病院のルールがよくわからない、納得できない」など疑問に思うことも多いでしょう。
「利用者の自宅にお邪魔する」形になるので、基本的にその家庭のルールを尊重します。

自分が必要とされている実感が持てる

訪問看護は、利用者の自宅へ訪問するため家族がいる時間に訪問することもしばしばあります。
一方病院では、毎回家族と接するわけではありません。
訪問看護では、「いつもありがとうございます」と言葉をいただくことが多々あります。

感謝を実際に言葉にしてくれるのは、働く中でとてもうれしい瞬間です。
また、実際に利用者の生活に近くで寄り添うことで、自分が「その人らしい生活を送るための力になれているんだ」という実感が持てるでしょう。

訪問看護の現場で活用できる資格

限られた環境、器具で看護ケアを行っていく中で、実際に活用できる資格をご紹介します。

「どんな資格が訪問看護の中でより活かせるのか」、知っておくと今後のキャリアアップにも繋がるでしょう。

認定看護師

認定看護師とは、「特定の看護分野で熟練した看護技術や知識を持つ」と認められた看護師のことを言います。

数ある認定看護師の中で、特に下記の認定資格は非常に役立つものと言えるでしょう。

  • 皮膚排泄ケア認定看護師

  • 緩和ケア認定看護師

  • 在宅ケア認定看護師

訪問看護では、がん末期の利用者(緩和療法を実施する利用者)や褥瘡、ストマ管理など皮膚トラブルを抱える利用者も多くいます。

上記資格の専門知識が、訪問看護でも質の高い看護ケアを提供する上で非常に有益です。

認定看護師になるための道のり
①実務研修が通算5年以上(うち3年以上は認定看護分野の実務研修)
例:在宅ケア認定看護師→看護師経験5年、うち3年は訪問看護経験

②認定看護師教育機関で受講
・6ヶ月~1年間
・600時間以上(特定行為研修を含む新制度は、800時間程度と特定行為に関する実習)

③認定審査

④認定看護師に登録

⑤5年ごとに更新

上記のステップを踏む必要があります。

専門看護師

専門看護師は、「特定の専門看護分野の知識・技術を深め、卓越した看護を実践できる」と認められた看護師のことを言います。

看護系大学院を終了する必要があり、教育や研究分野でも活躍が期待されます。

訪問看護は、「がん末期」の利用者が多いです。
そのため、訪問看護で専門看護師を目指す際、「在宅看護」「がん看護」の専門看護師の資格を取ると、より現場で力を発揮できるでしょう。

専門看護師になるための道のり
①看護系大学院修士課程を終了+専門看護師の教育課程基準で決められた単位を取得

②実務研修が通算5年以上(うち3年以上は専門看護分野の実務研修)

③認定審査

④専門看護師に認定・登録

⑤5年ごとに更新

上記の過程を踏む必要があります。

特定看護師

特定看護師とは、「医師の指示をその都度待つ必要がなく、あらかじめ作成された手順に基づいて、一定の診療の補助(=特定行為)を行える看護師」のことを言います。

特定行為研修を修了し、特定看護師資格を持っていると、訪問看護師として飛躍的にスキルアップが望めるでしょう。

訪問看護師を知ることで、働けるフィールドを広げよう!

長い目でみても、訪問看護のニーズは非常に高まっています。
訪問看護師の経験は、今後も魅力的な経験になるでしょう。

また、比較的柔軟に働き方を選べ、プライベートと両立しやすい点もとても魅力的です。

まだ転職を考えていない看護師も、訪問看護について知っておくことで、今後のキャリア形成やライフプランの範囲を広げることができるでしょう!


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