見出し画像

スヴェンボー市をリビングラボに!

コペンハーゲンから車で2時間ほどのフュン島にあるスヴェンボー市に構築されたリビングラボ『E-Health City』。このE-Health Cityがどのように構築されたのか、市民参加がどのように達成されたのか、どのように街をリビングラボにしたのか、を理解するために、E-Health Cityのオーガナイザの一角を担ったPublic Intelligenceにインタビューを実施しました。『E-Health City』について、また、インタビューの詳しい内容は、また別の機会に報告をしたいと考えていますが、インタビューから導出された興味深い点を、備忘録として記録しておきたいと思います。

リビングラボってなんだろう

リビングラボというものが何を指すのか、理解することはとても難しいと言われます。私は、リビングラボをイノベーションが生まれる場で、技術と社会の親和性を模索しコミュニティベースで未来を作っていくための手法であり、社会における技術の可能性を探るのに重要なアプローチであるとしていますが(参照:Living Lab)、実は、多くの研究者や実践者が多くの異なる姿を「リビングラボ」という言葉で説明しているんですね。「リビングラボってなんだかわからない」と多くの人が思ってしまい、理解が難しくなったり、実際にリビングラボを活用してみよう!という人の足かせになっている理由の一つはここにあります。現在のリビングラボ周りでは、多くの人が異なる定義で「リビングラボ」を語り、異なる形でリビングラボを実践しています。これは、なんでリビングラボをした方がいいのかとか、いま始めてみようとか、何が特徴なんだろうとかと考える人にとっては、混乱のタネにしかなってないわけです。

このような対して、Public Intelligenceはインタビューの中で、二つの形で解決策を示してくれました。

一つ: リビングラボという言葉を当事者が知らなくてもいい
一つ: リビングラボを5つの類型に分類する

1つ目に関しては、また別の機会にお話ししたいと思いますが、5つの類型に関しては、次のように分類しています。

リビングラボには5つの類型がある

1. 技術のショールーム。デンマークにも最も多くあるリビングラボの形。パブリックインテリジェンス社もはじめはここからリビングラボをスタートさせてたそうです。どんなヘルスケア・テクノロジがあるかを展示の形で並べ、解説を添えたりしたわけです。

2. 機能性を備えたテストベッド。ショールームのようにただ見るだけではなくて、もっとインタラクティブに実際に体験できる場所として、そして実験を行ったりすることができる場所が整えられているリビングラボです。実証実験の場所とも言えるかもしれません。

3. 家などの生活の場での実践。実際に課題を持っている人のところにヘルスケア・テクノロジを導入したり、コンセプトを試してみたり、意識的に当事者が生活の場に取り入れる形で実施されるリビングラボです。

4. 生活に根付いた持続可能なテクノロジのプラットフォーム(包括的な観点からの理解が可能であると同時に複雑なイノベーションエコシステムが維持・管理される)。生活の場での長期的なリビングラボという点は3と変わりませんが、多様な利害関係者を巻き込んで行われる持続的な仕組みがより戦略的に組み込まれているリビングラボです。

5. 社会文化的差異を超えた相互補完的な多文化プラットフォームネットワーク。リビングラボは、社会文化的背景に大きく影響を受けますが、よりスケールしやすい形の相互補完型、ネットワーク型のプラットフォームと言えるでしょうか。それぞれの社会環境で得意とする部分を分担して担うようなイメージだと考えました。以前に専修大学の上平先生と作り上げた図の、社会化と具現化のループにとても近く感じられました。

画像1

この類型に当てはめることで、どのリビングラボの話なのか特定しやすくなるので、目的やプロセスを共有しやすく、アウトプットやお互いの狙いも理解しやすくなるのではと考えています。ちなみに、スヴェンボーのリビングラボは、4番目のリビングラボであり、持続可能な生活に根付いたイノベーションの実証の場として機能しています。

5はまだ存在していませんが、今後、不可欠なプラットフォームであり、日本とデンマークが協働できるエリアであると考えられます。以前から考えている上図のようなことでもあり、「リビングラボを日本で実施する?じゃぁ...。」という記事で執筆したことと同様のアプローチと理解しています。日本とデンマークの強みは相互補完的であり、一緒にリビングラボを実施することで、より飛躍しスケールすることが可能なんじゃないか、そんな今後の日本のイノベーション周りに一筋の光を見出すことのできたインタビューとなりました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?