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  • 掌編小説

    掌編小説集です!

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音を聴く(掌編小説)

 ド、ド、ド、ド、ド。  およそ一週間前だった。ピアノの音が部屋の空気を揺らすようになったのは。迷惑、と感じるくらいに強い音ではない、シャボン玉のような丸いものに包まれたように優しい音で、つい耳を傾けてしまう。  ド、ド、ド、ド、ド。 絶対に“ド”以外の音が鳴らされることはない。同じ音を連打しているだけのそれは、はたして音楽と言えるのだろうか、と考えていると、今日もまた、ド、ド、ド、ド、ド、と聴こえてくる。ド、を聴いていると、自分がドに取りかこまれていく気がし、この世に“ド”

    • 壁(掌編小説)

       わたしは壁と一体化するのが得意である。さて、どういうときに壁になるのかと言えば、例えば妻と娘がつまらぬ言い争いをしているとき、社内でなにやら火の粉を食らったとき、街中で不審者が平和をぶっ壊しているとき、わたしは壁に身体をぴたりと寄せ、壁の一部になる。壁はわたしを吸収し、わたしは壁の内部に入る。壁になっている間、わたしはわたしという存在を手放し、壁という生命を身体に吹き込まれる。壁の中に入ったわたしを、第三者は見ることはできない。よって、わたしは完全に独りの世界へと飛び立つこ

      • 水に浮かぶ②

         しーちゃんは、よしじゃあ水着買いにいこう、と言って立ちあがる。そのときに、しーちゃんの服についたかみが床にぱらぱら落ちていく。床をよくみると、数はおおくないけれど切られたかみがそこら中に散らばっている。そのひとつが鼻にはいったのか、むずむずしてきてくしゃみがでた。多分そのくしゃみで、ごみと化したかみがさっと動いた。  しーちゃんは掃除機持ってきて、それらを一気に吸いあげる。みていると、掃除機が通ったあとの床からはかみの毛が消えていく。掃除機でも吸いこめないやつは一旦おいとい

        • 自己紹介

          こんにちは。どいるです。 名前の由来はコナンドイルのドイルです。 シャーロックホームズ好きです。 シャーロックホームズになりたくて、心理学を読み漁っていた時期がありましたが、近づけたかどうかは謎のまま……。 心理学のほかに哲学も好きです。 というか、いろいろ好きです。 大学での専門は芸術文化でした。 ほかに好きなものとしては挙げられるのは ☑️耳をすませば ☑️学園アリス ☑️ラフマニノフ ☑️ブラームス ☑️ハリーポッター ☑️名探偵コナン(灰原推し) ☑️NiziU(

        音を聴く(掌編小説)

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        • 水に浮かぶ
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        記事

          水に浮かぶ①

           明日は一日水に浮かぶ日なんだよ、て、いきなりしーちゃんが言った。しーちゃんは、顔の前に顔だけが映るくらいのちょうどいい大きさの鏡おいて、まえがみ切ってる。刃がぎざぎざになってるはさみ使って、なれた手つきでちょきんちょきん、うわあ、短すぎたかな? って言ってくるしーちゃんのまえがみみてみると、ちょうどまゆげと同じラインの長さになっていて 「ちょうどいいと思うよ」  と返すと 「そう? でもさ、まえがみって絶対切った長さから一センチくらい短くなるじゃん? ああ、これじゃあまゆげ

          水に浮かぶ①