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企業分析【ガンホー】

今回はパズドラでお馴染み『ガンホー(3765)』の企業分析を行います。
スマホ普及の過渡期においてスマホゲームが大流行しましたが、現在はどうなのでしょうか?有価証券報告書と決算報告書を読み解いていきます。

企業分析について初めての方は、『企業分析の見方』noteも併せて読んでいただけると分析の理解が深まります。ここで登場するROA,ROE,固定長期適合率などの一見聞きなれない用語の説明書となっております。


収益性

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ここ3年の状況を見ると非常に良い数値が並んでいます。しかし、もっと遡ると実は2014年をピークに最近まで減収減益を続けていました。ピーク時は今の売り上げの1.7倍、営業利益率は50%超えとかなりフィーバーしていたようですね。4G回線の運用が開始されたのが2012年。これによりスマホゲームがサクサク出来るようになったのが大きいのだと思います。

そう考えると今は2020年5G運用元年。この2年後の2022年には何か5Gサービスの波に乗ったフィーバー会社が続々と出てきそうですね。[低遅延]の特徴を活かして、例えばVRとドローンを使って旅行に行きたくても行けない人たち向けの旅行体験サービスなんかが思いつきますね。5Gのインフラとドローンの法整備が整ったら、感染症との共存社会もあいまって爆伸びする可能性があります。要チェックですね。

すみません。すこし脱線しました。ガンホーですが、2018-2019年で業績は下げ止まりしているように見えます。ここを底としてどう上げていくのかが今後の見ものですね。

安全性

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さて、安全性の方ですが、こちらも非常に優秀です。2014年からのフィーバーで得た資金を、リスクのある投資ではなく内部留保に回した結果を物語っています。負債はほとんどなく、資産の80%以上を現金で持っているのは驚きですね。P/Lの方は営業利益率は28%もあります。減収減益が5年続いてもこれですか…汗。先行者利益は強力ですね。

こういったアプリ開発は一般的な製造業と比べ、生産設備が要らないのがいいですね。固定資産が少なくてもこれだけの売り上げを上げるのは凄いことです。固定資産回転率は10回転、棚卸資産回転率は2200回転と数値だけ見ても業界特有の構造が見えてきます。

将来性

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まず、年成長率を見てみると、2017-2018間ではマイナス成長しており2018-2019間ではプラスに転じています。これが下げ止まりしたのではないかとの推測の理由です。

キャッシュフローですが営業キャッシュフローに対し、使っている投資・財務キャッシュフローは少ないですね。相変わらず現金として蓄える体質は変わりませんね。しかし、2019年で若干ですが投資と財務の棒グラフは伸びています。この中身を見てみると、

◆キャッシュフロー計算書◆

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◆バランスシート◆画像8

財務CFの増加は自己株式取得によるものとわかりました。一方、投資CFは定期預金の預け入れが増えていますが、固定資産への投資も若干行っているようです。ここでバランスシートの固定資産でどこが増えたか見てみると、ソフトウェア仮勘定の部分が明らかに増えていました。これはいわゆる製造業で言うところの設備投資にあたりますね。リスクを取って投資も行わないといけないなと思ったんでしょうか。それともただのソフトウェア更新でしょうか。どちらにせよ、まだ内部留保を増やす姿勢は大きいので、あまり将来的な資金の使い方とは言えません。

しかし、別の視点で考えると、労働生産性は非常に高く利益率もまだまだ高いので、今はじっと待って資金力を蓄えてるフェーズなのかもしれません。今後来る5Gなどの大きな波の時に一気に投資をするというスタンスという見方も出来ます。現時点では推測でしかありませんが、資金力はめちゃくちゃあるので、新しい波に乗る準備はいつもで出来ているとは言えます。

企業価値

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企業価値についてです。市場がどう見ているのか?企業の業績と株価を見ながら判断します。
近年は減収減益が続いていたため株価の反応としては下がり基調で、今の株価としては割安と思っていいでしょうか。しかし、あくまで次に打つ手に将来性があればの話です。今のスマホゲーム一点頼りを続けている以上は業績は微減し続けると思います。

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決算報告書を読む

次に打つ手は何なのか?
決算報告書から読み解いていきます。

✅ ニンジャラ

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6月25日にニンテンドースイッチの無料ダウンロード版で発信された『ニンジャラ』。北米・欧州・アジア・日本への同時配信で、グローバルに展開していく作品のようです。

基本無料ですが、パッケージ版が7月22日に3980円で販売されるそうです。あとアプリ内課金や追加コンテンツなどは有料です。まずは先行して無料で触ってもらって、それを入り口に有料へと誘ういつもの手法ですね。一番に押している新商品ですので、中身も自信のある作品なのだと思います。とはいえ、素人目線ながら”新しく”はないかなぁといった印象です。

✅ パズドラ

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続いて、パズドラです。直近2020.1にMAUが上がっているのは8周年記念イベントによるものだそうです。MAUとは『Monthly Active Users』の頭文字です。月の利用者の数ですね。こういったアプリゲームはこのMAUを刺激して課金させるので、MAUの数は重要な指標となります。しかし、長い目でグラフを見ると右肩下がりなのがわかります。パズドラは古参のアプリでさすがにみんな飽きてますよね(^-^; まだ高水準をキープということなので、この間に他の柱(ニンジャラ等)が育つのを待つか、全く新しいものを生み出すしかありません。

✅ 子会社「Gravity」の状況

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ガンホーが2008年に子会社化した韓国の会社です。持ち株50%以上の連結子会社になります。この会社はグローバルに各国にアプリを配信しているようです。連結売上に占めるGravity割合は非常に高いです。

✅ 直近の業績

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2017年に下がり基調だったのを、2018年に持ち直しましたが、主要タイトルのMAUが安定してしまったためめ、また2019年には低調な推移となっています。このようなアプリゲーム市場は新作タイトルを出した直後は伸びますが、そのサイクルは早いので矢継ぎ早に新作を出していかなければなりません。しかし、市場も飽和して来れば、他ゲームと似たようなものになってしまうため、MAUの獲得が年々厳しくなってきているようですね。ニンジャラへの期待はあるのでしょうが、短期的なものだと予想されます。どこかで大きな変革を起こさないと今後も下がり基調は変わらないでしょうね。

その変革というのがVRなどの次世代技術を使った体験ゲームだとHAPPOは読んでします。どの会社が先に体験ゲームを完成させるのか?もちろんこの領域はスマホゲームを取り扱っている「ガンホー・コロプラ・サイゲームス・ミクシィ」に限ったことではありません。任天堂やSONYなどの巨大戦艦もライバルになってきます。ハード開発に着手するのか?大手とのエコシステムを模索するのか?ガンホーには今後、厳しい選択が求められます。

自分がCMOだったら

最後に、自分がCMO(最高マーケティング責任者)だったらどのような取り組みを行っていくのかを書いていきます。

✅エコシステムを考える
世の中は単なるBtoBの物売りから、だんだんと共存共栄のエコシステムビジネスへと転換していっています。エコシステムとは何なのか?もともとは生物の生態系を説明するときに使っていた言葉で、他者への依存度がそこまで高くないが他者の機能を利用して自分にも利益があるような状況を指します。
例を挙げるとヤドカリとイソギンチャクで、ヤドカリは捕食者に襲われないためにイソギンチャクを殻に付けます。イソギンチャクの方は餌を待たなくてもヤドカリのおこぼれをもらえるようになります。
これをビジネスの例で取ってみるとiPhoneとアプリです。iPhoneが普及すればアプリ利用者が増えるし、アプリが充実すればiPhoneユーザーが増える。直接的な営利関係でのビジネス関係には無いが、アプリ開発者はiPhoneに頑張って欲しいと思うし、そのためにアプリ開発を頑張ろうとします。

さて、それでは大手(任天堂)の描くエコシステムにガンホーはどう入り込んでいくのでしょうか?ガンホーの得意分野はスマホゲームです。ここをコア技術としていくつかのキーワードを掛け合わせます。『スマホ×ヘルスケア×3世代』です。未来予測における成長分野の一つにヘルスケアがあります。近年歩く系のゲームアプリも出てますよね。そこに着目です。しかしスマホ×ヘルスケアだけだと少し古いです。これにもう一つ3世代のコミュニケーションツールを掛け合わせます。ポケモンGoもドラクエウォークもターゲットはそれらを良く知っている30代で単発でした。これだけで広がりが薄いんです。しかもせっかくのウォーキングの活かし方もまだまだ甘い。もう少し現実と絡めます。私が思い描く絵はこれです。

 ・老若男女受けする新しいアプリの開発。
 ・アプリにはヘルスケアポイントがある。
 ・ヘルスケアポイントは歩いたり、
  提携した施設で運動するともらえる。
 ・ヘルスケアポイントは、
  高齢者ほど貯まりやすい設計。【大事!】
 ・Nintendo Switchでゲーム-アプリを提携
 ・ヘルスケアポイントは武器や能力になる。

細かいところは詰めないといけませんが、大枠はこれで、この中でも最も大事なのは高齢者の参加です。おじいちゃんおばあちゃんと孫をここで強烈に結び付けます。我々は親世代はゲームやアプリの設定をしてあげる程度のサポート役になります。高齢者は自分自身では運動を始めるのはきついですが、「孫のためなら!」と運動を始める良いきっかけにします。われら親世代は長生きして欲しいので運動してくれたら嬉しいですね。孫もゲームで良い武器が手に入って嬉しい。おじいちゃんおばあちゃんも皆が喜んで嬉しい。このHappyが循環するような設計で組み立てていきます。

提携施設は全国にある会社がいいですね。地域格差はできるだけ無くしたい。このスポーツ施設への入会の敷居は下げれるだけ下げます。この施設からしたら利用者が増えるだけでヨシ、マネタイズは施設側が別で考えたほうが良いでしょう。ここでは「エコシステムの中で施設の利用者増やしにゲームが手助けしてくれている!ありがとう!」にとどめます。

アップルウォッチとの連動。携帯を持ち歩くのは高齢者には面倒かもしれませんので、何かしらウェアラブルデバイスの開発を考えます。しかし、たぶんいい案は出ないと思いますので、アップルウォッチと連携させましょう。自前でなんでもかんでも作らなくてヨロシです。どこもかしこもエコシステムを考えます。

以上のようなことを考えながら、ターゲティングを全世代に広げるようにしていきます。全世代と言えばアレもコレも取り入れないといけないと思いがちですが、未来予測のメガトレンドを仕組みの中に設計しておくだけでおのずと皆が関係するようになります。ここでは本件をヘルスケアという大きなカテゴリの中に入れています。

eスポーツ
パズドラがeスポーツをやっていますが、eスポーツとしての裾野を広げるためにもっと戦略性に長けたゲーム内容へと刷新します。パズルの組み合わせを瞬時に考えて並べ替えるというのはスマホゲームならではのサクサク感があっていいですが、これを名誉と賞金をかけたスポーツへ昇格させるには将棋のような奥深さも必要だと思います。しかし、将棋ほど作り上げるとサクサク感が損なわれるので、バランスを考えて設計が必要です。

パズドラのユーザーが減っていっているのも気になります。『パズドラをeスポーツで頑張ってます!』と言っても、競技人口が少なかったりファンが少ないスポーツには客が集まりません。スポーツとして見たときに、世代が新陳代謝しても一定の競技人口は確保できるように考えないといけません。将棋・オセロ・チェス・バレー・サッカー・野球・ラグビーなど、まずは競技として成り立っているものを分解して法則を見つけ出し、パズドラ×eスポーツで再結合させることが必要です。

パズドラは同社をここまで大きくした存在なので、このままずるずるとフェードアウトして延命材料として扱う設計よりも、パズドラは伝説となりどこか(eスポーツ業界)で生き続けるような設計にした方が、絶対従業員のモチベーションは上がりますよね。パズドラは伝説にします。伝説にするには緻密すぎる戦略が必要です。

Gravityを試験拠点へ
韓国の子会社Gravityを新しいことをする拠点にします。なぜかというと韓国だからです。デジタル国家韓国なので色々な普及が早いです。法整備など必要な案件は、日本でやるよりそれが出来る国や地域で積極的に取り入れて先駆者になります。Gravityとどこまで融合が出来るかはわかりませんが、まずは完全子会社化します。Gravityの描くビジョンは何なのか?ここをしっかりと明示してガンホーと綺麗に融合していきます。もちろんその前に日本よりも韓国の方が新しいことを始めやすい土壌かどうかの調査は重要です。とにかく、新しいことを行うスピード感を高めていきます。
これには狙いがあって、次世代通信技術×ゲームの未来がまだ誰も描けていないということがあります。新しいゲームの時代はガンホーが作るんです。ガンホーは次の任天堂になることが出来ます。先に挙げた2つの取り組みは10年先までの話で、これは数十年後の未来を描く取り組みです。誰よりも早く5G,6G,7G×ゲームの未来を描き先導者となります。

まとめると、

① メガトレンドを意識したアプリ開発
② パズドラの伝説化
③ 次世代通信技術×ゲームの未来

この3つを大きなテーマとして取り組んでいき、ガンホーを100年続く社会に溶け込んだ会社に育てていきます。変化の激しい時代で『続ける』ことは難しいですが、常に新しいことを自社と絡めて考えていけば続く方法はいくらでも見えてきます。ガンホーが莫大な内部留保をこのように社会還元していって、今以上に求められる存在になることを切に願います。


★★★注意事項★★★
HAPPO独自の企業分析ですので、この記事の著作権は「HAPPOリーマン@企業分析家」に属しております。まるパクリはしないでくださいね。引用などで私の記事を拡散してくれる分は応援します。一緒に企業分析できる人口を増やしましょう!(^^)!

また、個別銘柄として投資をされる方におかれましては自己責任でお願いいたします。企業のIR情報を元に作成はしておりますが、情報が誤っている・情報が古くなる可能性がございます。本記事を参考にした投資を行う場合は、それによって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。





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