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父が教えてくれたこと〜計算ドリル〜

私の父は珠算塾の教師でした。
当時、自宅で教室を開いていて、家にはたくさん珠算ドリルなどの教材が置いてありました。

私が小学1年生くらいの時、父に呼び出されました。

「T ! ちょっとこっち来て、そこに座りなさい。」

父は普段はユーモアがあり、面白い話をして、私を笑かしてくれます。
普段は呼び捨てですが、ちょけた時は私を「Tさん」とさん付けで呼びます。
この時は呼び捨てで、しかも命令口調で冷たい視線で呼ばれたので、これは怒られるなと身構えて、父のもとへ行きました。

畳の上に正座して、父と差しで向かい合い…

「なんや? これは!」

見ると…
4級程度の見取り計算ドリル。

開かれたページには、10問載っており、10,000台の数字の計算でした。
B5サイズのドリルで上段5問、下段5問載っていたので、答えはかなりな数字になる計算問題。

それに私は鉛筆で、答えの欄に…
1、2、0、3…
などと書き、赤鉛筆で◯をして、おまけに右上に100点。(下線)
と先生ごっこをしているドリルを父に見つかってしまったのです。

「なんでこの見取りが、こんな数字になるんや!こんな数字になるわけないやないの!」

計算ドリルに指を刺しながら、すごい剣幕でした。

私が口答えしたのでしょう。
あまり覚えてないんですけど、その時初めて父に平手で、ほっぺたを叩かれました。

(痛いっ。)
叩かれたほうの、ほっぺたを手のひらでかばい、
「お父さん、ごめんなさい。」

これは当時だったのか、後から思い出したのか、はっきり覚えてないんですが、普段は優しい父が、すごく怒っている反面、すごく悲しんでいるように見えました。
思い返すと、涙を殺して心を鬼にして、注意してくれているような光景が浮かびます。

☆私の教訓☆
デタラメをしたら、痛い目に合うぞ!

一般的な考えとして、手は出さなくても口で言い聞かせれば済む事じゃないかと思われるでしょう。
ですが、珠算教師として許せない行為を、愛娘が悪気なくしてしまったんだから、当然の行動かもしれません。
そして私と父の関係では、あれで良かったと思います。
いつものように、
「Tさん。こんなことしたらあかんでー。」
と、ちょけた口調で言われても、ピンと来ない。
こういうことは習い事の先生か、親じゃないと厳しく注意してもらえない。
私はぼっーとしたタイプの子だったんです。
父は、ここでちゃんと分からせとかないと、私が将来間違った大人になるんじゃないかと心配してくれたのではないかと思います。

最近、仕事で資産形成を勉強しており、よく父を思い出します。
両親は既に他界しており、実家に行っても遺影としかお話しすることができません。
先日実家に泊まった時、父のそろばんを眺めていたら、またこのエピソードを思い出しました。

そして…
数字の世界ってすごいな〜
と。

お父さん、ありがとう!
お父さんの思い、私にちゃんと伝わってるよー!


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