なぜメタバースは注目されるのか?
メタバースのことが知りたくて米国に行ってきた
北欧でスマートシティ研究に取り組む私の最近の最大の関心事の一つ、これからの街とデジタルの関係性。これからの街がデジタル社会の到来で、どう変容できるのかを知りたい、どうデザインできるかを考えたい。
そこで、関連しそうな気もするし、しない気もするメタバースを、もっとよく理解する必要があるのではないかと考えて、米国に「メタバースを知る旅」に行ってきた。メタバースは、米国や日本の一部で盛り上がっているようだが、私が住んでいる北欧をはじめとした欧州で聞くことはほとんどない。それはなぜだろうか。
メタバースとはなにか
メタバースとは何か、初心者の現在の理解を備忘録として記しておきたいと思う。メタバースは、「高度なVRのこと」という人 (NTTResearch)もいれば、「コミュニティの進化系」という人もいる。先端テクノロジーで注目されると同時に、コミュニティという社会的な視点から注目されてもいる。元FacebookのMetaがプラットフォーマーとしては一般的に注目されるが、RobloxやFortniteなどのオンラインゲーム*もメタバースとして認識されていて、実際のところ、今のNetflixやディズニー、HBOなどのストリーミングサービス市場のように、多くのプラットフォーマーが乱立している状況だ。
流行り物をキャッチするのが早いエッジの効いたファッションブランドGUCCIやハイネケンなどのビール業界、そしてそれを仕掛ける電通などのマーケッターが、メタバースイベントを実施して注目を集めるなどの事例も多々出てきており、ビジネスチャンスを求めて集う場所になっている。デジタル空間だけで完結する仮想空間、全く新しい世界だ。そこに集う私たちは、自分になることもできるし、自分と全く違う存在になる事もできる。その世界観は、平野啓一郎氏の『本心』で描かれる未来像と合致する。
キーワードは、NFT、ブロックチェーン、ウェブ3.0、デジタル製品(デジタルファッション/デジタルアート)などだ。現在メタバースに集まる多くの人たちは、なにか目的や意思、理想を持ってMetaの世界を作り上げようとしているのではない。例えば、社会的な理想をデジタル空間に追求しているというよりは、ビジネス中心主義で、ゴールドラッシュ、一攫千金を狙っているマネーゲーマーだからに他ならない。
2000年前後に世界各国で実施されていたデジタル社会の未来像「デジタルシティ」のようなデジタルでつくるコミュニティであったり、現実世界を支援することを主目的とした現実とのインタラクティブなデジタル空間は「デジタルツイン」と呼ばれる傾向にあり、デジタルで完結することの多いメタバースとは一線を画す。そう分類すると、マイクロソフトが提案するMeshは、どちらかというとメタバースというより、現実世界を補完するデジタルツイン系だ。
ターゲットはGenZ
メタバースでは、デジタルプロダクトが販売されていてそれが一つのマーケットになっている。そのプロダクトとは、身近なところではFortniteのアバター用のスキンもそうだし、メタバース上の不動産であったり(既に億単位で売られている)、デジタルアートやデジタルデザインの洋服や靴やアクセサリーやメイクアップ用品であったりする。誰がメタバースの不動産に関心を持つのか?誰が、デジタルファッションやデジタルアートを大枚叩いて購入するだろうか?って思ってしまうのは、ミレニアム世代以前の我々の反応らしい。
多くのミレニアム世代以前の人たちにとってこのメタバース経済マーケットは理解不能で無関係なことのように扱われがちだれども、そんなことない「みんなもうデジタル経済圏に片足を突っ込んでいる」と、米国在住の日本人に言われて、はっとした。私たちは、無形のデジタル製品だから購入対象から外すなんて、もはや、していない。だって、日本の私たちはLINEのスタンプを喜んで買うじゃないか。手元に残らないことを理解してSpotifyで音楽を楽しむじゃないか。
正直、メタバースの世界の一欠片に触れて、その背景に見え隠れするマネーゲームと今のティーン達(我々の子供世代)を食い物にしようとするようにしか見えないマーケッターたちに反吐が出るほど嫌悪感を抱いた。ただ、デジタルの可能性は無限大で多くの資金が流れ込んでいる今だからこそ、かつてないほどテクノロジが進展しているのは確かだ。
結局のところ、テクノロジーの使い方は、コインの裏表にすぎない。今は、多くの人がマネーゲームに躍らされているように見えるけれども、メタバース周りで進化し続けているテクノロジー自体は、多くの人の能力を拡張し、より幸せな社会をもたらすツールにもなりうると思っている。私たちは、社会をよくするためにデジタルを活用することができる。人々の生活の質を上げるためにデジタルを活用できる。これは、北欧のデジタル社会がすでに示してくれている。結局のところ、テクノロジをどう活用するかは「私たち次第」だ。
今回の旅で、メタバースに対してネガティブな感情が湧き出てきたことは否定できないが、メタに関しては、自分なりの立ち位置を持つことができたので、それはよかったと思っている。そのほか、今回の「メタバースツアー」からは衝撃を受けたこと含め、報告したいことが多々ある。スタンフォード大学のデザイン研究の権威にあって気付かされたことや、スタンフォードのVirtual Human Interaction LabでのVRの衝撃的な体験、そしてPalo Altoでの大企業と戦略デザイン・スタートアップのコラボに見る未来など、この1週間程度のメタツアーについて、少しずつ報告したいと思う。そうそう、この旅の合間には、新しいGoogleの新しいオフィスキャンパスも見ることができた。
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