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デモクラシー・ガレージに行ってきた

民主主義のリビングラボ、デモクラシー・ガレージ(Demokrati Garage)に行ってきた。数ヶ月前に知ってから、何度も足を運ぶようになったデモクラシー・ガレージ。今回は、デモクラシーのリビングラボ、デモクラシー・ガレージについて紹介したい。


コペンハーゲンのNV (北西)にあるデモクラシー・ガレージ(Demokrati Garage)は、デンマーク在住の日本人、デンマーク・デモクラシーの重鎮(若いけど)のAyaさんに教えてもらった場所だ。Ayaさんがオススメの場所だから面白いことは間違いないと思っていたけれども、初めて紹介してもらって訪問した時には、息ができなくなるような衝撃を受けた。

デモクラシー・ガレージとは

デモクラシー・ガレージは、住宅街に囲まれた広大な公共エリアの総称で、カフェ・オフィス・インキュベーションセンターが併設されている場所だ。でも単なる「場所」って考えると本質を見失う。ここは、場が生み出す魂が宿る場所、アイディアがスパークする場所、そして、大きな力に惹かれて老若男女が集まるコミュニティだ。

設立までの経緯

デモクラシー・ガレージは、コペンハーゲン市の協力を得て、3年前に設立された。当時、コペンハーゲンNVの元自動車修理工場エリアの再開発が進んでいたが、We Do Democracyが、「社会に何か役立つことをしようよ」と市に直談判したのだそうだ。その後、コーポラティブ銀行を説得し資金を調達し、We Do Democracyが中心となり、市民を集めて6回のワークショップを実施して議論を重ね、コペンハーゲン市への提案書をまとめた。そして作られたのがデモクラシー・ガレージである。周囲は新しく作られた変哲もないアパートが立ち並んでいるが、その中心に位置しているのが、地域の住民も私のような訪問者も温かく包んでくれるデモクラシー・ガレージなんである。

地域の新築住宅

どんな活動をしているの?

元々、自動車修理工場(ガレージ)があったので、デモクラシー・ガレージという名前なんだそうだが、中心のアクティビティがスタートアップ支援だというので、なんだかガレージとも関連性がある気もしてくる。

デモクラシー・ガレージの柱は、スタートアップのインキュベーションセンターであり、デモクラシーを推進するコーポラティブ・オーガニゼーション(Cooperative Organisation)を基盤とするスタートアップがオフィスを構えるが、起業家や弁護士会計士などの支援者が集うだけの場所ではない。

オフィススペースの一角

デモクラシー・ガレージは、毎日の日常生活に根付いた「デモクラシー」の実践のために、市民や政治家やアクティビストやお母さんや子供や移民や少数者などを呼び込み、みんなで一緒に、アクティビティや勉強会、討論会、イベントをしようよと呼びかける。選挙時には、開票速報をみんなで見るパブリックビューイングなんかも実施したみたいだが、通常は、ちょっとした討論会ばかりか、平日の昼間はコペンハーゲンで市場の美味しいピザに選ばれたカフェのビザを目当てに多くの人がお茶しにくるし、金曜日にはフライデーバーがある、もはやそこは、デモクラシーを実践しつつ、みんなが使えるみんなの場所、コモンズになっているのである。

民主主義ってなに?

デモクラシーは毎日の生活の中で実践される

ホームページ(今の所、デンマーク語だけ)の紹介ページには、デモクラシーって、単に4年に一回投票することだけじゃないんだよ(デンマークの国政選挙は4年に1回実施)と訴えかけてくる。買い物をするときの選択、誰かと交流する時などの毎日の生活に溶け込んでいるものなんだよ、自分の住む場所や自分に影響を及ぼす変化に対して、毎日の生活の中で主体的に当事者として動くということなんだよ、というメッセージを伝えている。

そして、デモクラシーというのは、昔の偉い人の理論を解釈するだけじゃなくて、今の環境や考えの変化を取り入れて、今の社会を生きる私たちが再構築していくものなんだよ、というメッセージは、デモクラシー・ガレージのクレドともなっていて、だからこそ、社会を構成する当事者の一人として、みんなもっとデモクラシーに積極的になろうよと背中を押してくるのだ。

デンマークデモクラシーの危機?

日本から来た私にとっては、デンマークのデモクラシーは社会にしっかり根付いていると感じてきた。多くの人がデモクラシーを理解し実践していると感じてきた。家庭で話すだけではなく、学校やその他の組織で、機会あるごとに議論していることに感銘を受けてきた。確かに、日本との比較で考えてみるとどれも嘘じゃないんだが、長く住んでいると、ちょっと違う認識をするデンマーク人も、たくさんいることも見えてくるようになってきた。

その人たちは、デモクラシーは壊れやすい(Democracy is Fragile)ものにも関わらず、多くのデンマーク人が積極的にデモクラシーを維持するためのアクションを起こしていない、デンマークのデモクラシーが消えていってしまう、と懸念を示している。だからこそ、毎日の生活にデモクラシーを根付かせるために、デモクラシー・ガレージは、活動を続ける。

デモクラシー・ガレージがデンマークのデモクラシーを救う?

私が訪問する時は、なぜかいつも雨が降っていたり、雲っていたり、寒かったりするのだけれども、なぜか、(寒いはずの)屋外の席やベンチにも人が多く集い、カフェの中は、賑やかで皆楽しそうで、外の天気とは裏腹に、いつも明るい雰囲気が漂っているのはなぜなんだろうか。この楽しそうな雰囲気の中で、アクションやイベントに参加することで、デモクラシーを体感できるようになるんであれば、これも一つのリビングラボの姿なんだろう。

ちなみに、デモクラシー・ガレージがすごいのは、今回紹介したデモクラシーの実践をしているからだけではない。ここが「古くて新しい北欧的な企業のカタチ」のリビングラボで、「イノベーションの場」としてのリビングラボになっているからだ。本当はその話を一番したいのだが、力尽きた。というわけで、その話は、また別の機会に。

(私が映り込んでいるが…)スタートアップのオフィス


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