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あかんたれにいちゃん5

あけましておめでとうございます。
本年もお付き合いいただければ幸いです。
皆様にとって素晴らしい一年でありますことを
お祈り申し上げます。

さようなら天使、こんにちわ悪魔

やっと平穏な日々が戻ってくると思った矢先に現れた悪魔とはなんぞや。
母親とは目の前のライオンが子供に襲いかかろうとする時、我真っ先に身を捧げるという特性のあることへの認識が甘かった・・・。同じことを繰り返さぬよう、両親の財産管理を私が行うことを母に提案した時、家を売りマンションを購入した残りの老後の財産の8割をすでに兄に貸してしまったことが発覚したのだ。
数カ月後に返してくれると約束したからだとういう。
わずか1ヶ月もたたないうちに元の木阿弥に・・・。正直失望した。
なんのために・・・。やるせない気持ちになった。気持ちを整理することが難しかった。なぜ?なぜ?なぜ?けっして口にすることはなかったが、その時は兄に対する怒りよりも母に対する怒りの方が強かったように感じる。

なぜ、兄はお金を返さないのか。事業をやっていたらなそれなりの売上があるのでは?そう思った方も少なくないだろう。私も兄に仕事があり、売上見込がたっていることも確認していたため、当時はいつかは戻ってくると考えていた。
ところが、一向に返ってこないことで何かおかしいと感じ始めた。
兄は「ああだこうだ」と理屈づけていたが、兄の会社は赤字で、売上は自転車操業で手元に残らない。自分の生活費、離婚した家族の養育費、社会保険料、税金・・・。これらすべてが両親の財産で補填されていたことに私は気づいた。そして兄はそのことに対しては認識がなかった、というより見ないようにしていたと言う方が正しいだろう。「人間は見たいものしか見ない」というギリシャの英雄カエサルの言葉がある。自分の都合の悪いものには目を向けない、防衛本能的として見えなくなるという機能をもっているだと私は思う。たぶん兄の心理はこうだったと推察する。「両親を騙しているわけではない。ギャンブルや酒や女性に使っているわけではない。自分は家族のために必死にやっている。だから俺は悪くない。」

世の中の不正や法令違反と同じ心理だと私は思う。人の行為には善悪は別として必ず肯定的意図があると言われている。「納期に間に合わせるために・・・」
つまりその人、その組織にとっての正義があるのだ。いまだ終わらぬ世界各地で行われている戦争もそうだと思う。少し話が飛躍したので時を戻そう!!

あなごや事件

兄は実家を離れた。両親が二人で新しい生活を始めることができたのは救いだった。無意識的に母を頼る術を身に着けた兄に対して、無意識的に支援してしまう母を引き離すことは生活を立て直すために必須だったからである。財産は減ってしまたが、兄が少しずつでも返済をしてくれれば持ち直すことができると私は考えていた。いや、そう考えるしかなかった。

兄はビジネスアイデアの着眼点は意外といいものをもっていたが、それが仇になることが少なくなかった。ある時、老舗のあなごやに行き、その味に感動した兄が、引退が決まっていた大将に一緒にあなごやをやらないかと持ちかけたのだ。クラウドファウンディングまでやったが資金は予定額に満たず失敗。それでも、都内の某駅であなごやを始めたのだ。兄は共同経営ではなく、店舗コンサルタントとしてコンサル料をもらう仕組みだったようだ。飲食店で働いたこともないのに・・・。

最初のうちは、旧知のお客様が来てくれたようだが、集客には苦戦していたようだ。兄は「あなごおむすび」なる商品を考案してランチ販売をするなど、最初の数ヶ月は無給で大将をサポートしていた。さらに、通販事業も開始するために、WEBサイトまで制作したまではよかったのだが、このあと事件が起こった。
WEBサイトの決済機能を試すために、母のクレジットカードの情報を知っていて(なぜ知っていたのかはわからない)、母のクレジットーカードで試しの決済をしたのだが、それが本決済として通ってしまったのだ。

カード会社に事情を説明したが取り消すことはできず、お店に入金になった後、
資金を回収するように言われたようだ。したがって一時的に母のクレジットカードに請求がくることになった。その額65万円。試しでなぜその金額を使う必要があったのか。
しかも、そのお金を兄は用立てできないから母が支払うことになったのだ。
自分でなんとかすると言う母だがその額を用意することは厳しかった。
母は自分の母(私の祖母)の形見である宝石を売ることにしたが、それでは足らず、ある美術館に預けていた絵画を戻してもらい、いくつかの骨董品屋に見積もりをとってようやく売れ、65万円を確保できた。私は兄を叱責したがあまり響いているようには感じられなかった。きっと積み重ねてきた借金が多すぎて、なんとも感じなくなっているのだろうと思った。本当に兄は親不孝者だと無性に腹がたった。

そんな時、あなごやの大将が脳梗塞で倒れたのだ。身寄りがいなかったため集中治療室に入った大将に兄が数日付き添った。幸い命に別条はなく、2週間程度の入院で退院できたのだが、例の試し通販の65万円がお店に入金されると、そのお金をもって夜逃げした。その後、店の保証人になっていた兄がどのような後処理をしたかは不明だが、これでまた、兄の状況そして私たち家族の状況はさらに厳しくなった。

親切心を裏切った大将はもちろん許されないが、私は、これは兄に何かを教えてくれている現象だと思った。そうだ、兄が母の親切心に対して裏切り行為をしていることを教えてくれているのだと思った。自分の身の回りで起こることは、自分の状況を教えてくれているとも言われているからだ。これで改心してくれたらよかったのだが、鈍感な兄はこのことに懲りずに、またいろいろと手を出していく。そして、その鈍感さに我々家族はさらに翻弄されていくのであった。
                                 つづく

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