傘
ああ、雨かと僕が言う
ああ、雨だと君が言う
君は雨を愛している
傘に落ちる雨粒の音も
水たまりに子供のように飛び込んで跳ねかす滴も
はるか遠い雲から本当に落ちてきているのか信じられない
と言いながら見上げる水玉の行列も
灰色の空だな、と僕が言うと
これは灰色じゃないよ、と君が言う
空が泣いてるな、と僕が言うと
そんな単純な例え、つまらない、と君が笑う
傘をひとつだけ持って出かけようよ
君が言う
ひとつじゃ肩が濡れてしまうよ
僕が答える
だから傘はひとつでいいの。
そうして君は
振り返って笑った
雨はいっそう強まっていた
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