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言葉にできない。言葉にしたい。

言葉にして伝えることが苦手です。

例えば1対1で話をしているとする。
そこで、会話しているのは
誰がどう見ても
自分と、相手のふたりなのに
私の中では、ふたりじゃない。

本当の自分は物凄い勢いをつけて
どこか遠くへと背を向けて逃げている。
待ってと言っても、もう遅い。

だから、そこにいるのは「私とあなた」ではなく
「あなたが2人」なのである。

というのも、何か伝えたいことがあっても
言いたいことがあっても
反論したいことがあっても
相手の顔色を伺ってしまうから

相手の好むような言葉で、
相手が好きそうな口調で、
相手が嫌そうなことは言えず、
相手になろうとするから。

特に、勢いのあるボスのような人と対話して
相手の言葉に乗せられる気持ちの大きさに
やられてしまうと余計に
ワタシダレ。状態になる。

そんな強張った状態だから
途端に言葉に詰まる。
ちゃんと言葉は組み立てられているのに
つっかえて、うまく言葉にできない。

言葉にできたとしても
心とイコールでない。
自分の考えや伝えたいことと
声に出される言葉がマッチしていないから
言葉を放った後、下を向いてしまう。

自分が消えてしまったようで
もどかしくて、やるせなくて
それはそれは、寂しい気持ちになる。

何も気にせず、
自分の好きなことや
それが好きな理由を
自分の好きを守るように話す姿に
ずっと憧れていた。

文章と出会うまでは、ずっとそうだった。

部屋を模様替えしたついでに、
なぜか本棚を作った。

国語も嫌いで、
学校の朝読書の時間でさえ
読んでいるフリをしてページをめくり
好きな人のことを考える私が。

本棚をだ。(大きくハテナ)

本棚ができれば、必然的に本が欲しくなる。
もとい、本棚が本を求めてた。
私は本を読まなかったからきっと、そう。

初めて行った、今はもうない、本喫茶。
入っていいのか、開店しているのかさえも
わからない門構えの本喫茶。

お店の扉へと向かう暗いビルの細道は
いつも香り高いコーヒーの匂いがしていた。

今でも鮮明に思い出せるほどの、
「新しい自分がこの先にいるよ。」と
聞こえてきそうな予感混じる匂い。

閉店する際にはゆっくり足を進めて
香りを身に覚えさせたなあ。

そこで、ある著者さんとの
運命の出会いを果たした。

型にはまらないテイストの本だった。
型にはまらない自分になりたかった私は
引かれるのに1分も要らず、一冊購入した。

ごくごく水を体内に流し込むように読んだ。
言葉の持つ包容力と優しさに驚いて
本を抱き締めずに要られなかった。
半泣きになりながら
ここにいたんだ、私の味方。
と呟いた気がする。(だいぶ困憊してる)

本の世界へとどっぷり浸かった私は
あれだけ疎遠していた言葉を
自ら抱き寄せるようになった。

そこから沢山のご縁があり
文章を書く機会が多くなった。

自分の感情をじっくり観察して
伝えたいこと、書きたい事を
濃度100パーセントで
ギュッと詰め込んだ言葉を
組み替えて揃えて、
ちょっぴり辛くしたり甘くしたりしながら
ノートやパソコンと対面して、連ねる。

迷子になっていた訳もわからない
悲しみや嬉しさたちが文章にすることで
ちゃんと、2本足で立ってくれるようになった。

紛れもなく、「ノートと私」であり
「パソコンと私」であった。

着実に文章を重ねていたある日、
勢いが凄まじく
その人が放つ言葉に乗せられる気持ちの大きさに
やられてしまいそうな
私に言わせればボスのような人へ
足と顎を震わせながら文章を持っていった。

勢いのある声色で
ぐわっと押し寄せるほどの思いを乗せて
こう言われた。

「言葉に力がある。すごい。」

私の過去も、経験も、嬉しかったことも
悲しかったことも知らないのに、
文章から全て察したように頷いてくれた。
「私とボス」の間の言葉はそれぞれ
心とイコールで繋がっていると分かった。

なんだ大丈夫じゃないかと、ホッとした。
(ボスキャラにしてしまって、ごめんなさい)

今思えば、憧れ、恐れ慄いていた
今までのボスさん達も
私が私であれてたら
きっと、違う捉え方で
対話ができていたかも知れない。


もう一つ気づいたのは
自分に少しだけ自信がついていたこと。

気を抜くとくるっと
背中を向けて走っていきそうな
自分の手を引っ張り、私を捕まえておく。

発する言葉は覚束なくて、
噛み噛みで言葉が細切れになってしまうけど
ちゃんと、心とイコールである事を守った。
私が私を離さなかった。

間違いなく言葉が育ててくれた私だったし
違わず、文章が運んできてくれた
ご縁と経験のお陰だった。

言葉にしたい、あらゆる調味料を使って
味わい深い、美味しい美味しい文章にしたい。

いつか言葉に溺れても、
ちゃんと好きでいたい。

言葉にしたい。









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