ピアノを弾きたい夫、弾き方を忘れた私

私は4歳頃からエレクトーンを習い始めた。小学生になるとピアノへ移行し、その後高校を卒業して、実家を離れるまで習い続けた。長々と習い続けていたが、好きだからというよりは、辞めるタイミングがわからなくなって、惰性で続けていたと思う。もちろん、落ちこぼれ生徒だった。

夫には、そういう私のバックグラウンドを何度か話したことあるが、決まって夫は「いいな。俺も音楽やりたかったな。何か楽器を弾けるようになりたいな」と言う。
夫は、幼少時にプールや剣道、習字など、色々習い事をやっていたらしい。義両親は共働きで忙しかったら、子供たちの面倒を見る代わりに、色々習い事をさせたとのこと。「勝手に親が決めて、色々習い事をさせられてたけど、どれもある程度できるようになったからね。良かったよ。でも、本当はピアノをやってみたかったんだ」そう言って、「大人から始めるピアノ」、「○○日でピアノが弾けるようになる!」という話題をネットで調べては熱心に読んでいる。

「ピアノを習う」という行動こそ起こしていないが、彼は私の誕生日に立派な卓上ピアノを贈ってくれた。本当は夫が弾きたいのだと思う。私が教えてあげるべきなのかもしれない。

実は、10年以上もピアノを習ってきたというのに、私は楽譜がほとんど読めない。
どうやって弾いてきたのかというと、単純に「聞いて、弾く」を繰り返していたのだ。曲の難易度が上がると大変だったが、それでも、「聞いた音、その曲の雰囲気と同じようになるまで弾き続ける」をひたすら繰り返せば、何となくそれっぽい仕上がりになったのだ。(ちなみに絶対音感はない。音痴だし、音をよく間違える。)

非合理的、非効率的方法で弾いていたため、ストイックに練習する割には、一旦その曲をクリア(先生から合格をもらう)すると、あっという間に弾けなくなってしまった。そしてピアノから離れた今、あんなに練習したたくさんの曲も、ピアノの弾き方までも私の身体からすっかり消えてしまっていた。

そういうことも含めて夫には話したのだけど、彼にとしては「10年以上も鍵盤叩いてたのに、すっかり忘れるなんてこと、あるものかね」とあまり信じてない。多分、いつか私がピアノを再び弾くだろうと待っている。

立派な卓上ピアノをもらった後、息子や娘が保育園で覚えた歌を、家でも積極的に歌うようになった。私が子供の頃に聞いた歌もあるので当然一緒に歌う。そうすると、伴奏できたら、みんなで一緒に歌えるのにな。と思うようになった。しかし「弾き方を忘れてしまった」と気づいた時から鍵盤を触る事が怖くなっていた。せっかくもらった卓上ピアノも何年も触られず埃をかぶっている。

もしかしたら、童謡くらいなら弾けるのではないか?試しに楽譜を購入した。保育園の先生が使うようなものだ。パラパラと楽譜をめくると、やはりよくわからない箇所が結構ある。しかし自分も知ってる曲がたくさんあるし、子供達が歌っている曲もある。これなら、もしかしたらなんとかなるかも…。これが現在の状況。

後一歩踏み出せない自分が情けない。今年こそ鍵盤に触って、もう一度音楽を弾きたい。あまりの下手くそさに夫は驚くだろうが、「子供達と歌えれば良いんだ。」と言ったら許してくれるだろうか。




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