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とても貧しい国から届いたそのコーヒーが わたしの意識を変えた

今回は、わたしがコーヒーを学ぶことにハマったきっかけのコーヒーについて書きたいと思います。

ヒヨコバリスタとしてデビューした当時
わたしはコーヒー豆の味の違いも香りの違いもほとんど判別がつかなかった

先輩バリスタが教えてくれるコーヒー豆の知識をどれほど聞いても、淹れたてのコーヒーを味わっても、
浅煎りと深煎りの違いくらいは分かるものの、風味の特徴も、苦みの違い、コクの違い…
さっぱり分かりませんでした。

それどころか、先輩の語るコーヒーの味わいについて
『この人だってかっこつけてるだけで本当はこんなこと感じてないんじゃないのぉ?』
などと内心疑う始末。ガッカリな新人ですね(苦笑)。

それでも、わたしに少しだけ見込みがあったのは、毎日必ずコーヒーをテイスティングし、メモ帳に感想を書き続けたことです。
コーヒーのマニュアルも、端から端まで読んで書き写しました。
書かれているような味わいをキャッチすることはなかなかできなかったけれど、新人なりの努力は続けました。

花の香りでいっぱいに包まれていたバックルーム

そんなある日、出勤するとお店の裏が花の香りでいっぱいだったのです。
誰かがお花を持ってきてくれたのだな、と思いました。
「お花を誰が…」と言いながら扉を開けてビックリ。
なんとその花の香りは、先輩がコーヒープレスという器具で淹れてくれたばかりのエチオピアの香りでした。

頭を殴られたような衝撃、とはまさにあのことでした。
当時扱っていたエチオピアは、エレガントでフローラルと表現されていたのです。
フローラルつまり、花のような香り。
出勤したバックルームは、本当に甘い花のような香りでいっぱいでした。

ついに理解したコーヒーの個性。
初めてそれをわたしに教えてくれたのは、エチオピアの豆でした。
これがコーヒーを感じるということなんだ…!若いわたしの、ターニングポイントとなる出来事でした。

優雅な気持ちにさせてくれる素晴らしいコーヒーを生産する国の人たちは 
経済的にも教育的にも貧困にあった

良い意味での衝撃を強く受けたわたしは、それから必死でコーヒーについて学び始めました。
そこで学んだ大きなことの1つは、コーヒー生産地の貧しさでした。

特に、わたしにコーヒーの魅力を強く印象付けてくれたエチオピアは、当時のマニュアルでは(現在は大きく改善してることを先に書いておきますが)平均寿命が48歳、識字率は39%とありました。
それを知った時、勉強しながらカフェの客席でボロボロ涙を流しました。
こんなに素晴らしい香りで、こんなにも贅沢な、優雅な気持ちにさせてくれるコーヒーなのに、生産地の人たちは、長く生きることもできず、字を読める人も4割もいないんだ…。
マグカップを両手で抱え、やりきれない気持ちで震えながら泣きました。

バリスタとして生産地に何ができるか

その日から、バリスタとして一人前になるという強い思いが芽生えました。
エチオピアのコーヒーは、わたしにとって大きな存在です。
豆を大切に扱う、生産地への感謝を忘れないという当たり前のことはもちろん、適正な価格で取引された豆を、お客様にきちんとお届けする責任を果たすこと。そうすることで生産地の生活を安定させ、医療や教育を充実させていくことにつながるのだということをわたしに教えてくれたからです。

コーヒーの個性を知る面白さだけではなく、農産物としての特徴、歴史、生産地の抱える課題など、広い意味での知識を得て、責任をもってお客様にコーヒーをお届けしたい。若き日のわたしに、新しい情熱をもたらせてくれたエチオピアのコーヒーは、20年経った今でもわたしにとって最も特別なコーヒーです。

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